第58話:神、残留した「祝福」に手を焼く
目の前に並んだ泥水と干からびた肉を眺めながら、
吾輩は全知の権能をフル稼働させて解決策を探った。
だが、大地のログを読み取るほどに、
事態の深刻さが浮き彫りになっていく。
「ルナリエ。やはりこの土地の残留魔力も、
例の生命神の祝福によって保護されているな。
吾輩の浄化パッチが一切通らん。
汚染範囲のログを至急出せ」
「了解しました。アスタロ様。原因はあの温泉街の
在庫と同じです。ガウルが放出した魔力自体に、
ヴィータ様の祝福が強固に付着しています。
それが大地に染み込み、神の干渉を拒絶する
不毛な結界となって居座り続けているのです」
ルナリエが示したバインダーには、広大な森林の
土壌が真っ黒に汚染された解析図が映っていた。
あやつの不屈の魔力は、大地に染み込んでもなお、
何者にも屈しない死なない呪いとして、
再構築をすべて弾き返しているのだ。
「分かっていたことだが、実に厄介だな。
吾輩がいくら環境データを正常化しようとしても、
その残留魔力が仕様外のガードを固めている。
おい、ヴィータ。貴様の祝福は、本体から
離れた魔力にまで有効だというのか」
「ボクだってこんなの初めて見るよ。
祝福は本人を守るためのものだけど、
ガウルが溜め込みすぎた魔力が、変質して
地面に根付いちゃったんだ。ボクの権能でも、
一度離れた力はもう制御できないよ」
「アスタロ様。論理的に言えば、この残留魔力を
一掃する手段は、現状の管理権限にはありません。
自然にこの毒が抜けるのを待つには、
少なくとも数十年の歳月が必要と算出されました」
ルナリエの無慈悲な宣告に、セレスは
「そんなの待てないよ。お腹空いて死んじゃう」と
机を叩いて泣き叫んだ。確かに、これから
数十年もの長い月日を、この泥水を啜らせて
過ごさせるわけにはいかぬ。
吾輩は神である。
今日からはこの世界のルールであり、
神の干渉すら跳ね返す祝福付きの不毛を前に、
管理者権限が通用しない事実に、
最大の苛立ちと焦燥を感じる創造主である。




