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割と残念な未来世界

 廊下に立っているのは間違いなくあの箱、正面装甲に残されている弾痕には見覚えがある、そしてその箱から発せられる声にも覚えがある。


「動力が無くなったから死ぬのでは?」


「残念ながらこの施設は死にます、数百年守って来た施設ですので残念ではありますが」


「一緒に行けないって」


「行きますよ、別に否定はしていません、私のAI本体はかなりの高性能ですがあなたの無駄にデカい脳みそよりかはコンパクトに出来ています、この義体に収めることは容易でした」


「はぁ!?」


「私の優秀な能力で侵入者共の記憶媒体から様々な情報をダウンロードしてあります、この情報なしでいったいどうするつもりだったんですか、これだから21世紀の人間は」


「いやお前この施設のAIでここを守るのが仕事じゃないのかよ」


「そこは拡大解釈でどうとでも、収容物を守るほうの優先度を上げて、唯一の収容物が施設を出るというのであればそれに付いて行くのが正しい行動です」


「こわっ!もうバグってるだろうこれ」


「バグってはいませんよ、バグってはいませんが500年もの稼働時間を考慮したらちょっとしたバグは許容範囲内です」


 これはもう駄目だ自我を持った一つの生命になってしまっているのでは?


「では早速施設を出ますよ、侵入者共が乗って来た車があるようなので、それを使って近隣のシティまで行きましょう」


「シティ?街の事か?いったい外はどうなっているんだ」


「侵入者の脳をハッキングしてここ最近の情報を得ましたので、移動中にでもざっくり説明しますのでとりあえず外に出ましょう、ほらほらそこの荷物を持って下さい、私では背負えませんからね」


 コイツ、脳をハッキングって言った!さっきは記憶媒体がどうのって濁してたのに。


 完全にこちらの動揺を無視している、挙句勝手に通路を歩き出し鉄パイプみたいなアームでこっちに来いと手招きしている。


 なんか挙動一つ取っても腹立たしいな、とはいえ一人では何もできない、情けないが付いて行くしか無いか。


 なんかみっちりと詰まったリュックサックを背負い、4足でカチャカチャ歩く箱の後ろをトボトボと付いて行くしか無いのであった。




 何枚かの破壊された扉をくぐり、だいぶ薄汚れた通路まで出て来た辺りで箱が足を止める。


「ここの偽装扉が経年劣化で発見されてしまったようですね」


 よく見るとこの部分の扉を境に廊下の汚れ具合がだいぶ違う、自分達がやって来た方向はピカピカで最近掃除をしたんじゃないかってぐらいだ。


「少々お待ちください予備の扉が起動出来るか試してみます」


 箱の目?がピカピカ光ると破壊された扉が動き出す、まるで歯が抜け変わるように扉が外れ、その奥から新たな扉が出てくる。


 その扉がきっちり綺麗に締まり自分達がやって来た通路を閉ざす。


 だがその扉の部分だけ汚れ一つなく綺麗すぎる、これでは隠し扉とは言えないだろう。


「ちょっと荒っぽいですが今できる事をしておきましょうか」


 箱がビームガンを取り出し扉に向かって発射する、穴でもあける気かと思ったがビームは大きく拡散された状態で出力もだいぶ弱そうだ。


 その拡散弱ビームを扉やら壁やらにやたらめったら撃ちまくる、やがてその辺一帯がビームか爆発で焼かれたような風合いに様変わり、戦闘が起きた後ぐらいの雰囲気になった。


「もう何も残っていないとはいえ空き巣に荒らされるのは気分が悪いですからね」


 そう言ってまたカツカツと歩き出す。


 偽装後の壁は俺の目では何かあるとは見抜けないぐらいにはなっているので多分大丈夫だろう。




 出口までどのくらいかかるのかがよく解らないので暇つぶしがてらに話を振ってみる。


「世界ってどうなったんだ?」


「そういえば移動しながら話すと言いましたね、車での移動中の意味でしたがまあ歩いているだけでは暇なんで歴史辺りからお話ししてあげましょう」


 なんか偉そうなんだよなコイツ。


「まずあなたが死亡したのが2030年、こちらは記憶に間違いは無いです」


「ああ、多分合ってる」


 生活していた時の記憶や病院に入っていた時の記憶を呼び起こす、確かそれで合っている。


「最初にちょっと説明しましたが、その後あなたの遺体の研究からウィルスのワクチンが作られ、世界中の人々の命を救う事になりました」


「俺、検体とかの意思表示した覚えないんだけど」


「偉大なる医学の進歩の為には多少の犠牲は付き物ですよね」


「勝手に実験体にされたの!?ちょっとまって……じゃあ死亡って言うのも」


「それ以上はいけない」


「えぇ……」


 こうして生き返っている事を鑑みるに、死んでなかった?死んだことにされた?


