最低限の生活を得るために Englishという文字
2020年4月20日
オオホリパーク
イーサンはその文字列を見た瞬間、眉をひそめた。
「ズレている」
隣にいたリャンが首を傾げる。
「何が?」
イーサンは画面上部を指差した。
「日にちだよ。4日ズレている」
画面の表示では4月24日になっていた。
今までは以前見つけた新聞の日付を基準としていた。
しかしここと4日もの差がある。
リャンも不思議そうな顔をした。
「どっちが正しいんだ?」
「分からない……」
イーサンは腕を組みながら考え込む。
新聞の方が正しいのか。
それともこの不思議な板の表示が正しいのか。
そこでイーサンはポケットから懐中時計を取り出した。
針の位置を確認し、画面の端に表示されている数字と見比べる。
しばらくして小さくうなずいた。
「時間は一致しているな」
「本当か?」
「ああ。ほとんど同じだ」
リャンも画面を見つめる。
それなら、この表示の方が正しい可能性が高い。
イーサンは記憶を辿った。
そして、ある事を思い出す。
「あの新聞……」
「何か気付いたのか?」
「少しボロボロだった気がする」
当時は特に気にしていなかった。
だが今思えば、古くなった新聞だった可能性もある。
「つまり、あれは昔の新聞だったって事か?」
「多分な」
イーサンは再び光る画面へ目を向けた。
これまで信じていた日付が間違っていたのだとしたら、自分たちが置かれている状況も改めて考え直さなければならないかもしれない。
二人はしばらく無言のまま、その光る画面を見つめていた。
リャンは光る画面を見つめながら首を傾げた。
「この後どうするんだろう」
イーサンも画面へ目を向ける。
「確かに」
流石にこの画面は時計にしては贅沢すぎる。
これだけ大きな装置なのだから、他にも何か機能があるはずだ。
二人は画面をあちこち触り始めた。
すると画面が切り替わり、たくさんの数字が並んだ。
「数字だらけだな」
「何か入力するのかもな」
二人は適当に数字を押してみる。
しかし反応はない。
何度か試した後、今度は画面に顔のようなマークが表示された。
リャンが不思議そうに眺める。
「なんだこれ」
イーサンはしばらく考え込んだ。
どこか意味がありそうな表示だ。
そして、ある可能性に思い至る。
「まさかこれって……」
そう呟くと、イーサンはスマホを小さくして持ち上げた。
そのままバッグの外へ飛び出していく。
後ろからリャンが声を上げた。
「どこに行くんだ」
しかしイーサンは答えない。
そのまま巨人の方へ向かって走る。
いつの間にか巨人は寝返りを打ち、横向きになっていた。
イーサンは巨大な顔の近くまで駆け寄る。
そしてスマホの画面を巨人の顔へ向けた。
すると――
画面が反応した。
顔のようなマークが消え、別の画面へ切り替わる。
リャンは目を丸くした。
「おおっ!」
イーサンは小さく笑う。
「やっぱりそうか」
ようやく追いついたリャンが尋ねた。
「どういう事だ」
イーサンは変化した画面を指差した。
「この機械は顔で解除する仕組みなんだ」
「顔で?」
「ああ。この巨人の顔を覚えていて、それを確認すると使えるようになるらしい」
リャンは驚いた様子で巨人と画面を見比べた。
「こりゃすごい機能だな」
イーサンも同意するようにうなずく。
「本当にな」
見た事もない仕組みだった。
この世界には、自分たちの知らない技術が数多く存在するのかもしれない。
イーサンは改めて光る画面を見つめた。
「この世界について興味を持つようになるな」
リャンも笑った。
「まだまだ知らない事だらけみたいだな」
二人は期待と好奇心を胸に、再び画面へ視線を向けた。
画面には正方形の絵がたくさん並んでいた。
どれも何かを表しているようだが、二人には意味が分からない。
そもそも文字が読めないのだ。
イーサンはため息をついた。
「全然わからない」
リャンも苦笑する。
「とりあえず適当に弄れば?」
それ以外に方法はなさそうだった。
二人は画面のあちこちを触り始める。
すると、指でなぞると画面が動くことに気付いた。
「おおっ、動いたぞ」
「面白いな」
まるで本のページをめくるように、次々と違う画面が現れる。
二人は好奇心のまま操作を続けた。
そして偶然、とある画面へたどり着く。
そこには文字がずらりと並んでいた。
相変わらず内容は読めない。
だが、その中に見覚えのある文字があった。
リャンが指差す。
「イーサン、これって」
画面にはEnglishという文字が表示されていた。
イーサンも目を見開く。
「English……」
「英語があった」
「本当か?」
「分からないけどな」
そう言いながらも、イーサンの表情には期待が浮かんでいた。
もし予想が正しければ、この機械の文字を読めるようになるかもしれない。
イーサンはゆっくりと手を伸ばす。
そして画面の「English」の部分を突いた。




