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15魔術

見てくださってありがとうございます。

終わりは突然のこっとでした。

悠然と立っているのは滅鬼。血の海に沈んでいるのは白髪の少年。

「こんなにもあっさりと当たりを引くとはな。拍子抜けだ」

「なにを……しや……がった……!?」

息も絶え絶え。意識を朦朧とされながらも、少年は滅鬼を睨みつけ、問います。

「解説してやる義理は無いが……教えてやろう。これはあらゆる世界に存在する異能……魔術と呼ばれるものだ」

「魔術……だァ……?」

「魔術は正しい手順を踏めば誰にでも行使できる異能だ。しかし手順を少し踏み外してしまうと暴走して術者に危険が及ぶこともある」

「…………ちっ」

「そして稀にだが魔術を行使することで激しい拒絶反応を起こす者もいる。小僧、貴様のようにな」

「……テメェが俺に魔術を使わせたってことか……」

「そういうことだ。まんまと罠にかかる姿はなかなかに滑稽であった。くくっ」

「ク……ソ……野郎がァ……!」

少年は震える身体で立ち上がろうと試みますが、出血が激しいせいで起き上がれません。

『少年!しっかりなさい!』

「……喚くな」

悪態を吐く言葉も力を失いかけていました。

「そこそこ楽しめたが……やはり貴様程度にはこの程度の結末が相応しい」

「…………みてェだな」

少年は自嘲するように力無く笑い、目を閉じました。 抵抗を放棄し、生きることをも放棄するように少年は脱力し、地に背をつけました。

(何も成せねェ……か。こいつの言う通りだった……)

命が終わろうとしているこの時に、少年は気づいてしまいました。少年の歩んできた道には大切なものが何も無いということに。

「はっ……ここまで無様に落ちぶれると逆に笑えてくるな……」

「……そうか」

確実に近づいている死にも、もはや何を感じることもありません。 滅鬼は虚空より身の丈以上の金棒を取り出し、少年の眼の前でゆっくりと振りかぶります。

「その傷……放っておいても時を待たずして死に至るだろうが……光栄に思え。我の手で直々に葬ってやろう」

「……光栄でも何でもねェ……殺るならさっさと殺りやがれ……」

命を投げ捨てるように、少年は吐き捨てました。

『シャドウ……』

「む!?」

『カノン!』

ボヤける少年の視界に入ったのは途方も無い漆黒の奔流。

「あァ……?」

そして、その奔流を生み出し続け、少年を守るように佇んでいたのはミツユキでした。

そして、漆黒の奔流が止んだ後、漆黒の軌道上には一切の存在が消失していました。

「テ……メェ……?」

『………………』

ミツユキは何も言わず、虚空より水を生み出し、遠慮無く少年にぶちまけてきます。 たったそれだけで、ボンヤリと薄れていた少年の意識が覚醒します。 そして、致命傷が嘘のように消失するのでした。

『さっさと立て。死に損ない』

「あァ?」

ミツユキが視線を向けた先には、

「礼太ぁあ!」

「礼太君〜!」

おじいさんとおばあさんが駆け寄ってくるのでした。

「心配したわ!礼太君!」

「よくぞ無事でいてくれたわい!」

「………………」

少年はおばあさんに抱きしめられ、おじいさんからは頭をワシワシと撫でられるのでした。

「よかったわ〜!わ〜ん!」

「ワシは信じておったぞ。お主が簡単に死んでしまうわけがないと。ぐすっ……」

少年は悪態をつくことを忘れ、目を見開いて呆然としてしまいました。

(何なンだ……このジジイとババアは……)

少年には分かりませんでした。なぜ、おじいさんとおばあさんがこのような顔をしているのかを。なぜ、涙を流し喜んでいるのかを。そして、包み込まれるこの温かさを。

『おじじ様とおばば様を頼む』

「あァ……?」

ミツユキが振り返り、視線を向けた先には悠々と宙に佇む滅鬼の姿がありました。

「野郎…………!」

「礼太殿!まずはこの場をミツユキ殿に預けましょう!」

「誰だテメェは」

「桃太郎です!私のことはどうでもいい!早く!この場は危険です!」

「ちっ……」

少年は桃太郎の忠告に従い、おじいさんとおばあさんをかついでこの場を離脱するのでした。


どうか最後までお願いします。

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