最低限の生活を得るために うまい
近づくと分かった。そこには野菜などの食べ物があった。
しかしよく見ると、一部の野菜はしなっていたり、パンなどは中身がぐちゃぐちゃになっていた。
イーサンは眉をひそめながら辺りを見回した。
「何かおかしいな……」
違和感を覚えたイーサンは、さらに周囲を見渡す。
するとダンボールの一つに文字が書かれているのが目に入った。
以前見た一覧表と照らし合わせて考え、
「……廃棄品か」
と小さくつぶやく。
リャンは首をかしげながら野菜を見つめた。
「腐っているのかな?」
そう言うと、近くにあったパンを小さくして袋を開け、一口かじった。
「うっ……!」
突然苦しそうな声を上げたリャンに、
「おい、大丈夫か! 吐き出せ!」
イーサンは慌てて駆け寄る。
するとリャンは顔を上げ、
「うまい。」
と真顔で言った。
「まぎらわしいことをするなよ!」
イーサンは思わずツッコミを入れる。
リャンは苦笑いを浮かべながら肩をすくめた。
「いや、本当にうまいんだよ。見た感じ腐っているようには見えないよ。」
半信半疑のイーサンもパンを食べてみた。
「……確かに美味しいし、腐っているようには見えない。」
今度は野菜の方にも目を向ける。
見た目は少し葉が枯れていたり、しなっていたり、形が悪かったり、割れているものもある。しかし――
「どれも腐っているようには見えない。」
さらに缶詰の山を調べてみる。
傷があったり凹んでいたりはするが、どの缶も膨らんではいない。
「これも腐っていないのか……」
乾麺も割れてはいるものの腐っている様子はない。
先ほど食べたパンも、改めて見てもカビが生えていたり腐っているようには見えなかった。
リャンは信じられないという表情で周囲を見渡した。
「なのにどうして廃棄品になっているんだ?」
イーサンは腕を組み、少し考えてから答える。
「想像だけど……見た目が悪いからじゃないかな。」
リャンは目を丸くした。
「そんな理由で!? 一体どんだけ食べ物に溢れているんだ、この世界は。」
イーサンも積み上げられた食料を見つめながら静かにうなずく。
「確かに……これだけでも、一体何人の人がお腹いっぱいに食べられることやら。」
二人は自然と前の世界での生活を思い出した。
孤児院では満足な食事はなく、飢えをしのぐためにそこら辺の草木や小さな生き物まで食べていた日々。
目の前に積み上げられた「まだ食べられる食べ物」と、その頃の記憶とのあまりの落差に、二人はしばらく言葉を失った。
リャンは目を輝かせながら口元を緩めた。
「なあ、これも持っていこうぜ。」
イーサンは少し驚いた表情を浮かべる。
「ええっ。」
リャンは積み上げられたダンボールを指差した。
「だって考えてみろよ。どうせこれは捨てられるんだぜ。それがなくなったって誰も違和感を感じないだろう。むしろ喜んでくれるかもしれないぞ。」
イーサンは腕を組み、しばらく考え込んだ。
「……まあ、確かにな。」
イーサンは改めて目の前の食料を見渡した。
確かにこれだけ食料があれば、しばらくは安泰だ。
しかし同時に、持ち去り過ぎれば不自然になるという考えも頭をよぎる。
「でも、少しだけにしようか。全部持って行くと疑われてしまう。」
リャンはニヤリと笑い、親指を立てた。
「おお、そう来なくっちゃな。」
この先も別の場所で物資を調達する予定だ。
先のことまで考えれば、一度に運び過ぎない方が賢明だった。
二人は相談しながら、
* 缶詰が入ったダンボールを二箱。
* キャベツが入ったダンボールを一箱。
* 乾麺が入ったダンボールを一箱。
を小さくして運ぶことにした。
リャンは満足そうに荷物を見渡しながら笑う。
「こりゃ大収穫だな。」
イーサンも小さく笑みを浮かべた。
「ああ。当分は食べ物に困らなくて済みそうだ。」
二人は静かに建物の外へ出る。
待たせていた馬の背に荷物を一つずつ積み込み、荷崩れしないようしっかりと固定した。
準備を終えると、イーサンが手綱を握る。
「よし、次の場所へ行こう。」
「おう。」
夜の静かな街を、二人と馬は次の目的地へ向かってゆっくりと歩き出した。
リャンが尋ねた。
「次はあそこだよな。」
イーサンは地図を確認しながらうなずく。
「ああ、資源回収ボックスという場所だ。そんなに遠くないよ。」
少し間を置いて続ける。
「ここはいわゆるゴミ捨て場みたいな所だから、物を取っても不自然には思われないだろう。」
リャンは納得したように何度もうなずいた。
「なるほどな。」
そう言うと、手綱を軽く引いて馬を前へ進ませる。
道を抜け、街灯の明かりを避けるように進みながら、二人は静かな夜道を移動していく。
荷台には先ほど手に入れた食料がしっかりと積まれ、馬は落ち着いた足取りで歩き続けた。
しばらく進むと、目的地らしき場所が見えてくる。




