最低限の生活を得るために ダンボール
イーサンは積み上げられた箱を見つめながら、ふとつぶやいた。
「これ……ダンボールじゃないのか?」
「まさか。でも見た目的には木箱には見えないな。」
リャンも首をかしげながら箱へ近づく。
2人は慎重に箱へ歩み寄ると、手を伸ばして表面に触れてみた。
イーサンは軽く箱を叩きながら確信したように言う。
「やっぱりダンボールだ。」
「いや、こんなに全部ダンボールなのは初めてだ。」
リャンは周囲を見回し、どこまでも積み上げられた箱の山に驚きを隠せなかった。
2人はしばらくその光景に見入っていた。
やがてイーサンが気持ちを切り替えるように言う。
「まあ、そんなことより目的のものを探そう。」
「ああ、そうだな。」
リャンも頷いた。
イーサンはポケットから書き写した日本語一覧を取り出し、紙を広げた。
「この文字があるものが塩だ。」
そう言って一覧の中の**『塩』**と書かれた文字を指差す。
「了解。じゃあ探しましょうか。」
リャンは一覧を一度見てから周囲を見渡し、2人は巨大なダンボールの間を縫うように歩き始めた。
2人はダンボールの間を慎重に進み始めた。
巨大な箱が何列にも並び、その隙間は2人にとって谷間のようだった。
「しかし広いな……。」
リャンは辺りを見回しながらつぶやく。
「保管庫だからな。商品がたくさんあるんだろう。」
イーサンは日本語一覧を片手に、箱の側面へ書かれた文字を一つひとつ確認していく。
「あったか?」
リャンが尋ねる。
「いや、これは違う。」
イーサンは首を横に振った。
2人は次の列へ移動する。
「これも違うな……。」
リャンも箱に書かれた文字を見比べながら歩いていた。
しばらく探し続けると、イーサンが突然足を止めた。
「おい、待て。」
「どうした?」
リャンも立ち止まり、イーサンの視線の先を見る。
イーサンは一つのダンボールを指差した。
「この文字……。」
そう言って手元の一覧と何度も見比べる。
「『塩』だ。」
「本当か!」
リャンは思わず声を弾ませた。
「間違いない。これが目的の品だ。」
イーサンは少し笑みを浮かべながら頷く。
「よし、中を確認してみよう。」
ちょうどダンボールの蓋が開いていたため、2人は縁まで登ると、そのまま中へ飛び移った。
目の前には白い袋が何十個も整然と積み重ねられていた。
「おお……。」
リャンは思わず息をのむ。
「全部、塩か?」
イーサンは袋の一つへ近づき、印刷された文字をもう一度確認した。
「間違いない。塩だ。」
「やったな。」
リャンは嬉しそうに笑う。
「これだけあれば、しばらく塩には困らない。」
イーサンは袋の山を見上げながら満足そうに頷いた。
「と言っても、持っていくのは一つだけだ。」
「どうしてだ?」
リャンが不思議そうな表情を浮かべる。
「全部取ると、巨人達に騒がれてしまう可能性がある。」
イーサンは真剣な表情で答えた。
「なるほど。」
リャンは納得したように頷く。
「できる限り目立たないことが基本だ。少しでも異変があれば警戒される。」
そう言うと、イーサンは塩の袋にそっと手を触れた。
「よし。」
能力で袋を小さくすると、元の何十分の一ほどの大きさになった。
「これなら運べるな。」
リャンが感心したように言う。
「ああ。必要になったら元の大きさに戻せばいい。」
イーサンは小さくなった塩の袋を背負い、2人は来た道を引き返すことにした。
「じゃあ、目的のものも見つけましたし、退散しましょうか。」
「あ、いや、ちょっと待って。」
リャンが何かに気づいたように足を止める。
「どうした?」
イーサンが振り返ると、リャンはある一角を指差した。
「なんか、あそこだけ他の場所とは違うぞ。」
イーサンもその方向へ目を向ける。
確かに、周囲のダンボールはきれいに整列して積み上げられているのに対し、その一角だけは箱や袋が雑多に置かれ、まるで急いで集められたような状態になっていた。
「本当だ……。」
イーサンは小さくつぶやく。
「折角だし、行ってみようか。」
リャンは興味深そうに笑う。
「うーん……。」
イーサンは腕を組み、少し迷った。
余計な行動は危険だ。
だが、あの場所だけ様子が違うのも気になる。
「少し時間を確認するか。」
イーサンは懐から懐中時計を取り出し、蓋を開いた。
時計の針はちょうど夜の12時を指していた。
「もう日が変わってたのか。」
イーサンは時計をしまい、もう一度雑多に荷物が置かれた場所へ目を向ける。
「でも……折角だし、行ってみる価値はあるかな。」
そう言って小さく笑う。
「よし、決まりだな。」
リャンも頷く。
2人は周囲を警戒しながら、整然と並んだダンボールの間を抜け、荷物が無造作に積まれた一角へ静かに向かっていった。




