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巨人都市  作者: ハネクリ0831


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知った能力 シンクに指差した。

巨人の女性は皿を洗い終えると、水を止めてキッチンを後にした。


重たい足音が遠ざかっていく。


「行ったか……」


イーサンが袋の陰から顔を出す。


しばらくすると、別の部屋の方から――


ジャァァァァ……


という大きな水音が聞こえてきた。


「なんだろう?」


イーサンが耳を澄ませる。


するとリャンが、妙に得意げな顔で笑った。


「シャワー浴びてるんじゃね?」


「シャワー?」


「体洗うやつだよ。巨人の文明なら普通にありそうだし」


リャンは腕を組みながら続ける。


「……そう考えると、俺たちこの世界来てから一回も体洗ってなくね?」


「あ」


イーサンは自分の服を見る。


土埃。

油汚れ。

食べかす。


改めて見ると、かなり汚れていた。


「確かに……結構ひどいな」


リャンはニヤリと笑い、シンクを指差した。


「だからさ、俺たちも洗おうぜ」


イーサンが視線を向ける。


シンクの底には、先ほど皿洗いで残った水が少し溜まっていた。


二人からすれば、十分すぎるほどの量だ。


「あの量なら洗えるな」


「だろ?」


二人はシンクへ飛び降りた。


ぴちゃっ、と水面が揺れる。


「冷たっ!」


リャンが肩を震わせる。


「我慢しろよ」


イーサンは苦笑しながら袖をまくった。


二人は服を脱ぎ、残っていた水で体を洗い始める。


顔についた汚れを落とし、腕や髪を洗う。


皿洗い用のスポンジを見つけたリャンが、目を輝かせた。


「これ使えるんじゃね?」


「やめとけ、変な成分入ってるかもしれないぞ」


「えー」


それでもリャンは端っこを少しだけ使い、服を軽くこすった。


すると驚くほど汚れが落ちる。


「うお、すげぇ!」


「本当に性能高いな……」


イーサンも感心したように呟く。


しばらくして、二人はようやく洗い終えた。


偶然持っていた着替えを取り出し、乾いた服へ着替える。


「はぁ……生き返った」


リャンは満足そうに息を吐いた。


「多少は人間らしくなったな」


イーサンも濡れた髪を払いながら頷く。


二人は再び元の位置へ戻り、周囲を警戒する。


その時だった。


ドアが開く音がした。


「!」


二人は反射的に身を低くする。


部屋から出てきたのは、あの女性だった。


先ほどとは違う服装に着替えている。


そして――


体からは、ほんのりと湯気が立っていた。


濡れた髪をタオルで拭きながら歩いてくる。


リャンが小声で笑う。


「ほら、やっぱりシャワー浴びてきたんだよ」


「みたいだな……」


イーサンは巨人の女性を見上げながら呟く。


近づいてくるたびに、石鹸のような清潔な香りが漂ってきた。


「しかし、巨人って風呂まで文明的なんだな……」


「食い物もうまいし、風呂もあるし……」


リャンは羨ましそうに天井を見上げる。


「なんか、俺たちの世界より普通に暮らしやすそうだよな」


さらにリャンが、小声で問いかけた。


「これからどうする?」


イーサンは視線を周囲へ向ける。


薄暗い部屋。

静まり返った空間。

遠くからは機械の低い駆動音のようなものが聞こえていた。


リャンは続ける。


「このままだと、たぶん巨人寝ると思うんだけどさ」


「……うん」


「このまま外に出るのもアリだけど、探索するって手もある」


イーサンは少し黙り込んだ。


未知の世界。

巨人の文明。

わからないことだらけだ。


だが同時に、ここには自分達が生き残るための手掛かりもあるかもしれない。


やがてイーサンは口を開いた。


「とりあえず、リビングに移動しよう」


リャンはすぐ頷く。


「わかった」


二人はキッチンの取っ手を伝い、慎重に下へ降りていった。


巨大な家具の隙間を進みながら、リビングへ向かう。


すると――


グオォォォ……


低く重たい音が響いた。


空気そのものが震えるような轟音。


「っ!?」


二人は反射的に身構える。


音の方へ視線を向けると、そこには――


巨大なベッド。


そして、その上で女性の巨人が眠っていた。


髪を枕に広げ、規則正しく寝息を立てている。


先ほどの轟音は、いびきだった。


「で、でか……」


リャンが圧倒されたように呟く。


寝ているだけなのに存在感が凄まじい。


呼吸するたびにシーツがわずかに揺れ、吐息が風のように流れてくる。


イーサンはその姿をじっと見上げていた。


そして不意に言った。


「……折角だし、巨人の体について調べてみよう」


「え?」


リャンが目を瞬かせる。


「いいけど……どうしてだ?」


イーサンは真剣な表情だった。


「調べることで、何か弱点があるかもしれない」


「弱点?」


「遅かれ早かれ、俺たちは巨人に見つかる可能性が高い」


その声には現実的な緊張感が混じっていた。


「もし捕まるようなことがあったら、その時に逃げ切れる方法が必要だ」


リャンは黙って聞いている。


イーサンは続けた。


「身体の構造でも、感覚でも、何でもいい。何か見つけられれば生存率は上がるかもしれない」


リャンは感心したように頷いた。


「なるほどな……」


そして口元を少し吊り上げる。


「お前、意外とちゃんと考えてんだな」


「意外とは余計だ」


イーサンが小さく睨む。


リャンは苦笑した。


「悪い悪い」


二人は顔を見合わせ、再び巨大なベッドを見上げた。


眠る巨人。


その姿は無防備にも見えるが、近づくだけで圧迫感がある。


もし起きれば、一瞬で踏み潰されてもおかしくない。


それでも二人は覚悟を決めた。


「行くぞ」


「ああ」


小さな足音を立てながら、二人は眠る巨人へ向かって進み始めた。

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