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生きていることへの代償
<第5章 夜の獣と統一の儀>
―――怖い。
周りのモノ全て。
目の前に広がる景色も、無関心で近くを通り過ぎる人々も、一つ残らず全てが怖い。
そう。
自分自身ですら、恐怖の対象でしかない。
いつ誰が襲ってくるのか。
笑いかけてくれていた人々が、いつ自分に殺意を向けてくるのか。
自分がいつ、その人たちを傷つけてしまうのか。
恐怖は無尽蔵にあふれてきて、脳内を瞬く間に埋め尽くしていく。
―――信じないこと。
それが、この恐怖に耐える唯一の方法だった。
信じなければ、いつ誰が刃を向けてきても絶望に身を折ることもない。
そうやって生きていくしかない。
それが、生きていることへの代償なのだから―――……




