仮面同士の戦い
「なんか…もう嫌だ」
疲れた…本音が漏れた。
学園の隅、レティシアが泣いていた場所、
そこで私も独り、佇んでいた
いつも元気を出せと言うように照りつけてくる、うっとうしい陽の光も届かない。
頬を撫でる弱い風が流れる。
この場所は心地良かった。
(ただ、ホンモノの愛を確かめたかった。それだけだったのに…)
…………。
ゲームだから、異世界転生だから、ヒロインだから……
思いどおりにいく訳じゃないってことか
”役割”だけ押し付けてきて、
ケチな”現実”だな
クヨクヨしても仕方がない……
のそのそと雑木林から立ち去った私は2番目に会いたくなかった人に会った。
「王子さま…」
「やあ、アリシア嬢」
逃げ出したい……。
「今度、課外授業で孤児院の慰問活動があるけれどアリシア嬢は参加するかい?」
「出欠連絡は明日までだよ」
「………参加しようかな」
「そうか。アリシア嬢は子どもは好きなのかい?」
「はい!子どもは好きです!」
ガキは裏があっても分かりやすいし、基本は素直だから好きだ。
その時、ふと思った。王子とレティシアはどんな子どもだったのかな?
「王子さまは昔から今みたいに優しかったんですか?」
「いや·····」
王子は珍しく言葉を途切れさせた。
「……?」
「アリシア嬢」
王子は真剣な顔をして、私を見つめてきた。
(な、なに??)
「子どもの頃は……今も自分がない人間だよ」
「僕は」
「果実水が好きなことだって自覚してなかった……アリシア嬢が相手だから気づいたのかもしれない」
「たぶん僕たちは似てるんだ」
「誰かの期待する自分でしか振る舞えない…」
「……」
心臓が大きく跳ねた
そうね、私も誰かの理想の自分で振る舞い続けることで生きてきた…。
私と王子は似てるんだ……。
だから、きっとそんな王子を思い続けてるレティシアの気持ちだからこそ……
「だからこそ、距離を置きたい」
「え?」
「婚約者がいるのに、他の女性と親しげなんて王位を継ぐものの責任を疑われかねない」
「ひとつ、いいですか?」
「なんだい?」
「レティシア様の事は好きなんですか?」
「僕がそれを言うことを誰も望んでないよ」
「殿下」
「カイン」
従者が王子を呼ぶ。
そして、王子は私の返事は聞かず静かに立ち去った。
従者はなぜか立ち去らない。
「·····ここで引いた方があなたのためでは?」
「…え?」
「引くってなんのことですか?」
「分かってるはず、ですよね?」
「わたしっ!王子さまと仲良くなりたかっただけですっ」
「あなたは·····」
「口から出る言葉ほど無邪気な訳ではないでしょう」
従者はそう言うと王子の後を追った。
その後ろ姿が見えなくなって…ようやく私は一息つくことができた。
「さて………」
雑木林、その手前の草むらに目をやる。
「話しましょっか」
「レティシア様」
座り込むレティシアを見つめて、私は宣戦布告をした。
__あなたの愛がホンモノか確かめさせてちょうだい




