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巨人都市  作者: ハネクリ0831


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知った能力 思ってた以上に

2020年4月10日オオホリパーク

郊外のとある家


棚の縁に立ったリャンは、下に広がる床を見下ろして大きくため息をついた。

テーブルまでは、小人の彼らにとってはかなりの距離がある。普通に行くなら、一度床へ降り、テーブルの脚をよじ登らなければならなかった。


リャンは顔をしかめる。


「めんどくせーな……また降りて、テーブルの足を登らないといけないのかよ」


その隣でイーサンは腕を組みながら、どこか楽しそうにテーブルを見つめていた。


「もしここから走り幅跳びみたいに飛べたら、一発なんだけどな」


リャンが半分冗談のように言うと、イーサンはあっさり返した。


「じゃあ、やってみたらいいじゃないか?」


「お前、他人事みたいに言いやがって……」


リャンは呆れたように振り返る。


しかしイーサンは肩をすくめただけだった。


「まあ、折角だし試す価値はあると思うよ。駄目なら落ちるだけだ」


「アウラさんはこう言った“死ななきゃ大体成功だ”って」


「それ言い方を変えると死んだら確実に

失敗だけどな……」


ぶつぶつ文句を言いながらも、リャンは棚の上を数歩後ろへ下がった。

そして深く息を吸い込む。


「……仕方ねえな」


次の瞬間、床を蹴った。


小さな身体が勢いよく前へ飛び出す。

しかし――


「うおっ!?」


リャンの予想を遥かに超え、身体は高く宙へ舞い上がった。


風を切る感覚。

一瞬、落ちると思ったが、そのまま軽々とテーブルの端へ到達する。


ドン、と小さな音を立てて着地したリャンは、しばらく呆然としていた。


「……なんか思ってた以上に飛べたんだけど」


驚きで目を丸くしながら、自分の足を見下ろす。


その様子を見たイーサンは、口元を緩めた。


「なら、私もやってみよう」


彼も同じように後退りし、勢いをつけて跳躍する。


リャンよりさらに滑らかな動きだった。

小さな身体はまるで重さを失ったように空中を飛び、危なげなくテーブルへ着地する。


「おお……これは凄いな」


イーサンは感心したように辺りを見回した。


リャンはまだ信じられない様子で言う。


「いや、マジで凄えな。なんでこんな飛べるんだ?」


イーサンは顎に手を当て、少し考える素振りを見せた。


「おそらくだが……この世界の何かしらの力が働いているのだろう」


「便利な力だな。今後も使えそうだ」


二人は知らなかった。


小人となった彼らの身体は、極端に軽くなっている。

だが筋肉の力そのものが完全に失われたわけではない。


その結果――体重に対して筋力が非常に強い状態となり、普通の人間では考えられない高さまで跳ぶことができるのだ。


まるで重力が弱まったかのような感覚。


リャンは試しにその場で軽く跳ねてみる。

すると身体は再びふわりと浮き上がった。


「……なんか俺、今なら空も飛べそうな気がする」


「それは言い過ぎだ」


イーサンが即座に突っ込む。


「でも、移動手段としてはかなり便利かもしれないな。今後は“登る”より“飛ぶ”方が早い場所もありそうだ」


「確かに……」


リャンはテーブルの広い天板を見渡しながら、小さく笑った。


「小人生活、案外悪くないかもしれねえな」


テーブルの上に置かれていた黒い物体へ近づいた。


細長く、表面には無数の突起が並んでいる。


リャンは眉をひそめた。


「……なんだこれ。機械か?」


イーサンはしゃがみ込み、小さなボタンを指でつつく。


「たぶん何かの操作盤だろ。見ろ、スイッチが山ほどある」


彼らの身体からすれば、一つ一つのボタンですら小さな踏み石のような大きさだった。


リャンは腕を組みながら首を傾げる。


「どれが入れるスイッチかな?」


イーサンは気楽そうに肩をすくめた。


「とりあえず片っ端から押してみよう。壊れたらその時考える」


「お前ほんと雑だな……」


呆れながらも、二人は手分けしてボタンを押し始めた。


カチ、カチ、と乾いた音が静かな部屋に響く。


数字らしきものが並んだボタン。


矢印のマーク。


意味不明な記号。


押しても何も起きず、リャンはだんだん不機嫌そうな顔になっていく。


「おい、本当にこれ意味あるのか?」


「まあ待てって――」


その時だった。


イーサンが赤いボタンを押し込む。


次の瞬間。


ブゥン――という低い音と共に、部屋の奥にあった巨大な黒い板が突然光を放った。


「うわっ!?」


「ひっ……!?」


二人は同時に飛び退き、その場に尻もちをつく。


暗かった部屋に一気に光が広がった。


巨大な画面の中では、人間の男が映し出されている。


しかも、まるで本物が閉じ込められているかのように滑らかに動いていた。


イーサンは目を見開いたまま呟く。


「……す、凄いな」


リャンも圧倒されたように画面を見上げる。


「ああ……なんか私たちの世界の映画より綺麗だ」


「確かに。色まで付いてるし、輪郭もはっきりしてる……」


巨大な光景に圧倒されながら、二人はしばらく画面を見つめ続けた。


画面の中の男は真剣な表情で何かを話している。


『現在、政府が発表した緊急事態宣言が出されて三日が経ちました。現在も状況は緊迫しております。皆さん、不要不急の外出は控えてください――』


だが、その言葉の意味は二人には理解できなかった。


リャンは眉間に皺を寄せる。


「……相変わらず分からないな」


イーサンも苦笑しながら頷いた。


「だな。やっぱりこっちの世界の言葉は勉強必須だ」


そう言って、彼は改めて巨大な画面を見上げた。

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