知った能力 黄色い瞳
イーサンは死んだカモに触れて小さくした。
サイズは通常サイズになった。
リャン「じゃあ帰るますか」
その時、突然あたりが暗くなった。
イーサンは思わず空を見上げる。
イーサン「ん……?」
地面に長い影が落ちていた。
リャンも異変に気付き、ゆっくりと後ろを振り返る。
リャン「何か来ている……」
2人が後ろを振り返ると、そこには猫がいた。
巨大な体。
鋭い目。
ゆっくりと揺れる尻尾。
小人の2人から見れば、まるで虎のような大きさだった。
イーサン「うわっ!」
イーサンは思わず後ずさる。
リャン「これ何かやばくないか?」
猫はじっと2人を見つめている。
黄色い瞳が獲物を観察するように細められた。
しばらく静寂が流れる。
イーサン「た、ただ見てるだけだよな……?」
リャン「そう願いたいが――」
その瞬間だった。
猫の耳がピクリと動いた。
前足が地面を掴む。
低い姿勢になる。
リャン「まずい!」
猫が勢いよく襲いかかってきた。
ドンッ!
巨大な前足が地面を叩き、土や枯れ葉が舞い上がる。
2人はそれぞれに散らばった。
イーサン「うわあああ!」
リャン「走るぞ!」
イーサンは必死に草むらへ飛び込み、リャンは反対方向へ駆け出した。
猫は首を左右に動かしながら獲物を探している。
イーサンは草の陰に身を伏せた。
心臓が激しく鼓動している。
イーサン「どうしようか?」
息を殺しながら小声で呟く。
するとある作戦が思いついた。
イーサン「そうだ、それこそあの能力を使えばいいじゃないか!」
草むらに身を隠しながら、イーサンは猫の様子をうかがった。
巨大な猫は鼻をひくひくさせながら周囲を探している。
イーサン(落ち着け……近付いてきた瞬間だ)
心臓が激しく鳴る。
そして猫がゆっくりとこちらへ歩いてきた。
一歩。
また一歩。
十分に近付いた瞬間――
イーサン「今だ!」
イーサンは全力でジャンプした。
ノミのような跳躍力で宙を舞い、そのまま猫の胴体へ飛び乗る。
猫は突然背中に何かが乗ったことに気付いていない。
イーサンはすぐに手を猫の胴体へ当てた。
イーサン「よし、このまま小さくなれ」
そう心の中で念じた。
しかし――
何も起こらない。
イーサン「ええ!? どうしてだ?」
能力が発動した気配がまったくない。
イーサンは思わず目を見開いた。
イーサン「そんな馬鹿な……」
だが猫は待ってくれない。
背中に違和感を覚えた猫は激しく体を振った。
ブンッ!
イーサン「うわあっ!」
まるで振り落とされた木の葉のように吹き飛ばされる。
そのまま地面へ叩きつけられた。
ドサッ!
イーサン「いてて……」
何とか起き上がろうとしたその時だった。
目の前に巨大な猫の顔が現れた。
黄色い瞳。
鋭いひげ。
わずかに開いた口から見える牙。
イーサンは全身が凍り付くような恐怖を覚えた。
イーサン(まずい……)
猫は興味深そうに首を傾げる。
そしてゆっくりと前足を持ち上げた。
イーサン「どうしようか?」
必死に考える。
だが考える時間はほとんど残されていない。
巨大な前足が迫ってくる。
イーサン「よし、こうなったら!」
彼は散弾銃を構えた。
銃口の下には改造によって取り付けられるようになった銃剣がある。
素早く銃剣を固定する。
カチッ。
イーサン「来い!」
猫の前足が振り下ろされる。
その瞬間、イーサンは全力で突き出した。
猫は痛みに驚いて飛び退いた。
そして警戒したように耳を伏せる。
数秒間にらみ合いが続いた後、猫は突然向きを変えた。
タッ、タッ、タッ――
そのまま草むらの奥へ走り去っていった。
静寂が戻る。
イーサンはその場に座り込んだ。
イーサン「はあ……助かった……」
しばらくしてリャンも物陰から現れる。
リャン「生きていたか?」
イーサン「ああ、何とかね」
リャンは散弾銃の先端を見る。
リャン「その銃剣が役に立ったな」
イーサン「いや、本当に改造して正解だった」
彼は銃を見つめながら苦笑した。
しかし、すぐに表情が真剣になる。
イーサン「そんなことより……」
リャン「どうした?」
イーサン「どうしてあの猫は小さくならなかったのか?」
リャン「確かに不思議」
イーサンは先ほどの光景を思い返した。
死んだカモには能力が使えた。
しかし生きている猫にはまったく反応しなかった。
イーサン「もしかして……」
リャン「何か分かったか?」
イーサン「まだ確信はない。でも能力には何か条件があるんだ」
リャン「条件?」
イーサン「生き物には使えないのか、それとも死んだものにしか使えないのか……」
リャン「つまりまずこの能力の法則を知らないといけないか。」
イーサン「ああ。今まで偶然使えていただけかもしれない」
能力の謎はむしろ深まっていた。




