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吾輩は神である。そして今、猛烈にキレている。  作者: じょん-ドゥ


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第4話:神、勇者をデバッガーに任命する

「アスタロ様、そちらのほこり

 完全に除去できましたか?」


「ふぅ……。終わったぞ、ルナリエ。

 全知全能の吾輩が、まさか布切れ一枚で

 物理的な汚れと格闘する羽目になるとは。

 世界創造より肩が凝るぞ……」


 二階の床を這いずり回り、

 ようやく人心地ついたその時だった。


「おーい、旅の人たち!

 布団が用意できたから、取りにおいで!」


 一階から村長の元気な声が響く。

 吾輩はよろよろと立ち上がり、

 重い腰を上げて階段を下りた。


「……さて。布団を敷く前に

 今後の作戦会議だ、ルナリエ。

 吾輩はこの世界のバグ、つまり

 魔王の異常発生を止めに来たわけだが」


「そうですね。まずはどこから

 手をつけるおつもりで?」


「うむ。やはり魔王の城に直接乗り込み、

『お前ら、湧きすぎなんだよ!』と

 物理(神力)で説教するのが一番か?」


「ダメです。それでは原因の究明になりません。

 システムログを確認せずに関数を消すような、

 力技の修正パッチは二時災害を生みます」


 ルナリエは、顎に手を当てて

 冷徹な提案を口にした。


「まずは、先ほど無理やり信託を送った

 新米勇者の元へ向かいましょう。

 彼と一緒に魔王討伐の旅をしながら、

 現地で何が起きているか観察するのです」


「……えっ。吾輩が、あのレベル1の

 震えてる若者の付き添いをするのか?」


「左様です。勇者はこの世界の

 不具合を見つけるためのデバッガー、

 つまり、実験用マウスのようなものです。

 彼が何に苦しみ、どこで詰まるのか。

 それを特等席で見守るのが一番確実かと」


「実験用マウスって……。

 お前、たまに吾輩より神様っぽい

 非情なこと言うよな」


 まあ、一理ある。

 現場を知るには、現場の人間と

 歩むのが一番だろう。


 翌朝。


 鳥の囀りで目を覚ますと、

 一階から信じられないような叫び声が聞こえた。


「ば、婆さん!? お前、立っているのか!?」


「ええ、お爺さん! なんだか今朝は、

 足が羽が生えたように軽いのよ!」


 慌てて下りていくと、そこには

 手すりも使わずに自力で立っている

 お婆さんの姿があった。

 村長は腰を抜かさんばかりに驚いている。


「ああ、旅の人! 見てくれ、奇跡だ!

 ……いや、あんたがくれたあの薬か!?

 あれを一口飲ませた途端、これだ!」


「ふっふっふ、言ったろう?

 凄腕の薬師の秘伝だからな。

 まあ、吾輩の……いや、薬のおかげだ」


「ありがとう、本当にありがとう!

 あんたたちは命の恩人だ!」


 村長は涙を流して感謝してくれた。

 横でルナリエが「薬の濃度が

 高すぎたんじゃないですか?」と

 小声で釘を刺してきたが、

 吾輩は満足げに胸を張った。


「さて、ルナリエ。礼も言われたことだし、

 そろそろ例のマウス……勇者に

 会いに行くとしようじゃないか!」


「アスタロ様。勇者の名前は

『カイル』というそうです。

 西の果ての、さらに辺境の村で

 今まさに泣きべそをかいていますよ」


「よし、アスタロ一行、出発だ!」


 吾輩は神である。

 そして、今日からはこの世界のルールであり――

 新米勇者の家庭教師(見守り役)である。

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