知った能力 小さな粒のようなもの
そのまま進み続けた2人は、やがて胸の膨らみの近くへと辿り着いた。
目の前には大きな起伏が広がっている。
リャンは足を止め、思わず見上げた。
リャン「うわ……本当に山みたいだな」
イーサン「顔の上にいた時も思ったけど、近くで見ると余計にスケールがおかしいな」
女性が呼吸をするたびに、その膨らみはゆっくりと上下する。
まるで大地そのものが動いているようだった。
リャン「見ろよ。地面が揺れてるみたいだ」
イーサン「いや、実際に揺れてるんだよ。あれは呼吸だ」
2人はしばらくその様子を眺めた。
一定のリズムで繰り返される上下運動。
そのたびに微かな風が吹き抜ける。
リャン「こんな近くで見ると、巨人っていうより自然現象だな」
イーサン「台風とか地震とか、そういうのに近い気がする」
リャンは笑った。
リャン「言えてる」
その時、女性が寝返りを打ちそうに肩を動かした。
ゴゴゴ……
巨大な体がわずかに動いただけで、周囲の景色が揺れる。
リャン「おっと!」
イーサン「伏せろ!」
2人は慌てて身を低くした。
しかし女性は完全に寝返りを打つことなく、再び静かになった。
イーサン「危なかった……」
リャン「今ので分かったな。起きなくても十分危険だ」
イーサン「だから最初からそう言ってるだろ」
2人は苦笑しながら立ち上がる。
そしてさらに先へ進み、巨大な女性の体の調査を続けるのだった。
次はお腹だった。
彼女は服が少しはだけており、おへそが丸見えになっている。
上には掛け布団がかかっていて、2人は少し蒸し暑さを感じていた。
お腹は柔らかい。
歩くたびに足元がわずかに沈み、ぷにぷにとした感触が伝わってくる。
リャン「おお、柔らかいな」
そう言いながら振り返ると、イーサンの姿が見当たらない。
リャン「ん?」
少し先を見ると、イーサンがお腹の上に寝転がっていた。
リャン「何してるんだ?」
イーサン「音を聞いてる。お前も寝てみろよ」
リャン「音?」
半信半疑でリャンも寝転がる。
柔らかなお腹に耳を当てると――
コポコポ……
ぐるる……
かすかな音が聞こえてきた。
リャン「これって……」
イーサン「ああ。胃とか腸が動いてる音だ」
リャンは目を丸くした。
リャン「へえ……」
再び耳を当てる。
コポコポ……
小さな水の流れるような音が響く。
イーサン「さっき食べた晩飯を消化してるんだろうな」
リャン「つまり、さっきの晩飯がこの中にあるってことか」
イーサン「そういうことだな」
リャンは感心したように頷いた。
リャン「なんか不思議だな。外から見てると普通に寝てるだけなのに、中じゃずっと働いてるんだな」
イーサン「生き物ってそういうもんだろ」
2人はしばらくそのまま耳を当てていた。
一定の呼吸。
時折聞こえる消化の音。
柔らかな感触。
まるで巨大な機械の上にいるような気分だった。
リャン「しかし、ここ意外と寝心地いいな」
イーサン「おい、寝るなよ」
リャン「少しくらい――」
その瞬間。
ぐぅぅぅ……
腹の奥から大きな音が響いた。
リャン「うわっ!」
イーサン「ははは!びっくりしたな!」
2人は飛び起きる。
だが女性は少し身じろぎしただけで、相変わらず眠ったままだった。
リャン「心臓に悪いぞ……」
イーサン「俺も最初聞いた時は驚いた」
そう言いながら、2人は再び立ち上がる。
まだ見ていない場所はたくさんある。
巨大な女性の体を巡る探索は、まだ続いていくのだった。
今度は近くの丸見えになっているおへそを見つめた。
イーサンが
「なあ、あそこ入れそうじゃないか?」
リャンもおへその方を見る。
リャンが「お前また変なこと考えてるだろ」
イーサンが「探索だよ、探索」
そう言うとリャンはおへその縁まで駆けていった。
近くで見るおへそは小さなくぼみというより、まるで穴のように見える。
「よっと」
彼は中へ飛び降りた。
リャンが
「おい、勝手に行くな!」
慌てて後を追う。
おへその中は意外と深く、周囲の皮膚は柔らかかった。
リャン「おお、秘密基地みたいだ」
イーサン「そんな感想あるか普通……」
その時、リャンが何かを見つけた。
リャン「ん?」
くぼみの奥に小さな粒のようなものがある。
リャンはそれをつまみ上げた。
リャン「これって、もしかして……」
イーサン「へそのごまじゃないか?」
リャン「本当にあるんだな」
イーサン「そりゃあるだろ」
リャンは興味深そうに観察する。
リャン「巨人サイズだとこんなに小さいのに、俺たちからすると石ころみたいだな」
イーサン「確か剥がれ落ちた古い角質(垢)や皮脂、ホコリなどが混ざり合って固まったものだと聞いた事がある。」
リャン「なるほどな」
2人はしばらくおへその中を観察していた。
すると突然――
すぅぅ……
女性が深く息を吸った。
お腹全体が持ち上がる。
リャン「うわっ!」
イーサン「踏ん張れ!」
2人は慌てて縁につかまった。
続いて息を吐くと、お腹がゆっくり下がる。
リャンが「まるでエレベーターだな」
イーサンが「だから生き物の上にいるんだって」
2人は笑いながらおへそから這い上がった。
まだまだ探索できる場所は残っている。
巨大な女性は相変わらず静かな寝息を立てながら眠り続けていた。




