第27話:神、ニートの「悪知恵」で砦へ肉薄する
試し斬りで猪を一刀両断し、最高級の装備に酔いしれた
吾輩たちは、宿の部屋へと戻り、これからの進路を
決めるための軍議(という名の食後の茶会)を開いた。
「よし、カイル。新装備の試運転は完璧だったな。
この勢いのまま、いよいよ人類の最前線、
『断絶の砦』へと乗り込むぞ! 地図を見る限り、
ここから砦まではさらに二日はかかる計算だが……」
「二日……。まだ歩くんですね……。
いや、この鎧と剣なら、どんな魔物が出ても
怖くはないですけど、やっぱり足が……」
カイルがピカピカの白金の鎧をさすりながら、
少しだけ遠い目をする。そこに、新調した杖で
背中を掻いていたセレスが、ニヤリと笑って割り込んだ。
「ねぇ、アスタロ。普通に行けば二日だけどさぁ、
私が知ってる『特別なルート』を使えば、
一日で砦まで着けちゃうよ? どうする?」
「ほう。……。セレス、お前また例の
勇者をパシリにしていた時の知識か?」
「失礼だなぁ、調査だよ、調査!
あいつに食料を買いに行かせる時に、
私がこっそり見つけた秘密のショートカットだよ!
そこを通れば、面倒な起伏も魔物も全スルーだよ!」
……。相変わらず、楽をすることに関しては
全知全能の吾輩すら凌駕する執念だな。
ルナリエが事務用バインダーをめくり、無言で頷く。
「……。アスタロ様。セレスさんの提案は、
時間短縮の観点からは極めて合理的です。
整合性を乱す神の権能を使わずに済むのも利点ですね」
「よし、決定だ! セレス、案内しろ!
今日中に人類の最前線まで食らいついてやるぞ!」
翌朝。吾輩たちはセレスの案内で、地図にも載っていない
険しい岩場の隙間や、乾いた谷底を突き進んだ。
カイルは新しい鎧の重さに文句を言う暇もないほどの
強行軍だったが、セレスの言う通り、驚くほど
他の旅人や魔物に出会うことはなかった。
そして日が沈みかける頃。
切り立った崖の先から、ついに「それ」が姿を現した。
空を圧するような巨大な石造りの要塞。
無数の兵士たちが槍を並べ、魔族の侵攻を
今か今かと待ち構えている、人類最後の防波堤。
――「断絶の砦」が、目の前に鎮座していた。
「……着いた。本当に一日で着いちゃった。
……。アスタロ様、あそこが本当の最前線ですね。
あの砦の向こう側には、もう魔族の陣地が……」
カイルがミスリル剣の柄を強く握りしめる。
砦の向こう側からは、不自然なマナの揺らぎが
霧のように立ち込め、四天王の存在を予感させていた。
吾輩は神である。
そして、今日からはこの世界のルールであり――
ニートの悪知恵で人類の最前線まで最短で辿り着き、
勇者のピカピカの装備を砦の兵士に見せびらかしに行く、
ちょっと誇らしげな創造主である。




