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吾輩は神である。そして今、猛烈にキレている。  作者: じょん-ドゥ


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第1話:神の降臨、それは物理法則の敗北

「お、降りたか? ここが下界か」


 眩い光と共に、吾輩は大地に降り立った。

 そこは、どこかの街道沿日の草原だった。

 空気が美味い。神界の加湿器混じりの

 空気とは、清々しさがまるで違う。


「お見事な着地です、神様(仮)。

 座標のズレはわずか数ミリ。

 創造主としての面目は保たれましたね」


 隣では、ルナリエが涼しい顔で

 手帳に何かを書き込んでいる。

 彼女も一緒についてきたのだ。

 ……というか、半分無理やりだが。

 さて、感動の対面……と思いきや、

 どうも周囲の空気が物騒だ。

 前方から「グオォォォ!」という、

 品のない鳴き声が聞こえてくる。


「神様(仮)、お足元にご注目を。

 降臨早々、地元の洗礼ですよ」


 見れば、巨大な猪に牙と角を生やしたような

 魔物――オークの群れが、

 血走った目でこちらに突撃してくる。


「ほう。あれが噂の魔物か。

 実物を見ると、案外不細工だな」


「あの一団、この先にある村を

 襲いに行く途中のようですよ。

 放っておけば、私たちが最初の犠牲者です」


「犠牲者? 誰が? 俺が?」


 ふふっ、と鼻で笑ってやった。

 吾輩は、全知全能のままで降りたのだ。

 あんなカビみたいな連中に、

 一ミリたりとも触れさせるわけがない。

 吾輩は、ゴミでも払うかのように、

 軽く「しっしっ」と右手を振った。

 ――バチンッ!!

 空間が、爆ぜた。

 突撃してきたオークたちが、

 まるで巨大なプレス機に叩かれたように、

 一瞬で『消滅』したのだ。

 肉片すら残らない。ただの塵である。


「……あー。神様(仮)」


「なんだ、ルナリエ。

 私の圧倒的な神力に見惚れたか?」


「いえ、今のは『手を振る』というより、

 物理法則そのものを消し飛ばしましたね。

 おかげで、彼らが持っていたであろう

 魔石や素材も全て粉々です。

 貴重な『路頭に迷わないための資金』が、

 塵になって消えました」


「……あ。……そっか、売れるのか」


「神が直接関与すると、

 経済的なリターンがゼロになる。

 素晴らしい教訓ですね。

 次はもう少し、力加減を学んでください」


 くっ、秘書のくせに正論を。

 気を取り直して、吾輩は自分の姿を見た。

 今の格好は、神界で着ていた

 豪華すぎて逆に浮いている白いローブだ。


「よし。服装もこの世界に合わせるか。

 旅人っぽく、かつ格好良く……な!」


 パチン、と指を鳴らす。

 吾輩の服は、機能性の高そうな

 上質な革のコートとブーツに変わった。

 うん、なかなかにイケメンだ。


「よし。ついでにルナリエ、

 お前の服も変えてやろう」


「えっ、結構です。

 私はこの事務服が気に入って――」


「いいから、いいから!

 神様の粋なサービスだ!」


 吾輩は再び、ルナリエに向けて手を振った。

 彼女を「この世界で一番魅力的な格好」に

 書き換えるイメージで。

 ドロンッ。

 ……そこに現れたのは。

 やけに布面積が少ない、

 いわゆる『踊り子風のビキニアーマー』に

 身を包んだルナリエだった。

 月の光を反射して、肌が眩しすぎる。


「…………」


 ルナリエが、無表情で自分を見下ろす。

 そして、冷ややかな視線を吾輩に向けた。


「神様(仮)。……死にたいのですか?」


「いやっ、違うんだ!

 俺の頭の中の『魅力的な格好』という

 ライブラリが、勝手に暴走して……!」


「この格好で街を歩けと?

 それとも、神様は私の肌を

 不特定多数の男たちに晒して、

 その反応を見て愉しむ性癖をお持ちで?」


「持ってない! 断じて持ってない!

 分かった、すぐ直す! 戻すから!」


 慌てて指を鳴らし、彼女を

 シックな紺色の旅装束に書き換えた。

 ……危うく、旅が始まる前に

 秘書に消されるところだった。


「……ふぅ。さて、ルナリエ。

 旅を始めるにあたって、名前を決めよう。

 神様(仮)のまま名乗るのは、

 色々と都合が悪いからな」


「そうですね。不審者として

 通報されるのは避けたいところです」


 吾輩は空を見上げ、

 この世界で一番偉そうで、

 かつ親しみやすい響きを考えた。


「よし。吾輩の名前は……『アスタロ』だ」


「アスタロ、ですか。

 少し悪役っぽい響きですが、

 今の神様にはお似合いかもしれません」


「よおし。行くぞ、ルナリエ!

 まずはあの煙が見える集落を目指す。

 そこで飯を食い、宿を探すんだ!」


 こうして、世界を揺るがす現場調査が始まった。

 吾輩は神である。

 そして、今日からはこの世界のルールであり――

 秘書の機嫌を伺う、ただの迷い人である。

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