第47話:神、温泉街の「黒幕(ソース)」を特定する
酩酊する男の映像を消し、吾輩は路地裏に転がった商人の
襟首を掴み上げた。今日、ギルガンドに付与を施した以上、
今後あやつから新たな出汁が出ることはない。だが、問題は
これまでに蓄積された在庫だ。
「ルナリエ。あの四天王の巨体だ。これまで湯船に漏れ出した
魔力量を考えれば、街に流通しているこの液体の在庫は、
まだ大量にあるはずだな」
「左様です。アスタロ様。供給源は断ちましたが、市場に
出回ったバグを回収せねば、この不衛生な依存症は
治まりません。さらに厄介なことに、この液体には
生命神の祝福が溶け込んでいます」
ルナリエが忌々しげに小瓶を振り、解析不能なログを
バインダーに表示させた。
「つまり、神の権能による一括消去を弾いてしまうのです。
一つずつ手作業で回収するしか、消滅させる手段は
ありません。まずはこの不届きな商人を問い詰め、
背後関係を洗うべきかと」
ルナリエが商人を蹴り飛ばした瞬間、吾輩は全知全能の権能を
商人の脳内ログへと接続した。……。その意識の奥底、
金の流れを遡った終着点に、一つの肥大化した強欲な
存在の影が浮かび上がる。
「待て。今、ログが繋がったぞ。この商人の帳簿データ、
そして上納金の行き先。そのすべての終着点が、
一つの館を示している。黒幕は、この街の領主だ!」
領主自らがこの残り湯を霊薬として売り捌き、自らの懐を
肥やしていたのだ。住民を汚物依存症に変えて私腹を肥やす。
四天王を放置していたのは、平和のためなどではなく、
単に金を生む製造工場として利用するためだったのだ。
「アスタロ様。合点がいきましたね。領主自らが、
麻薬の製造工場を必死に隠匿していたというわけですか。
実に救いようのない、質の悪い不具合です」
「よし。明日の朝、この商人を引き連れて領主の館へ
乗り込むぞ。文字通り、この男を『証人』として突きつけ、
全知の断罪を下してやる!」
吾輩は、商人を物証としてずるずると引きずりながら、
宿へと引き返した。カイルやセレスはまだ夢の中だろうが、
明日の朝には、温泉街の闇をすべて暴いてやる。
吾輩は神である。
そして、今日からはこの世界のルールであり――
一括消去できぬバグの回収を前に、商人を証人に変える
皮肉な手順を組み立て、見ぬ領主の罪を暴く創造主である。




