第26話:神、金貨八百枚の装備に「不壊の理」を刻む
翌朝。吾輩たちはピカピカのミスリル装備に身を包み、
性能テストのために街の外へと繰り出していた。
カイルは、歩くたびにカチャカチャと鳴る高価な鎧と、
腰に下げた蒼い名剣の感触に、頬を上気させている。
「……。アスタロ様。合計で八百枚もしたんです。
僕の剣も鎧も、セレスさんの杖も最高級品……。
今度こそ、今度こそは『本物の勇者』として、
格好よく魔物を斬らせてくださいね?」
「カイルよ。全知全能の吾輩が、そんな期待を
裏切るはずがなかろう。……。だが、考えてもみろ。
もしその高価な装備一式が、魔物の不意打ちで
一撃でパキッと壊れたらどうする? 大損だぞ!」
「う……。それは、想像しただけで気絶しそう……」
「万が一だ! その万が一を防ぐのが、管理者の義務!
よし、そこに直れ。吾輩が今ここで、
全員の装備に『絶対に壊れない保険』をかけてやる!」
吾輩はカイルの制止を無視し、ミスリル剣と白金の鎧、
さらにはセレスが大事そうに抱える高い杖に、
指先で『不壊』の理を次々と書き込んだ。
これほどの業物であれば、吾輩の権能を注いでも、
以前のなまくら剣のように切れ味が死ぬことはない。
「……。よし。これで、どんな衝撃を受けても、
これらの装備は原子レベルで固定された。
しかも、今回は土台が良い。切れ味を一切損なわず、
むしろ『至高の鋭さ』をそのまま固定してやったぞ!」
「……。アスタロ様。本当ですか?
また鉄の棒になってたりしませんか……?」
ルナリエの冷ややかな視線を背に、吾輩は
指をパチンと鳴らし、周囲の魔物を強制召喚した。
「ひ、ひぃぃ!? 街道であれだけ苦労させられた、
あの巨大な猪が、藪からゾロゾロと湧いてきたぁぁ!」
「ほら、テストだカイル! 新装備の性能を試せ!
そのミスリル剣で、あの猪どもを
華麗に、かつ頑丈に仕留めてこい!」
「う、うわぁぁぁ! ……行きます!
必殺、ミスリル……斬りぃぃ!!」
カイルが勢いよく抜き放ち、猪の首筋へと
ミスリルの蒼い刃を振り下ろした。
――スゥッ……。
手応えすら感じさせぬ静かな一撃。
次の瞬間、巨大な猪の首が、噴水のような鮮血を上げ、
一刀両断にされて地面に転がった。
「……。き、切れた。……切れたぁぁぁぁ!
アスタロ様! すごいです! 撫でただけなのに、
バターみたいにスパスパ切れますよ、この剣!!」
「フッ。当然だ、吾輩の調整に狂いはない。
……。さて、カイル。そのまま残りの猪も、
お前のその鎧で突進を受け止めつつ、
一匹残らずスライスしてこい!」
吾輩は神である。
そして、今日からはこの世界のルールであり――
最高級の武具に「神のチート」を完璧に融合させ、
ついに本物の勇者を爆誕させてしまった創造主である。




