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巨人都市  作者: ハネクリ0831


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最低限の生活を得るために 雪崩

2020年5月6日

福岡県福岡市

舞鶴公園付近の住宅街


イーサン達は今、体育館と思われる建物の入り口にいた。


そのすぐ近くには、鉄でできた物置が設置されている。


リャンは物置を見上げながら口を開いた。


「これが資源回収ボックスか?」


イーサンは軽くうなずく。


「ああ、そうだな。」


二人はドアの前まで近づく。


イーサンは隙間をのぞき込みながら、そっと手を伸ばして扉を押してみた。


しかし、ここもシャッターの時と同じように、わずかな隙間はあるものの、体が入れるほどではない。


リャンは困ったように頭をかいた。


「今度はどうするんだ? シャッターの時とは違うぞ。」


イーサンは周囲を見回し、近くに落ちていた太めの木の枝を指差した。


「今度はこれを使う。」


そう言うと枝を手に取り、小さくしてドアの隙間へ差し込む。


そして能力を解除し、元の大きさへ戻した。


「……あれ?」


期待とは裏腹に、扉はほとんど動かない。


イーサンは首をかしげた。


「どうしてだ?」


その様子を見ていたリャンは、ふと視線を上へ向ける。


「あれ……これって鍵がかかっているからじゃない?」


イーサンもつられて上を見る。


そこには、しっかりと鍵穴が付いていた。


「なるほど……。」


二人は一度扉から離れた。


リャンは肩をすくめる。


「こりゃ無理そうかな?」


イーサンは物置を見渡しながら言う。


「いやいや、ほら。他にも二つあるし、もしかしたら鍵をかけ忘れているかもしれない。やってみようよ。」


リャンは半信半疑の表情を浮かべる。


「そんなことあるかな?」


二人は隣の物置へ向かった。


同じ様に試してみると、こちらも扉はびくともせず、鍵が掛かっているようだった。


「やっぱり駄目か。」


リャンがため息をつく。


最後に残った物置の前へ移動する。


イーサンが扉の隙間に小さくした枝を入れて元の大きさに戻すと――


カチャ。


小さな音とともに、扉がわずかに開いた。


二人は同時に目を見開く。


リャンは思わず声を上げた。


「本当に鍵をかけ忘れたの!? そんなことあるの!」


イーサンは苦笑しながら人差し指を立てる。


「まあまあ、そんなことより中に入ろう。」


リャンも苦笑いを返し、小さくうなずいた。


「そうだな。」


二人は周囲に人影がないことを確認すると、静かに物置の中へ足を踏み入れた。



リャンは周囲を見回しながら目を細めた。


「暗いな。」


イーサンは荷物の中からランタンを取り出した。


「ランタンをつけるか。」


火を灯すと、橙色の明かりが物置の中をゆっくり照らし始める。


すると、その先には透明な袋が山のように積み上げられていた。


以前調べて分かったことだが、それはビニールというプラスチックから作られた袋らしい。


同じような袋が、壁際いっぱいに積み重ねられている。


リャンは近くの袋をのぞき込み、中身を確認した。


「これって服じゃないのかな?」


イーサンも中を見てうなずく。


「言われてみればそうかも。」


リャンは袋の中の衣類を指差した。


「少なくとも布であることは確実だな。もしそうだったら、色々と使えるぞ。」


イーサンも想像を膨らませる。


「布団や衣服を作ることもできそうだ。」


リャンは嬉しそうに笑った。


「これは当たりだな。」


イーサンは積まれた袋を見上げながら言う。


「とりあえず何袋か持って行こう。」


そう言って、一番手前にあったビニール袋に手を触れ、小さくした。


その瞬間――


リャンが慌てて声を上げる。


「ちょっと待て! 下の物を持って行こうとしたら――」


イーサンはハッとした。


「あっ。」


しかし、もう遅かった。


ガラガラガラッ!


支えを失ったビニール袋の山が大きな音を立てながら崩れ始める。


「うわー!」


「うわぁぁ!」


二人は反射的に駆け出した。


しかし四方から大量のビニール袋が雪崩のように押し寄せ、あっという間に二人の姿を飲み込んでしまう。


やがて物音が静まり返る。


しばらくして――


「ううっ……。」


イーサンがゆっくりと目を開けた。


恐る恐る周囲を見渡す。


積み重なったビニール袋の隙間に、自分の体がすっぽり収まっていた。


少し離れた場所から声が聞こえる。


「おーい、生きてるか?」


「リャン!」


袋をかき分けると、同じように隙間へ入り込んでいたリャンの姿が見えた。


幸いにも二人とも無傷だった。


イーサンは申し訳なさそうに頭を下げる。


「すまない。大丈夫か?」


リャンは体についたほこりを払いながら苦笑した。


「ああ、大丈夫だ。でも次から気を付けてくれよ。」


イーサンは恥ずかしそうに苦笑いを浮かべる。


「ああ、本当にすまない。」


リャンは崩れたビニール袋の山を見上げると、小さくため息をついた。


イーサンは崩れてしまったビニール袋の山を見渡し、苦笑いを浮かべた。


「完全に崩れたな……まあ、あと何袋か持って行こう。」


リャンも苦笑しながらうなずく。


「了解。」


二人は一旦外に出て

再び入り一つずつ小さくして回収していく。


その結果、最初に小さくしていた一袋を含め、合計三袋を持ち帰ることにした。


「これくらいなら運びやすいな。」


「十分だろ。」


二人は荷物を抱え、静かに物置の外へ出た。


夜風が火照った体を冷やし、思わず二人とも深呼吸する。


リャンは馬の背に荷物を積みながら笑った。


「いやぁ、色々あったけど無事に確保できて良かったな。」


積み込んだビニール袋を眺めながら続ける。


「なんか適当に持ってきたけど、何が入っているのかな?」


イーサンも袋を見つめながら笑みを浮かべる。


「まあ、拠点に戻ってからのお楽しみだな。」


少し間を置いて、満足そうにうなずいた。


「まあ、これで最低限の衣食住は揃った。」


リャンは腕を組みながら感心したように言う。


「確かにな。後はどう活かすのかだな。」


イーサンは静かにうなずく。


「その通りだ。」


二人は馬の背に荷物をしっかりと固定し、忘れ物がないか最後に周囲を確認した。


静まり返った住宅街には、人の気配はない。


イーサンが手綱を握る。


「よし、帰ろう。」


「おう。」


馬はゆっくりと歩き始める。


月明かりに照らされた夜道を進みながら、二人は今日の収穫を思い返していた。


廃棄されるはずだった食料。


思いがけず手に入った衣類。


そして、この世界では当たり前のように捨てられている資源の数々。


前の世界では考えられなかったほどの豊かさに驚きながらも、その資源をどう生かしていくかを考えつつ、二人は拠点への帰路についた。

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