第54話:神、四天王の「放置」に悶絶する
地獄のような変態ショーがようやく一段落した。
鞭を振るい疲れ、肩で息をする獣人たちが立ち去った後も、
四天王の男は縄に縛られたまま床に転がっている。
吾輩たちは意を決し、その異形へと歩み寄った。
「よぉ、お久しぶり。元気にしてたかな。
アスタロ、紹介するよ。彼こそがボクが別の世界で
職を失い彷徨っていたところを、四天王という
高待遇のポストへ押し込んだ、不滅のガウルだ」
「ほう、不滅のガウルか。名は体を表すというが、
その体たらくは何だ。なぜいつまでもそんな不浄な
縄に縛られたまま、無様に床を転がっている。
とっとと解け、見ていて非常に不愉快だ」
吾輩の言葉に、ガウルは床に頬を押し付けたまま、
充血した目でこちらを見上げ、犬のように激しく
荒い息を吐き出しながら、低く笑った。
「フッ。分かっていないな、新顔の客人よ。
今は、この孤独。誰からも顧みられず、
ただ縛られて、埃まみれの床に放置される屈辱。
これこそが、至高の放置プレイ。ああ、最高だ」
ガウルが恍惚の表情で身悶えするたび、縄が食い込み、
その刺激にまた彼は悶える。吾輩は、その答えを
聞いた瞬間に天を仰いだ。聞かなければ良かった。
全知の領域に、汚らわしい単語を記録してしまった。
「アスタロ様。再三申し上げますが、
これほどの重度なバグ、もはや対話は無意味です。
カイル様、見てはいけません。精神が汚染されます。
バインダーの記録も、今回は伏せ字で処理します」
ルナリエが氷のような眼差しで報告を打ち切る。
カイルは既に魂が抜けた顔で、ミスリル剣を杖にして
ガクガクと膝を震わせていた。
話が進まないことに業を煮やし、ヴィータが叫ぶ。
「ガウル、そんな格好で何をしてるんだよ。
四天王としての仕事はどうしたのさ。
獣人の国を治めて、魔王軍の拠点を広げるのが
ボクが紹介した仕事の条件だったじゃないか」
「仕事。ああ、あれか。今はそれどころではない。
この街の獣人たちに、いかにして俺を
より深く絶望させ、辱めてもらうか。
その教育マニュアル作りに全リソースを注いでいる。
今や彼らは、俺をゴミのように見る術を習得したぞ」
ガウルは自慢げに、獣人たちが記した罵倒の台本を
顎で指し示した。かつての猛き獣人たちは、
今や四天王に冷ややかな視線を浴びせるためだけの、
攻め役という名のサービス業へと成り果てていた。
吾輩は神である。
そして、今日からはこの世界のルールであり、
忍耐と性癖を履き違えたヴィータの斡旋に、
自らのデバッグ対象が「ただの変態」であるという
虚しさに打ち震える、不憫な創造主である。




