↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

いちばん下のレトロシティ

 トチギシティが近づいてくる、近くで見ると大小様々な高層ビルが束ねられているかのような見た目をしている、鉛筆やらペンやら色々と差したペン立てみたいな感じに見える。


「あそこが目的地か」


「いえ、違いますよ」


「え?」


「ビル群の足元をよく見て下さい、街のようなものが広がっているでしょう、あそこが我々の目指す目的地です」


「下の街もトチギシティの一部という訳か」


「厳密には違います」


「は?」


「シティが人々を迎え入れていると説明はしましたが、万人を無制限にという訳ではありません、シティにも許容量というものがあるのです」


 なんか話が見えて来た。


「シティに入れてほしい人々が各地から集まって来る、だけどシティには入れないし汚染された土地に帰る事も出来ない、ならばとシティの周辺に住み着き始める、そうして出来たのが【最下層】と呼ばれるエリアです」


 スラム的な場所か、解りやすく下級市民が住む街って事だな、いやシティへ入る事を許されていないなら市民ですら無いのか。


「我々のIDは最下層に住むならず者達のものです、つまりシティに入る権限はありません」


「スラム住まいなのにIDが必要なのか?」


「もちろん無い住人もいますが、シティへの移住申請を行う際にIDが発行されますので大半の住人はIDを持っています」


「なるほど列に並んでいる証という訳か」


「別の意味もあります」


「準市民みたいな扱いを受ける、とか?」


「列から弾かれた証になるんです、もうシティに入る事は叶わない落伍者の烙印」


「うわぁ、そんなの捨ててもう一回チャレンジとかできないのか?」


「ID発行の際に脳波を含めた様々な生体データを取得するので不可能ですね、体を全部取り換えても脳だけは無理ですから」


「暴動とか起きないのか、なんかもうやけっぱちみたいなのが出てきそうだけど」


「まあその辺も考えているようで、ID発行者には最低限のフォローが行われます、エネルギーや食糧など、なので実質のところは外周もシティの管轄下にある街とも言えます」


「ゴミ捨て場兼牢獄って感じだな」


「概ねその認識で合ってます」


 話している間にもスラムがどんどん近づいてくる、近づいた事で建物の形なんかが見えて来た。


「なんだか懐かしいような見た目だな」


 シティの未来的な見た目に反して足元に広がる街は小さな雑居ビルの集まりで、見た目は昭和後期か平成初期の街並みのようだ。


「2100年代に流行った懐古ブームで建てられた建築物を再利用しているようですね、そのころは探索者の恩恵を最も受けている時代ですので、半永久的に朽ちる事の無い建材で建てられていたようです」


「栃木を昭和の街みたいな感じにしてテーマパーク化してたって事か」


「どちらかというと建築物のテーマが決まった分譲住宅、というような感じだったようです」


 未来の過ぎ去ったブームを一つ知る、何とも言えない感覚だ。




 バギーが昭和の街並みに入っていく、昭和の建物が色とりどりのネオンで装飾されている、完全に間違えたSF日本って風情だ。


「このデザインも誰かが指示してたりするのか?」


「やたらと光っているのは必要だからです」


「暗いの怖いの?」


「まあその通り、とも言えますね」


「冗談のつもりだったんだけど?」


「2400年代前半、探索者技術の流出と環境の汚染によってバイオモンスターと呼ばれる原生生物の変異体が生まれました」


「またそんなネガティブ未来の話きた」


「バイオモンスターは一定の波長の光を嫌う性質があり、人類は光を絶やさぬ事で襲われる事を免れているんです、シティが光っているのやサーチライトで照らしているのをデザインか何かだと思ってました?」


「正直支配者層の趣味だと思ってた」


「人々がシティに集まり、落伍者達がこの街を離れられない理由の一つがバイオモンスターです」


 未来世界は問題だらけだ。


「汚染された世界で何とか生き延びて集落を作って畑を耕してもモンスターが襲って来るんですね、詰んでます」


 まじ終わってる。




 目に映る景色は昭和、街を歩く人はサイボーグ、なんとも奇妙な取り合わせだ。


 商店らしき店でプラスチックのパッケージを買う片手が機械のオッサン、背負子に大量の鉄くずを詰めて運ぶ両足メカのオバハン、いかついマスクを付けた子供とその手を引く全身銀色のお母さん、なつかしさと未来が同居する謎の景色。


 ただ、すべての人々に共通する事柄として顔が生き生きとしている。


「どんな状況でも人は生きていくんだな」


「そうですね、こんな世界だからこそ生きる力に溢れている、とも言えるでしょう」


「なんていうかもっと混沌とした破壊と暴力が渦巻く場所を想像してた」


「どんな場所であれ人が集まって生きるのであればルールが必要です、ましてやここはシティの管理下にあるのですから法が存在するのは当たり前と言えるでしょう」


 どんな未来が待っているのかと思ったが、この街なら何とか生きていけそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。