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波間に消えていく祈り
ゆらゆらと水中のような闇の中を漂う中、二つの泣き声を聞いた。
「―――――、―――」
「―――!!」
泣き声に紛れて、誰かの声が聞こえてくる。
知ってるはずの声。
でも、全く知らないような気もする声。
闇の中に見えては消える白い何かと、とある映像の欠片。
それらは脳裏にひらめいて、不思議なほど綺麗に意識から零れ落ちていく。
「いいんだよ。君は見なくて。」
全てがおぼろげな世界で、唯一はっきりとした声が響いた。
それなのに、この声もまた、するすると忘却の彼方へと流れていってしまう。
「いいんだ。これは……君の記憶じゃない。君が抱える必要のないもの。だからどうか……これ以上は直視しないで。」
祈るような声。
この声を忘れてはいけない気がした。
この声を―――この言葉の意味を理解することで、きっと自分の中の何かが変わる。
そう思うのに……
ゆらり、ゆらりと。
波間に漂うような心地よい微睡みの中、なす術もなく、声は虚空へと消えていく―――
<第6章 古からの暗示>END 次章へ続く…




