第31話:神、あまりの「バグ」に姿を晒す
セレスが指差した先。宴の中心で、黄金のジョッキを
豪快に煽り、魔族と人間に囲まれて笑っている男。
その顔に刻まれた、見紛うことなき神格の紋様。
認めた瞬間、吾輩の脳内で何かが激しく弾けた。
「……お前。……お前、そんなところで
何をしているのだぁぁぁぁぁ!!」
吾輩は、隠密の維持すら忘れ、
反射的に指を鳴らして背景化を強制解除した。
ピカピカのフル装備を纏った一行が、白昼堂々、
宴席のど真ん中に、光り輝きながら実体化する。
「う、うわぁぁ!? アスタロ様、
何してるんですか! 見つかっちゃいますよ!」
カイルの悲鳴を無視し、吾輩は最高級の靴で
芝生を蹴立て、豪華な円卓へと詰め寄った。
そこに座っていたのは、禍々しい角を生やしながらも、
どこか超然とした、だが場違いに寛ぐ男だった。
「げぇっ!? ア、アスタロ!?
おま、なんでこんな辺境の砦に……!」
「それはこちらのセリフだ、このバカ神が!
四天王の一人と聞いて来てみれば、よりによって貴様か!
管理領域を離れて、こんなところで何をしておる!」
吾輩が胸ぐらを掴んで揺さぶると、魔族も人間も、
そしてカイルも、全員が箸を止めて、ポカンと口を
開けて固まった。カイルはアスタロの「神」という言葉を
例によって聞き流しつつ、四天王との知人関係に顔を引きつらせている。
「……。アスタロ様。説明を。
……。この不見識な魔族が、四天王なのですか?」
ルナリエが氷点下の眼差しでバインダーを構える。
吾輩は忌々しげに、酒に酔った四天王を指差した。
「……ルナリエ。こいつも、あのセレスと
同じだ。吾輩のいた世界で、自分の役目を
持っていたはずの、他の世界の『神』なのだ!」
目の前の四天王は、吾輩の剣幕に引きつった笑いを浮かべ、
ジョッキを持つ手を震わせながらどもり始めた。
「い、いやぁ、アスタロ。聞いてくれよ。
こ、これには、その、ちょっとした事情があって……。
わ、わざとじゃないんだ。ただ、気づいたら、ここに……」
「言い訳はいい! それ以前に、この世界は
神が直接干渉してはいけないはずだぞ!
貴様、その禁忌を忘れたわけではあるまいな!」
吾輩は神である。
そして、今日からはこの世界のルールであり――
神の不干渉ルールを平然と無視する身内に、
怒りで視界を真っ赤に染める創造主である。




