第64話:神、獣人の都に「修復」を施す
生態系の再生を見届けた吾輩たちは、帰還した獣王
レオガルドと共に、再び獣人の都へと足を踏み入れた。
森は瑞々しい緑を取り戻したが、一方で都の建物は、
四十二年という歳月の直撃を受け、見るも無残な
廃墟と化していた。
石造りの城壁には深い亀裂が走り、国民の家々の
屋根は腐り落ち、至る所に蔦が絡みついている。
時間の加速前からの老朽化を含めれば、実質的には
半世紀以上の歳月が、一瞬にして建物を襲ったのだ。
レオガルドは、変わり果てた城を見上げ、絶句した。
「ああ。森は救われたが、我らの家が。
王城さえも、これでは住むことすら叶わぬ。
いや、贅沢は言うまい。命があるだけで、
神には感謝せねばならぬ。だが、これでは」
王の肩が落胆に震える。避難から戻った国民たちも、
我が家の崩壊を前に、立ち尽くして言葉を失っていた。
その様子を横目で見ていた吾輩は、鼻で笑い、
黄金の光を掌に集めた。
「フン。湿気っぽい面をするな、王よ。
ここまで来たら吾輩のサービスだ。
不完全なデバッグのまま放置するなど、管理者の
名が廃るというもの。ルナリエ、座標固定。
都全域の無機物に対し、状態復元パッチを当てるぞ」
「了解しました。アスタロ様。生命以外の
静止オブジェクトに対する時間逆行。
整合性のチェック、完了。いつでもどうぞ」
吾輩が指を高く掲げ、一気に振り下ろした。
黄金の波動が波紋のように都全体へと広がっていく。
すると、崩れ落ちていた石材が生き物のように躍り、
元の場所へと吸い込まれ、腐っていた木材は
切り立ての艶を取り戻して、組み上がっていった。
「神よ! おお、偉大なるアスタロ様よ!
大地の再生のみならず、我らの住処まで!
この御恩、末代まで語り継ぎましょうぞ!」
わずか数秒で都はかつての美しさを取り戻した。
王と民は、目の前で起きた都合の良い奇跡に、
今度こそ腰を抜かして平伏した。
「よせ、大袈裟な。吾輩はただ、
汚いデータを整理しただけだ。
さて、環境は整った。あとは貴様らが、
自分たちの足でこの物語を動かすだけだぞ」
吾輩は神である。
今日からはこの世界のルールであり、
大国の都を指先一つでリフォームしてみせ、
神のサービスという圧倒的な力を誇示しつつ、
次のデバッグ地点へと意識を向ける、創造主である。




