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吾輩は神である。そして今、猛烈にキレている。  作者: じょん-ドゥ


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第59話:神、幼き獣人の「生存」に心打たれる

 泥水と不毛な食事に喉を詰まらせ、吾輩たちは逃げるように

 食堂を後にした。表へ出ると、そこには不自然なほどに

 元気に走り回る獣人の子供たちの姿があった。

 だが、その光景を目にした瞬間、吾輩の心臓が

 不快な音を立てて激しく波打った。


「カイル、あれを見ろ。あの子たちの体を」


 カイルは、駆け寄ってきた幼い獣人の手を取り、

 その細さに絶句した。ふわふわの毛並みの下には、

 骨の形が浮き出るほど痩せこけた体があった。

 遊んでいるのではない。彼らは空腹の苦痛を

 紛らわせるために、必死に動いているだけなのだ。


「アスタロ様。酷すぎます。こんなに痩せ細って。

 食べるものも満足にない中で、あんなに笑顔で。

 僕には、もう正視できません」


 勇者カイルの瞳に、怒りと悲しみの色が混ざる。

 生命の輝きを守るはずのヴィータも、愛らしい

 子供たちの悲惨な現状を突きつけられ、

 鼻水を垂らして吾輩の袖にしがみついてきた。


「アスタロ! 早く、早く何とかしてよ!

 あんなに可愛い子たちが、あんなにガリガリなんて

 耐えられないよ! ボクの権能を全部使ってもいいから、

 今すぐここを豊かな森に戻してあげてよ!」


「どの口がそれを言うのだ、この馬鹿神が。

 そもそも、元々はお前が原因だろうが!

 お前がガウルに余計な祝福をかけたせいで、

 この大地の循環が止まったのだ。

 その不始末を、今さら吾輩に泣きつくな!」


 吾輩はヴィータを突き放したが、その目頭には

 知熱とは違う、熱い何かが込み上げていた。

 管理者の眼に映るのは、ただの数値ではない。

 過酷な仕様の中で、懸命に生存フラグを

 守り抜こうとする、健気な生命の記録だ。


「ルナリエ。正攻法は通用せん。吾輩が直接、

 この大地のログを書き換える。数十年もの

 長い苦しみを、今ここで一気に終わらせてやる」


「アスタロ様、それは管理権限の限界を超えた

 直接干渉です。本来、世界の理にこれほど深く

 立ち入ることは、管理者であっても許されません。

 貴様の存在データに、大きな負荷がかかります」


 ルナリエがバインダーを構えて忠告する。

 吾輩は彼女の目を真っ直ぐに見据え、言葉を重ねた。


「分かっている。だがルナリエ、目の前のこの子供を

 見捨てて何が神か。理論や効率を優先して

 生命を見殺しにするなら、そんな管理者の座など

 吾輩には不要だ。責任はすべて吾輩が持つ」


 吾輩の気迫に、ルナリエは静かに一礼して

 バインダーを閉じた。


「……承知いたしました。それがアスタロ様の

 御意思であれば、私は全力でお支えするのみです。

 生じるログの不整合は、私がすべて後処理します。

 この不毛の理を、その御手で書き換えてください」


「うむ。だがその前に、まずはこの国を治める

 獣人の王の元へ行く。現状を把握させた上で、

 一気にデバッグを完了させてくれるわ!」



 吾輩は神である。

 そして、今日からはこの世界のルールであり、

 幼き命の叫びに、柄にもなく目頭を熱くしつつ、

 大地の救済と王への謁見に向け、

 その重い一歩を踏み出す、情に厚き創造主である。

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