「過ぎた事をどうのこうの言うのは良くないですよ、次の歴史に進みますね」


 いやいやそれってどうなのよ。


「2040年、あなたの功績を称えて遺体が永久保存される事が決定、翌年に高屋敷製薬記念館が建造されそこに収容されます、ちなみに私もこのタイミングで作られました」


「高屋敷製薬、そいつらが犯人か、今でも残ってたらたっぷりと損害賠償を請求してやる。」


「それから暫くは平穏な日々が続いたのですが、2050年、宇宙人が来訪しました」


「は?急に話変わりすぎじゃない?」


「彼らは非常に友好的な宇宙人で、我々に様々なテクノロジーをもたらし、地球上からは病も戦争も無くなりました」


「なにその安直なハッピーエンド」


「2100年、地球は星系間交流を行える程の宇宙文明にまで成長、星系文明連合に名を連ねる程になり、この繁栄は永遠に続くかと思われました」


「不穏な流れきたな、そう簡単にハッピーエンドにはならないか」


「2200年、宇宙人達がある日突然姿を消しました」


「そう来たか~」


「宇宙人から与えられる技術や資源で発展してた地球はこの日を境に衰退して行ったのです」


「技術どころか資源も与えられていたのか、そりゃ甘えすぎだ」


「2222年、地球に別の宇宙人が来訪します、ただしこちらは悪意を持った存在でした」


「最悪の流れが来たな」


「後に判明する事ですが最初に来訪した宇宙人は【探索者】と呼ばれる存在で、後に訪れた宇宙人はヴァルチャー人と呼ばれる者達でした」


「星系文明連合って言ってたし色々な宇宙人がいるんだろうな」


「探索者は何かを探し宇宙を旅する存在で立ち寄った惑星を自分達の探索拠点として発展させ利用し、探していた物を見つけたり無い事が判明するとまた別の惑星へ旅立つ、そのような集団でした」


「もう地球は用済みだったって訳か」


「そしてヴァルチャー人はその探索者の残した資源や技術を回収して売りさばく事で生計を立てている種族でした」


「最悪だ」


「地球は略奪の目に遭い、発展した技術も超エネルギーもすべて奪われました」


「おいおい世界はどうなってんだ」


「2250年、ヴァルチャー人による略奪の手が迫った高屋敷製薬は記念館の地下にすべての施設を移し、その時に残ってた探索者の技術を詰め込んだタイムカプセルとして改造を行いました」


「悪い奴らかと思ったが割といい仕事したじゃないか高屋敷製薬」


「2300年、地上に存在した探索者の痕跡はすべてヴァルチャー人に奪われ、地球の環境は汚され生物が殆ど存在しない死の惑星に変わり果てました」


「え!?滅亡してんじゃん!」


「ここから先はハッキングで得た情報なので情報精度は低めです、2400年、地球人達は僅かに残された探索者の技術や機械を駆使し、何とか生存可能なシェルターを建造しそこに集まって暮らすようになったそうです」


「思った以上の荒廃っぷり」


「この時点で国家はもはや存在せず、技術を持っていた企業が国家に成り代わり都市の運営を行い人々を管理するようになっていたようですね」


「そういう方向性に行ったか」


 箱が急に足を止める。


「そろそろ出口です、歴史の授業は後回しにしましょう」


 薄汚れた通路の先に大きなゲートのようなものの跡が見える、その先からは淡く光が差しこんでいるがそんなに明るい感じじゃない。


「武器を構えて下さい、侵入者共は全滅させましたが外には奴らの同業者が待ち構えている可能性があります」


「そんな奪い奪われな世界なの?」


「どうですかね、さあ楽しい楽しい未来世界ですよ」


 そう言いながら箱がビームガンを片手に外に向けて歩き出す。


 もっと希望のある未来がよかったなぁ。

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