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吾輩は神である。そして今、猛烈にキレている。  作者: じょん-ドゥ


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第52話:神、ケモ耳の「聖域」に突入する

 北へと向かう空飛ぶ絨毯の旅は、神の時短パッチを

 以てしても、丸三日という時間を要した。

 広大な未開の大森林を眼下に見下ろし続け、吾輩は

 ようやく見えてきた獣人の国の国境を前に、

 ふう、と一つ溜息を吐き出した。


「絨毯で空を飛んでも、結構かかったな。

 リソースの消費も馬鹿にならん。

 やはり世界という名のデータマップは、

 吾輩が思う以上に、広大に設定されているようだ」


「アスタロ様。何を仰るのですか。徒歩や馬車なら

 半年はかかる行程を、わずか七十二時間で

 踏破したのですよ。十分すぎる短縮です。

 これ以上の加速は、物理演算が追いつきません」


 ルナリエがバインダーを叩き、事務的に釘を刺す。

 カイルは三日間の空中生活で少し顔色を悪くし、

 セレスはお肉の匂いがすると鼻をひくつかせ、

 絨毯の端から身を乗り出していた。

 絨毯は認識阻害パッチにより、地上からは見えない。

 吾輩たちは隠密状態のまま、鬱蒼とした森の中に

 広がる獣人の街へと静かに降下を始めた。

 眼下では、ふわふわの耳を動かして遊ぶ子供たちが

 平和そうに駆け回っている。それを見たヴィータが、

 突如として悶絶し始めた。


「ぎゃぁぁぁっ! 可愛い! 何これ!

 見てよアスタロ、あの耳! あの尻尾!

 生命神としての本能が、抱きしめろって

 叫んでるよ! ここは天国か! 楽園なのかぁ!」


 ヴィータは透明化した絨毯の上を転げ回り、鼻血を

 出しそうな勢いで、地上の獣人の子供たちを

 虚空から見つめて身悶えている。

 吾輩は、その襟首を無造作に掴み上げ、床に叩きつけた。


「興奮していないで、四天王の場所を

 とっとと案内しろ、この駄目神が!

 貴様が愛でるその可愛さの裏側で、

 一体どんな不具合が起きているか、

 その全知の残骸で想像してみろ!」


「アスタロ様の仰る通りです。ヴィータ様。

 上空から見る限り、獣人たちの毛並みの良さ、

 そして異様なまでの野性の欠如。

 ここにもまた、不自然な平和の臭いがします」


 ルナリエが眼鏡を光らせ、地上をスキャンする。

 カイルも剣の柄を握り直し、獣人の街の奥にそびえる

 巨大なコロシアムのような建物を見据えた。

 吾輩は神である。

 今日からはこの世界のルールであり、

 ケモ耳の誘惑に負けた元神の尻を叩きつつ、

 ステルス状態の絨毯で敵地に潜入し、歪な平和を暴く、

 最高に仕事の早い創造主である。

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