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吾輩は神である。そして今、猛烈にキレている。  作者: じょん-ドゥ


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第40話:神、空から「極楽(バグ)」へと舞い降りる

 神の権能で再定義された絨毯は、大陸の山々を

 瞬く間に飛び越え、北の空を滑るように進んでいく。

 一ヶ月の行程を数時間に凝縮した移動効率に、

 吾輩は満足げに腕を組んで、地上の景色を眺めた。


「カイル、見ろ。あの雪を冠した連峰の先に、

 白く濁った煙が立ち込めているのが見えるか。

 あそこが、今回の目的地であるアルカナ領だ」


「……。煙っていうか、雲みたいですよ、あれ。

 ……。アスタロ様。なんだか、空気が

 しっとりとしていて、妙な匂いがしてきませんか」


 カイルの言う通りだ。高度を下げるにつれ、

 鼻を突くような独特の硫黄の香りが、

 風に乗って絨毯の上まで漂ってくる。

 セレスが「うげっ、何これ!? 腐った卵みたいな

 変な匂いがするよ!」と鼻をつまんで顔をしかめた。


「あはは、セレス。これはね、大地のエネルギーが

 お湯と一緒に噴き出してる証拠なんだよ。

 ここには最高に気持ちいい『温泉』が湧いてるんだ。

 ……。俺も昔、ここへ来た時は感動したなぁ」


 ヴィータが懐かしそうに、目を細めて頷く。

 吾輩は、その言葉を鼻で笑い飛ばした。


「黙れヴィータ。観光に来たわけではない。

 ……。ルナリエ、着陸ポイントを算出しろ。

 最も効率的に、街の中心へ乗り込める場所だ」


「了解いたしました。……。ですがアスタロ様。

 一ヶ月の道のりをこのように端折った件については、

 着地後にじっくりとお話をさせていただきます。

 ……。よろしいですね?」


 ルナリエの冷徹な宣告に、吾輩は背筋を凍らせた。

 だが、その恐怖を振り払うように、

 吾輩は絨毯の高度を、一気に街のど真ん中へと

 急降下させた。

 視界を遮るほどに噴き出す白い湯気。

 その隙間に見えてきたのは、木造の美しい建築物と、

 平和そのものといった様子で歩く住人たちの姿。

 そして、街の広場にある巨大な石造りの浴槽で、

 明らかに人間ではない巨体が、

 真っ赤な顔をして湯船に浸かっている光景だった。


「……。えぇっ!? ……。アスタロ様、

 何ですかあの大きな魔族! 街のど真ん中で、

 頭に手ぬぐいなんて乗せて……。

 あんなに気持ち良さそうに寝てていいんですか!?」


 カイルの困惑の絶叫と共に、吾輩たちの絨毯は、

 大量の飛沫を上げて、その巨大な浴槽の

 すぐ傍らへと着陸した。

 吾輩は神である。

 そして、今日からはこの世界のルールであり――

 一ヶ月の旅路を数時間で踏み潰し、

 温泉でふやけきった「バグの正体」の鼻先に、

 いきなり実体化する、最高に容赦ない創造主である。


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