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巨人都市  作者: ハネクリ0831


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最低限の生活を得るために  新生活のスタート

するとリャンは、以前拾っておいた空き缶を取り出した。


ナイフで丁寧に切り開き、一枚の板状に加工すると、それを元の円筒形とは違う平らな形へと整えていく。


イーサンはその様子を見ながら尋ねた。


「何を作っているんだ?」


リャンは加工を続けながら笑みを浮かべる。


「見てな。」


やがて作業を終えると、平らな金属板を持ち上げた。


そして元の大きさに戻した。


「こうすれば箒の代わりになる。」


イーサンは感心したように頷く。


「それは名案だ。枝で掃くより、一度にたくさん集められる。」


リャンは得意げに胸を張った。


「だろ? これなら木屑も埃もまとめて運べる。」


二人は空き缶から作った即席のちり取りを使い、木屑や大きめの埃を一か所へ集め始めた。


玄関には散弾銃で開けた穴から飛び散った木屑が山のように積もっている。


部屋の隅には長年放置されていた埃が固まりとなって残っていた。


リャンは金属板で埃をすくい上げながら言う。


「思った以上に量があるな。これだけ放置されていたら当然か。」


イーサンも作業の手を止めることなく答えた。


「空き家だった証拠でもある。大変だが、一つずつ片付けよう。」


集めたゴミは袋へ詰め込み、馬に載せて家の外まで運び出した。


何度も家と外を往復し、少しずつ室内はきれいになっていく。


それでも作業は一日では終わらなかった。


翌日も朝から掃除を続け、二人は黙々と埃や木屑を運び出し続けた。


そして──。


2020年4月29日


二日間に及ぶ掃除を終え、室内は見違えるほどきれいになっていた。


床を覆っていた埃はほとんど姿を消し、玄関周辺に散らばっていた木屑もきれいに片付けられている。


空気もどこか澄んだように感じられた。


イーサンは部屋をゆっくり見渡し、満足そうに頷いた。


「少しは良くなったな。まだ細かい埃は残っているが、生活するには十分な環境になった。」


リャンはその場に腰を下ろし、大きく息をついた。


「二日も掃除することになるとは思わなかった。でも苦労しただけの価値はあるな。最初に来た時とはまるで別の家みたいだ。」


イーサンは部屋を見回しながら、満足そうに頷いた。


「じゃあ次は拭き掃除だ。」


リャンは荷物の中をごそごそと探ると、一枚のボロ布を取り出した。


「じゃあこれを使おう。」


その布は、この空き家で見つけた数少ない生活用品の一つだった。


穴こそ開いていないものの、長年放置されていたせいで色あせている。


今は彼らの能力によって小さくして持ち運べる状態になっていた。


イーサンは不思議そうな顔をする。


「どうするんだ?」


リャンは笑みを浮かべた。


「まあ見てな。」


そう言うと、水筒を傾けて布へ少量の水を染み込ませる。


次の瞬間、布は元の大きさへと戻り、二人の前には巨大な雑巾が広がった。


イーサンは思わず目を丸くする。


「なるほど……。これなら一度に広い範囲を拭ける。」


リャンは得意そうに笑った。


「どうだ。巨大雑巾の完成だ。」


しかしイーサンは腕を組みながら首を傾げる。


「でも、こんな大きなものをどうやって動かすんだ? 二人で押しても大変だろう。」


リャンは自信満々に答えた。


「それは勿論、力持ちに頼む。」


そう言うと外へ向かい、二頭の馬を連れてきた。


馬の胴に縄を結び、その先を巨大な布の両端へしっかり固定する。


準備を終えると、リャンは振り返って言った。


「これで馬にゆっくり引っ張ってもらう。私達は後ろから布がずれないように押さえながら進めば、床全体を効率よく拭けるはずだ。」


イーサンは感心したように笑う。


「おお、それはいいアイディアだな。馬の力を利用すれば、私達だけでは到底動かせない大きさの布でも扱える。」


二人は早速作業を始めた。


馬はゆっくりと歩き、その後ろを二人が布を押さえながら進む。


巨大な布は床の埃や細かな汚れを次々と拭き取っていった。


イーサンは床を確認しながら指示を出す。


「もう少し右だ。隅に汚れが残っている。」


「了解。」


リャンが布の位置を微調整すると、床は少しずつ本来の色を取り戻していく。


しばらく作業を続けると、巨大な布は黒く汚れてきた。


イーサンは布を見つめながら眉をひそめる。


「さすがに洗わないといけないか。でも水は貴重だから、できるだけ無駄には使いたくない。」


リャンは安心させるように笑った。


「それなら大丈夫だ。」


そう言うと、汚れた布を再び小さくし、外へ持って行く。


庭へ出ると、草の葉先には朝露がびっしりと付いていた。


リャンはその露を利用して布を何度もこすり洗いする。


少し時間は掛かったが、布の汚れは徐々に落ちていった。


イーサンもその様子を見て納得する。


「なるほど。水を大量に使わなくても、朝露を集めれば洗えるのか。」


リャンは布を軽く絞りながら笑った。


「こうすればいいさ。時間は掛かるけど、水筒の水を減らさずに済む。」


イーサンは静かに頷く。


「ああ。時間は掛かるが、これが一番現実的だな。」


二人はその作業を何度も何度も繰り返した。


部屋を拭き終えては布を洗い、乾かしてまた拭く。


毎日少しずつ床を磨き続け、家全体の掃除を進めていった。


そして──。


2020年5月4日


ようやく最後の部屋の拭き掃除が終わった。


相当時間は掛かった。


しかし、家の中は見違えるほど綺麗になっていた。


床には埃一つほとんど見当たらず、空気まで澄んだように感じられる。


イーサンは部屋全体を見渡し、静かに息をついた。


「掃き掃除と合わせて一週間か。思っていた以上に時間は掛かったな。」


リャンは壁にもたれ掛かりながら満足そうに笑う。


「掛かったけど、やった甲斐はあったな。最初にこの家へ入った時とは別の家みたいだ。」


イーサンも穏やかに微笑む。


「ああ。ただの空き家だった場所が、ようやく私達の住まいらしくなってきた。」


リャンは部屋を見回しながら、大きく頷いた。


「これなら安心して暮らせる。ようやく本当の意味で、新生活のスタートだ。」


苦労の末に手に入れた拠点は、少しずつではあるが、確実に二人だけの「家」へと変わっていくのだった。

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