全ての始まり 大きさにびっくり
???
二人は岸沿いに沿って慎重に歩を進めた。
湿った土は相変わらず柔らかく、踏み込むたびにわずかに沈む。巨大な植物は背後に残り、視界は徐々に開けていく。だがその分だけ、別の異質さが前面に現れ始めていた。
しばらく進んだ先で、リャンが足を止める。
「……おい」
その声は低く、いつもより硬い。
イーサンも視線を上げた瞬間、言葉を失った。
そこにあったのは──橋だった。
だが、ただの橋ではない。
明らかに人工的に造られた構造物。それは間違いなく“誰かの手”によるものだった。問題はその規模だった。
橋の柵は、見上げるほどの高さに達している。人間の尺度では到底説明できない巨大さ。まるで巨人が通行するために設計されたかのような比率だった。
橋脚は森の木々を軽々と超え、構造体そのものが空間に突き刺さっているように見える。
イーサンは無意識に一歩後ずさった。
「……なんだ、これ」
声がかすれる。
リャンもまた、しばらく言葉を失っていたが、やがてゆっくりと呟く。
「なあ……ここはもう、私たちの世界じゃないことは確定してるな」
その言葉は、冗談ではなく事実の確認だった。
イーサンは橋を見上げたまま、短く答える。
「ああ……確かにな」
風が吹き抜ける。
その音さえも、どこか遠くから響いてくるように感じられた。
二人の間に沈黙が落ちる。
巨大な橋だけが、何事もなかったかのようにそこに存在し続けていた。
しばらくの沈黙のあと、リャンがゆっくりと息を吐いた。
「……行くか?」
その声には迷いもあったが、止まるという選択肢は最初からなかった。
イーサンは橋の上を見上げる。巨大な柵が空へと伸び、その奥は霧のような光に溶けている。先が見えない。だが同時に、ここで立ち止まる方が危険な気がした。
「……ああ。渡るしかない」
短くそう答え、イーサンは散弾銃のスリングを締め直した。
一歩。
橋へ足を踏み入れる。
リャンも後に続く。
「でかいな……近くで見ると余計に意味が分からん」
イーサンは柵に目をやる。一定間隔で並んでいる。
するとリャンは小さく笑った。
「とりあえずさ、戻るって選択肢は今さらないよな」
イーサンも短く息を吐く。
「最初からない」
二人は再び歩き出した。
橋を渡り切った瞬間、空気がまた変わった。
そこには、確かに“人工的な空間”が広がっていた。
整然と並ぶベンチ。整えられた花壇。街路のように区切られた空間。どれも明らかに誰かが設計し、配置したものだった。
だが──すべてが規格外だった。
ベンチは建物のように大きく、座面は二人の身長を軽く超える。花壇の縁は壁のように立ち上がり、そこに植えられた植物もまた異様なサイズだった。
イーサンは思わず周囲を見回す。
「……全部、デカすぎるだろ」
リャンも同じく呆れたように呟いた。
「ここ、基準が全部おかしいな……」
さらに進むと、地面の色が変わった。
黄色い道だった。
しかしそれは単なる舗装ではない。表面はなめらかで、どこか人工的な質感を持ちながらも、近づくと微妙に柔らかい。
イーサンがしゃがみ込み、指先で触れる。
「……ゴムみたいな匂いがするな」
リャンは顔をしかめた。
「なんで街の道にそんなもん敷くんだよ」
「さあな……俺にも分からん」
イーサンは立ち上がり、周囲を警戒しながら視線を上げた。
黄色い道は、まっすぐ奥へと続いている。その先には、さらに巨大な構造物の影がうっすらと見え始めていた。
違和感。
説明できない“設計意図”のようなものが、この場所全体に流れている。
リャンが小さく肩をすくめる。
「まあいいや。行けば分かるだろ」
イーサンはすぐには返事をしなかった。
ただ、視線を前に固定したまま短く答える。
「……ああ。行くしかないな」
二人は黄色い道へと足を踏み入れた。
柔らかい感触が靴の裏に沈み込み、まるでこの世界そのものに踏み込んでいくような感覚がした。
二人は、巨大な構造物の影に沿ってさらに進んだ。
やがて目の前に現れたのは、異様に大きな看板だった。
それは長方形のような形をしていたが、スケールが狂っている。人間の家ほどの高さがあり、表面にはびっしりと文字と図が刻まれていた。
イーサンは少し距離を取り、目を細めて全体を見渡す。
「……地図、っぽいな」
リャンも横から覗き込むが、すぐに肩をすくめた。
「いや無理だろこれ。何語だ?」
イーサンは唇を結ぶ。
彼は一応、ある人物から基礎的な文字体系は教わっていた。母国語の読み書きはできる。
だがこれは違った。
見たことのない記号の連なり。意味の切れ目すら掴めない。
「読めない……完全に別の言語だ」
リャンはため息をつく。
二人はしばらく沈黙したまま看板を見上げた。
ただ一つだけ、異様にはっきりと読める部分があった。
イーサンの視線がそこに吸い寄せられる。
「……ここだけは分かるな」
リャンが身を乗り出す。
そこには、を持って浮かび上がる文字列。
OHORI PARK
イーサンはその単語をもう一度ゆっくりと読み返した。何故なら母国語だからだ
「オオホリ……パーク?」
リャンが首をかしげる。
「パークって事は公園?」
イーサンはすぐには答えられなかった。
いまだに何処か詳しくは分からないが
分かったことはここは公園である事がわかった。




