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巨人都市  作者: ハネクリ0831


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知った能力 感動した。

女性は料理を作り終えると、皿に盛り付けた料理を持ってそのまま歩いて行った。

イーサン達の存在には、まったく気づいていない。


静かになったキッチンで、リャンが小さく息を吐く。


「……これからどうしようか?」


イーサンは周囲を見回しながら答えた。


「とりあえず、キッチン周りを見てみようか?」


二人は取っ手へ飛び移り、その勢いでシンクの上へと着地した。


そこには様々な物が並んでいた。

洗剤、スポンジ、巨大な包丁やフライ返し。

見たこともない容器に入った調味料の数々。


リャンは感心したように口を開く。


「そういえば気になったんだけどさ、あの巨人……どうやって料理をしたんだろうな?」


イーサンは辺りを見渡し、不意に黒い板のような物を見つけた。


もちろん、それがIHヒーターだとは知らない。


「あれじゃないかな?」


二人は慎重に近づく。


すると、じんわりとした熱気が伝わってきた。


「……熱い」


リャンが思わず後ずさる。


表面には炎が見えない。

だが確かに熱を放っている。


イーサンは眉をひそめた。


「ここで焼いたり煮たりしたのは間違いないな……」


「火も見えないのに熱いとか、意味わかんねぇよ……」


リャンは呆れ半分、感心半分で呟く。


構造は理解できない。

しかし、これほどの技術を扱う文明が、自分達より遥かに高度なのは明白だった。


「相変わらず、巨人の文明はすごいな」


「確かに」


イーサンが頷いた、その時だった。


ふと反対側へ目を向けた二人の視界に、白い四角い物体が映る。


「……あれ」


机の上に置かれていたのは食パンだった。


二人の目が一気に輝く。


「折角だし、食べてみようぜ」


リャンが笑う。


「だな」


イーサンも頷き、二人は食パンへ向かって駆け出した。


だが、食パンは透明な袋に包まれていた。


二人はその見慣れない素材を興味深そうに触る。


「なんだこれ……水みたいに透けてるのに固いぞ」


リャンが指で押してみる。


袋はぐにゃりとへこみ、すぐ元に戻った。


イーサンは感心したように目を細めた。


「どうやって開けるんだ?」


「刃物で切ればいいんじゃないか?」


そう言うとイーサンは腰のナイフを抜き、慎重に袋へ突き刺した。


ぷすっ、と小さな音。


「おっ、開いた!」


裂け目ができる。


さらに両手で引っ張ると、ビリビリと音を立てながら穴が広がった。


リャンが目を丸くする。


「すげぇ……変な素材だな」


イーサンも裂けた袋を見つめながら呟いた。


「どういう構造してるのか気になるな……」


「それは後にして食おうぜ」


リャンは待ちきれない様子で袋の中へ飛び込んだ。


二人はふかふかの白い塊――食パンをちぎる。


指先が沈み込むほど柔らかい。


「うわ、なんだこれ……雲みたいだ」


リャンは驚きながら一口かじった。


その瞬間。


「――っ!?」


目を見開く。


ほんのり甘い香り。

柔らかく、優しい食感。

噛むたびに広がる小麦の味。


今まで食べてきた硬い保存食とは、まるで別物だった。


「な、なんだこれ……うますぎる……!」


リャンは感動したように叫ぶ。


イーサンも静かに噛み締める。


「……これが、巨人の食べ物か」


その声には驚きが混じっていた。


ただ腹を満たすだけではない。

味を楽しむための食べ物。


二人はしばらく言葉も忘れ、夢中で食パンを食べ続けた。


イーサンはその場に腰を下ろし、大きく息を吐いた。


「ふぅ……食いすぎたな」


腹をさすりながら苦笑する。


「夢中になって食べちまった」


リャンは食パンにもたれかかるように寝転び、幸せそうに目を細めた。


「……幸せだぁ……」


「大げさだな」


「いや、でもさ。こんな柔らかくて甘い食べ物、初めてだぜ?」


リャンはちぎったパンの欠片を見つめながら笑う。


「巨人の世界って、怖いけど……食べ物は最高かもしれない」


イーサンも小さく笑った。


その時だった。


ふと、周囲が暗くなる。


「……ん?」


二人が顔を上げる。


次の瞬間、巨大な影がキッチンへ差し込んだ。


「っ!!」


リャンが息を呑む。


そこにいたのは、先ほどの女性だった。


圧倒的な巨体。

見上げるほど巨大な腕。

その存在だけで空気が震えるようだった。


「戻ってきた……!」


イーサンが小声で叫ぶ。


女性は食べ終えた皿を持ち、シンクへ近づいていく。


おそらく皿を洗うつもりなのだろう。


「隠れるぞ!」


二人は慌てて食パンの袋の陰へ飛び込んだ。


透明な袋越しに、巨人の姿がぼんやりと見える。


女性は蛇口をひねった。


途端に――


ゴォォォォッ!!


轟音のような水音がキッチンに響き渡る。


大量の水が滝のように流れ落ちた。


「うわっ……!」


リャンが耳を押さえる。


イーサンは目を細めながら蛇口を見上げた。


「水道システムか……」


「知ってるのか?」


「ああ。うちらの世界でも都市部じゃ見かける」


流れ落ちる水を見つめながら、イーサンは続ける。


「でも、こんな安定して大量の水を出せるなんて……」


言葉の先は出なかった。


技術格差を改めて思い知らされる。


一方、リャンは別のものに目を奪われていた。


「なぁ、見ろよ」


女性がスポンジに洗剤をつける。


すると、みるみるうちに白い泡が広がった。


「泡立ちすげぇな……」


リャンは感心したように呟く。


皿全体を包むほどの細かな泡。

しかも油汚れが一瞬で落ちていく。


「巨人の洗剤って性能高すぎだろ……」


「お前、そこ気にするのかよ」


イーサンは呆れたように笑う。


だがリャンは真剣な顔だった。


「いや、こういう技術って結構重要だぞ?」


「確かにそうだけどな……」


二人は袋の陰から、巨大な女性の動きをじっと見つめ続けた。


皿がぶつかる音。

流れ続ける水音。

漂ってくる石鹸の香り。


その全てが、自分達の世界とは違う文明の光景だった。

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