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巨人都市  作者: ハネクリ0831


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最低限の生活を得るために ポツ、ポツ。

馬具を一通り取り付け終えると、イーサンは満足そうにうなずいた。


「よし、これで出発できる。」


リャンは荷物を確認しながら笑う。


「やっと先へ進めるな。」


二人が馬を連れて歩き出そうとした、その時だった。


イーサンはふと立ち止まり、空を見上げた。


空は一面、灰色の雲に覆われていた。


風もどこか湿り気を帯びている。


イーサンは眉をひそめる。


「嫌な天気だな。」


リャンも空を見上げた。


「確かに。」


イーサンは冗談半分に肩をすくめる。


「このまま雨が降ったり──」


リャンは慌てて遮った。


「そんなフラグみたいな事を言ったら……。」


その瞬間だった。


……ポツ。


葉の上で小さな音が鳴る。


続いて、


……ポツ、ポツ。


次第に音は増えていった。


リャンは青ざめた表情で空を見た。


「まさか……。」


そう、この世界に来て初めて雨が降り始めたのだ。


今は木の葉が天然の屋根となっているため、まだ直接雨は降り込んでこない。


しかし葉の先には大粒の雫が次々と溜まり始めていた。


イーサンは周囲を見回し、すぐに判断する。


「時間の問題だ。馬を木の洞へ避難させよう。」


「急ごう!」


二人は馬のもとへ駆け寄った。


イーサンは用意していた縄を取り出す。


「二か所縛る。一か所だけだと持ち上げた時に傾く。」


「了解。」


二人は息を合わせて縄を締め、肩に力を込める。


「せーの!」


ゆっくりと馬を持ち上げ、一歩ずつ木の洞へ運んでいく。


一頭目を無事に運び終えると、すぐに二頭目も同じように運び込んだ。


「二頭とも無事だ。」


「間に合ったな。」


その直後だった。


葉の先に溜まっていた雨粒が落ちてきた。


ドォンッ!


二人のすぐ横へ落ちた一滴は、今のサイズでは滝のようだった。


続いて何本もの水柱が落ち始める。


ゴォォォォッ!


木の幹を流れる水は激流となり、地面にはあっという間に川ができていく。


リャンは思わず後ずさった。


「これ……完全に災害だ。」


イーサンも苦笑する。


「普通の雨がここまで違うとはな。」


木の洞の入口から外を眺めると、森全体が白い雨の幕に包まれていた。


イーサンはリャンに尋ねる。


「どうする?」


リャンは首を横に振る。


「少なくとも今日は無理だろう。」


「だな。無理に出れば流される。」


二人は馬の様子を確認すると、木の洞の奥へ戻った。


外では激しい雨音だけが響き続けている。


やることがなくなった二人は、以前メモ書きしていた日本語の紙を取り出した。


イーサンは紙を見つめながら、一文字ずつ声に出す。


「『びょういん』、『としょかん』、『おみせ』……。」


リャンも後に続く。


「日本語って難しいな。」


「読めるようになれば、この世界の情報を集めやすくなる。」


二人は何度も発音を繰り返し、メモに書かれた単語を必死に覚えていった。


しばらくすると、リャンが紙を置いて口を開く。


「雨が止んだら、次はどこへ向かう?」


イーサンは地図を開きながら答えた。


「まずは住宅地をもう少し調べたい。それから食料の確保と、日本語の資料を探す。」


「住めそうな場所も見つけたいな。」


「ああ。それと雨の日でも避難できる拠点を増やしておきたい。」


二人は今後の予定を書き出しながら、限られた時間を有効に使っていく。


外では相変わらず豪雨が降り続いていたが、木の洞の中では、日本語の勉強とこれからの旅の計画が静かに進められていた。


しばらくすると、木の洞の中にも冷たい空気が流れ込んできた。


外では激しい雨が降り続き、木の幹を伝う水の音が絶え間なく響いている。


リャンは肩を震わせながら腕をさすった。


「ううっ……寒くなった。」


イーサンも息を吐きながら苦笑する。


「まあ、雨が降っているからな。気温も下がってる。」


「焚き火も無理だしな……。」


リャンはそう呟くと、木の洞の奥に置いてあった木箱をゴソゴソと漁り始めた。


イーサンは不思議そうに見る。


「何を探してる?」


しばらくすると、リャンは満面の笑みを浮かべながら一本の瓶を掲げた。


「やっぱこれだよな。」


それは以前確保していたウォッカの瓶だった。


透明な液体が瓶の中で揺れている。


イーサンの表情も自然と緩む。


リャンは瓶を軽く振りながら尋ねる。


「お前も飲むか?」


イーサンは迷うことなくうなずいた。


「もちろん。」


リャンが蓋を開けると、アルコール独特の香りがほのかに漂う。


二人は瓶を両手で抱えるように持ち、一口ずつゆっくりと口に含んだ。


「……っ。」


喉を焼くような刺激が走る。


しかし、その熱はすぐに胸の奥へ広がり、冷え切った体を内側から温めていく。


イーサンは思わず息を吐いた。


「寒くなったらこれだよな。」


リャンも笑いながらうなずく。


「そうだな。」


もう一口飲むと、張り詰めていた肩の力が少しずつ抜けていく。


外では豪雨が降り続いているが、二人の頬にはほんのりと赤みが差していた。


少し酔いが回ると同時に、冷え切っていた体もすっかり温まっていた。


リャンは瓶を眺めながらしみじみと言う。


「ウォッカはいいよな。体は温まるし、消毒にも使える。」


イーサンも笑って答えた。


「本当に便利だ。」


ふと思い出したようにイーサンが口を開く。


「アウラさんも言っていた。『ウォッカはなんでも使える万能薬だ』って。」


リャンは深くうなずく。


「深く同意する。」


イーサンは苦笑しながら付け加えた。


「一本あるだけで安心感が違う。」


「まさに旅の相棒だな。」


二人は小さく笑い合いながら、再び瓶を回して少しだけ口をつけた。


外では雨が激しく降り続けていたが、木の洞の中だけは、ウォッカのおかげで少しだけ温かな空気に包まれていた。

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