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吾輩は神である。そして今、猛烈にキレている。  作者: じょん-ドゥ


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第65話:神、獣人の「供物」を一蹴する

 再生した大森林から次々と運び込まれる極上の獲物。

 獣人の都の広場には、香ばしい肉の焼ける匂いと、

 数千もの民が放つ歓喜の咆哮が地を揺らしている。

 泥水を啜っていた日々は過去のものとなり、

 今や卓上には溢れんばかりの果実酒と黄金の肉が

 山と積まれている。これが真の祝宴というものだ。

 その喧騒の中心で、獣王レオガルドは吾輩の前に

 深々と跪き、何度も石床に額を打ち付けていた。

 一国の主としての誇りさえも、神の奇跡の前には

 塵芥に等しいと言わぬばかりの、峻烈な感謝だ。


「アスタロ様。この御恩、言葉では到底尽くせぬ。

 死に絶えた大地をこれほど瑞々しく蘇らせ、

 都の建物まで新品のように復元してくださるとは。

 我ら獣人族、たとえ魂が潰えようともこの奇跡を

 末代まで語り継ぎ、聖典に刻むことを誓います!」


「うむ。よせと言っている。吾輩はただ、

 乱れた管理データを正常に戻したに過ぎん。

 王よ、顔を上げろ。そんなことより、

 吾輩の仲間の食いっぷりを見てみろ。

 管理者の吾輩が呆れるほどの暴食ぶりだぞ」


 吾輩が指差す先では、セレスとヴィータが、

 自分の頭ほどもある骨付き肉を両手に抱え、

 無心に貪り食っていた。セレスは地酒の樽を抱え、

 至福の表情を浮かべて顔を真っ赤にしながら、

 豪快に酒を煽っては、ぷはぁと息を吐いている。


「んんん! アスタロ、このお肉最高だよ!

 やっぱり不運の後のご飯は格別の味だね!

 お酒も止まらないよ! おじさん、おかわり!」


 王は満足げなセレスを見て、再び真剣な眼差しで

 吾輩に向き直ると、震える声で問いかけた。


「神よ。これほどの救済に対し、我らがいかなる礼を

 尽くすべきでしょうか。人身御供が必要であれば、

 まず私を筆頭に、何十人でも何百人でも、

 生贄として捧げましょう! 我らが生命、

 すべて貴方様が使い潰すための供物であります!」


「いらん! そんなもの、断じて不要だ!

 言わせてもらうが、吾輩は貴様らの命を食らって

 喜ぶほど悪趣味な神ではない。勝手な自己犠牲で、

 管理ログを汚すな! ただこの肉を食って笑え!」


 吾輩の烈火のごとき一喝に、王は恐縮して平伏した。

 まったく、極端な信仰は時にデバッグの邪魔になる。

 祝宴の終わり際、吾輩はいつの間にか人間に戻った

 ヴィータを捕まえ、次の座標を確認することにした。


「おい、ヴィータ。次はどこだ。ついでに聞くが、

 次の四天王は一体どんな変態なのだ?

 白状しろ直ちにだ。吾輩はもう驚きたくないのだ」


「ひどいなアスタロ。否定させてもらうけど、

 次は変態なんかじゃないよ。ボクが前の世界で

 最も信頼していた、気高き勇猛な女傑なんだから。

 今度こそ期待してよ。本当に格好いいんだから!」



 吾輩は神である。

 今日からはこの世界のルールであり、

 重すぎる供物を一蹴しつつ、生命神の信頼という

 言葉が、不吉なバグフラグにしか聞こえないことに

 頭を抱える、孤独な創造主である。

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