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配給から帰ろうと背を向けた瞬間、手を握られてアリスは飛び跳ねた。顔が一気に赤くなって、叫びそうなのを抑えながら振り向く。エルはにこりと笑ってすぐに手を離して行ってしまった。握られた手には、小さな紙切れが残っていた。
「異端について調べてほしいなんて……どうしたらいいのよ」
たくさんの本を抱えながら、アリスはぶつぶつと文句を言う。アルアドニス唯一の図書館で本を借りたのは良いが、どれも分厚くとても期限までに読み切れる量ではない。
アルアドニスの歴史、平和への道のり、国王陛下の足跡……それらしい本はとりあえず借りてみたが、どれも眠くなってしまいそうな内容だ。
「異端って言うだけあって、歴史からは排除されてるのね……」
目次をめくって、それらしいページを探してみても、特に異端に言及された内容は見当たらない。
唯一、第5条制定の道のりだけは見つけられた。内紛状態の最中、初代国王アドニスは平和を保つためにと、政治に異を唱える者の挑戦ならばいつでも受けて立つと宣言したらしい。
「本来なら一族皆殺しにするところを、アドニス陛下は村へ追放した……実質、生かした」
平和のために国内に留めることはできないが、挑戦者やその親族をすべて排除していては、ただの独裁国家である。
代替わりしても、この風習は変わらなかったのだ。挑戦者は死を持って敗北するものの、その親族は生かされる。
「無闇矢鱈に命を奪うようなことはしない、まさに平和的な国王陛下、ってことね」
ますますわからない。建国当初ならばまだしも、現在に至っても異端が耐えないのはどうしてなのだろう?
「……エルが調べたくなる気持ち、よくわかるわ」
アリスはもう一度最初から本を開いた。エルの力になりたいと、そう思った。




