最低限の生活を得るために 茶色の革バッグ
二人は慌てて外へ飛び出した。
何事かと思い周囲を見渡す。
すると草地の方に、巨人の女性が横になって眠っていた。
黒髪のショートヘアで、緑色の服を着ている。
スカートだが異常に短い膝より上だ。
イーサンは思わずつぶやいた。
イーサン「この世界に来てから思ってたけど、こっちの人達の服装って結構違うよな」
リャン「文化の違いなんだろうな」
二人はしばらく様子を観察した。
女性は完全に眠っているようだった。
リャン「どうする?」
イーサン「気になるから近づいていこうぜ」
そう言うとイーサンは女性の方へ向かった。
リャンも後を追う。
女性の呼吸に合わせて体がゆっくり上下している。
イーサンは近くまで行き、手を伸ばして服の袖に触れた。
イーサン「うわ、あったかいな」
リャン「生き物だからな」
さらに近づくと、独特の匂いが漂ってきた。
イーサンは顔をしかめる。
イーサン「酒臭い」
リャンも鼻をひくつかせた。
リャン「ああ、本当だ」
イーサン「飲んでベロベロになって、そのまま寝たのかもしれないな」
リャン「この場所でか?」
イーサン「あり得なくはないだろ」
女性は大きないびきをかきながら眠り続けている。
二人に気付く様子はまったくない。
「そうだな、気になった事があった。」
そう切り出したイーサンに、リャンが不思議そうな表情を向ける。
「どうしたんだ、いきなり」
「巨人が身につけていた場合は縮める事は出来るのかな?」
その疑問を聞いたリャンも腕を組んだ。
「確かに気になるな」
二人は早速試してみる事にした。
イーサンは巨人の服に触れて小さくなれと念じた。
しかし何も変化はない。
服は微動だにせず、縮む様子も見られなかった。
その結果を見ていたリャンが口を開く。
「巨人の身につけているものは反応しないみたいだな」
イーサンも小さくうなずいた。
「そうみたいだな」
また新たな事実が判明した
その後、イーサンは胸の部分へ飛び乗り、周囲を見渡した。
すると反対側にバッグがあるのが見える。
「あれ気になるな」
視線の先にある茶色の革バッグへ興味を示したイーサンは、そのままバッグに向かって飛んだ。
バッグに近づくと、中は薄暗く大きな空間が広がっていた。
リャンが足を止める。
「どうするんだ?」
イーサンはバッグの開口部を見上げながら答えた。
「折角だし中のものを見てみようよ」
そう言うと、二人はバッグの中へ入り込んだ。
中には様々な物が入っていた。
まず目に入ったのは小さなポーチだった。
イーサンが近づいて中を覗くと、化粧品らしき物が並んでいる。
「これは何に使うんだろうな」
「さあな」
二人は軽く眺めると次へ向かった。
さらに進むと手帳のような物が見える。
ページの端は二人の身長よりも高く、まるで巨大な壁のようだった。
「字がたくさん書いてあるな」
「日記か何かじゃないか?」
興味深そうに眺めたが、それ以上は分からない。
その後もペンやハンカチなどを見つけながらバッグの中を進んでいく。
そして一番奥まで来た時だった。
そこには黒い板のような物が置かれていた。
イーサンが近づく。
「これは……」
リャンも隣に並んだ。
「なんだろうな」
巨大な長方形の物体。
二人の目の前にあったのはスマホだった。
二人にとって、その物体が何なのかは分からなかった。
ただの黒い板のようにしか見えない。
リャンは興味本位で表面に触れてみた。
すると――
突然、画面が光った。
「うわっ!」
思わず後ずさるリャン。
イーサンも驚いて身構えた。
しかし何かが飛び出してくる様子はない。
恐る恐る画面へ視線を向ける。
そこには美しい景色が映し出されていた。
青い空。
緑の木々。
そして夕日に照らされた湖。
まるで窓の向こうに別の世界が広がっているようだった。
リャンは感嘆の声を漏らす。
「綺麗だな」
イーサンも目を奪われていた。
「ああ」
二人はしばらく景色に見入った。
やがてイーサンは画面の上部に並ぶ小さな記号や数字へ目を向ける。
何かの文字が規則正しく並んでいる。
「これ、何だろうな」
「さあな」
意味は分からない。
だが文字の並び方からして、日時のような情報ではないかと思えた。
その時だった。
数字の列を眺めていたイーサンの視線が、ある数字のところで止まる。
「ん?」
何かが気になったのだ。
イーサンは目を細め、その数字をじっと見つめた。




