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吾輩は神である。そして今、猛烈にキレている。  作者: じょん-ドゥ


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第17話:神、初陣を物理(殴打)で解決させる

 王都の外れ、草原を歩き始めて数分。

 最初の「デバッグ対象」は、向こうから跳ねてやってきた。

 体長一メートルはある、巨大な一本角を持つウサギ――

 ホーンラビットだ。


「ひぃぃ! 出たぁぁ!

 あんなに尖った角で突かれたら、

 僕の人生、一話目で最終回だぁぁ!」


「落ち着けカイル! お前には吾輩が授けた

『絶対に折れないなまくら剣』と、

 ボロいが見た目だけは一人前の皮鎧があるだろう!

 ほら、構えろ! 腰が引けているぞ!」


 カイルはガタガタと震えながら、錆びだらけの剣を抜いた。

 ホーンラビットが鋭い鳴き声を上げ、弾丸のような速度で

 突進してくる。狙いはカイルのど真ん中だ。


「うわぁぁぁん! 来るなぁぁ!」


 カイルがヤケクソで振り下ろした「なまくら剣」が、

 空中でホーンラビットの岩のように硬い角と激突した。

 ――ガキィィィィィィンッ!!

 草原に、およそ鉄屑がぶつかったとは思えない、

 澄み渡るような高音が響き渡る。

 本来なら一撃で粉砕されるはずのボロ剣は、

 一ミリの欠けもなく角を力強く弾き返した。


「……え。……折れてない。

 あんなに凄い衝撃だったのに、手が痺れるだけで、

 剣はピンピンしてる……!」


 驚くカイルの隙を突き、魔物が二の太刀を繰り出した。

 鋭い角が、カイルの胸元――

 ボロボロの皮鎧へと、真っ直ぐに突き刺さる。


「ぎゃあああ!? 死んだ! 今、僕死んだよね!?」


 鈍い衝撃と共にカイルが数メートル吹き飛ぶ。

 だが、地面を転がったカイルが恐る恐る胸を見ると、

 そこには角が刺さった跡どころか、傷一つ付いていなかった。


「……あれ? 痛くない。

 この鎧、穴だらけだったはずなのに、

 なんで角が弾かれたの……?」


「当然だ! 見た目はゴミだが、強度は不滅の聖遺物級だ!

 不壊ふえの概念は鎧にも付与してある。

 いいかカイル、その剣は実質『絶対に折れない鉄の棒』だ。

 斬るんじゃない、遠心力で粉砕しろ!」


「無茶苦茶言わないでくださいよぉぉ!」


 死なないと分かったカイルが、半泣きで剣を振り回すと、

 ホーンラビットの角を次々と力任せに弾き飛ばした。

 斬れ味ゼロの刃(?)が当たるたび、

 「ボゴォッ!」「ドムッ!」という鈍い音が響く。


「……。アスタロ様。

 あれ、勇者の戦い方ではありませんね。

 どちらかと言えば、撲殺ぼくさつです」


 ルナリエが冷ややかに、手帳に『撲殺勇者』と

 新たなラベルを貼り付けている。


「いいんだよルナリエ! 勝てば官軍だ!

 ほらカイル、トドメだ!

 剣の側面で、ハエ叩きのように叩き潰せ!」


「死ぬ気でやってる僕へのアドバイスが、

 ハエ叩きってひどすぎませんかぁぁ!!」


 涙目で振り下ろした最後の一撃が、脳天を直撃した。

 「ベシャッ」という嫌な音と共に、

 魔物は光の塵となって消えていく。


「……はぁ、はぁ。……勝った。

 僕、生きてる。……でもこれ、

 剣を使った満足感が一ミリもないんですけど……」


「何を贅沢を言っている。

 壊れない、手入れ不要、しかも撲殺も可能!

 これほど初心者に優しい武器が他にあるか!」


 吾輩は神である。

 そして、今日からはこの世界のルールであり――

 勇者の初勝利を「撲殺」で飾らせたことに、

 一抹の申し訳なさを感じつつも、

 ドヤ顔を崩さない創造主である。

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