14敗北
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ミツユキの空間転移能力により、おじいさんとおばあさんとミツユキは一瞬にして天下城の天守閣へとたどり着きました。
「ここが……あの城なのじゃな……」
「ボロボロね……」
豪華絢爛であった天守閣は崩れた瓦礫で散らばっており、屏風が倒れ、半ば廃墟のような有様となっておりました。
「うわぁ!?」
「「!?」」
突如、後ろから男の驚く声がしました。
おじいさんとおばあさんが振り返って見ると、そこには、
「「桃太郎!」」
「おじいさん!おばあさん!どうしてここへ!?それにその怪物は!?」
桃太郎はミツユキを恐れたのか、一歩後ずさります。
「この子はミツユキちゃんよ。ワタシ達を助けてくれるわ」
「そう……なのですか……?」
訝しそうにする桃太郎ですが、それ以上追及することはありませんでした。
『おじじ様とおばば様の願いにより、人間を解放し、鬼を退治しに来た』
「ミツユキ殿……ご助力、感謝致す。しかし、そう簡単に事が運びはしないだろう。それに……」
ドォオオン、ドォオン!
「外のこの騒ぎ……一体島で何が起きている?」
「桃太郎や。滅鬼の方は礼太の小僧が相手をしてくれておる。そして、鬼のほとんどはすでにミツユキのやつが無力化してくれた」
「何と……!?」
「皆を解放するのは今しか無いわ。桃太郎、協力してちょうだい」
「……もちろんです。叶うならば俺も戦いに加わりたいのですが……俺が行った所で足手まといでしょう。皆の解放を優先しましょう」
「桃太郎や。ワシらは皆が囚われている場所を知らん。案内してくれ」
「もちろんです。人間は皆、この天下城の地下に囚われています。案内しましょう」
先導するため進もうとした桃太郎ですが、宙に浮くおじいさんとおばあさんを目にして固まってしまいます。
「と、飛べるようになったのですか……?」
「ほっほっほ。馬鹿を言うでない。これはミツユキの力じゃ」
「こうやって運んでくれるのよ。快適だわ」
「そんな無茶苦茶な……まあ都合が良いです。行きますよ」
桃太郎は階段を降り、進んでいきます。
「外の騒ぎのおかげで城内はガラガラ。警備は機能していません」
「礼太君のおかげね」
「そうじゃな」
桃太郎の口にした通り、広い城内だというのに鬼の姿は一人たりとも見えませんでした。
桃太郎は駆け抜け、ミツユキとおじいさんとおばあさんは飛んで、下に下にと向かっていきます。
結局、一番下の階に辿り着いてもなお、鬼はいませんでした。
「こっちです」
桃太郎が向かったのは城の裏門です。 出てみると、少し先に巨大な鉄門とそれを取り囲む鉄柵が広がっていました。
「本来なら門を開けるための鍵が必要なんだが、ミツユキ殿。これを破壊することは可能か?」
桃太郎の問いに、ミツユキはコクリと頷きました。 そして、
バガッ……メキ……メキ……!
巨大な鉄門は紙がひしゃげるように形を崩し、役目を失うのでした。
「……凄まじい……こうも容易く……」
ミツユキの力を目の当たりにした桃太郎はゴクリと喉を鳴らします。
「桃太郎、この中に皆がいるのね?」
「ええ。この時間、人間は皆ここに収容されています」
門をくぐった先には地下へと通じる巨大な階段がありました。
桃太郎は一足先に階段を降り、三人も続きます。
中はろくに明かりがついていません。
「足元に気をつけ……いえ、関係ありませんでしたね」
三人は浮遊しながら移動しているので転倒の危険はありません。
『ふむ』
ミツユキは得心すると、身体を淡く発光させるのでした。
「おぉ……!かたじけない」
薄暗い地下を照らしてくれたおかげで中の様子が見えてくるのでした。
「これは……」
「ひどいのぉ……」
おじいさんとおばあさんは中の様子を目の当たりにし、表情を歪めました。
広さこそありますが、それだけ。物という物が無く、広い空間の中、人間達は布団をかぶることなく、身を寄せ合うように地面に寝転がっているのでした。
人々の身体は痩せ細り、髪はボサボサ。肌には泥が染み付き、服は破れ放題。 まるで、いつ力尽きて命を落としてもおかしくない有様でした。
『安心するが良い』
「「「?」」」
ミツユキが手を天にかざします。 すると、かざした手の先に、虚空より生じた水が集まっていきます。
やがて、身の丈程の大きさになったところでミツユキはかざした手を握ります。 それを合図に水が弾け、飛沫が一斉に人間達に降り注ぎます。
「「「「…………?」」」」
すると、飛沫を浴びた者達の身体が淡く光っていきます。
「ミツユキ殿、何を?」
『……見た方が早い』
「……!?これは……!?」
飛沫を浴びた者は、枯れ木が瑞々しく蘇ったかのように激変していました。 痩せた手足には逞しい筋肉が、泥だらけの肌はシミ一つない肌に、荒れた雑草のような髪はしっとりとサラサラに。そして何より、生命力に溢れていました。
「何だ……!?一体何が!?」
「あ、あれは何だ!?か、怪物か!?」
「いや、桃太郎殿もいるぞ!それに、身体が!」
「本当だ!信じられん!怪我も治っているぞ、」
目覚めた人間達は事態の把握ができず、オロオロと視線をさまよわさます。
「皆様お聞きください!」
「「「「……!」」」」
桃太郎の呼びかけに、皆は口を閉ざし、従います。
「このお方はミツユキ殿!我らを助けんと駆けつけてくださった神の使いであるお方です!そして、皆様の身体を癒してくださったのもこのお方のおかげなのです!」
「「「「おぉ……」」」」
「加えて、鬼はほぼ壊滅状態。残すは滅鬼のみです。現在、滅鬼はもう一人の神の使いが足止めしてくださっています。これから皆様には島の外へと避難していただきます」
「わ、分かりやしたが……」
反対を示す者はいないものの、依然として困惑が残ります。
「突然の話ですみませんが事態は急を要します。すみやかに指示に従ってください」
桃太郎の話に皆は困惑しながらも、頷いて答えてくれました。
「で、旦那。どうやって島の外へ行くんで?」
「え?そ、それは……」
問われた桃太郎は目を泳がせ、おじいさんとおばあさんの方へ。
「「………………」」
視線を向けられたおじいさんとおばあさんの視線はミツユキの方へと吸い寄せられます。
『………………』
ミツユキは脱力したように閉眼し、そして手を皆の方へとかざします。 たったそれだけで、皆の姿は忽然と消失するのでした。
「「「!?」」」
桃太郎とおじいさんとおばあさんはギョッと目を見開き、ミツユキに詰め寄ります。
「ミツユキちゃん!一体皆に何をしたの!?」
「まさか殺したりはしとらんじゃろうな!?」
『心配無い。ひとまず島の外……おじじ様とおばば様の家へ送っただけだ』
どうやらミツユキの空間転移の技による現象だったようです。 三人は皆の無事にホッと胸を撫で下ろします。
「では、ミツユキ殿。おじいさんとおばあさんもよろしく頼みます」
『うむ』
ミツユキはコクリと頷きますが、
「ダメじゃ!」
待ったをかけたのはおじいさんでした。
「ワシらはこの戦いを見届けねばならん」
『……無茶だ』
「ごめんね、ミツユキちゃん。これだけは曲げられないわ」
おじいさんだけでなく、おばあさんも帰還を拒みます。
「本来なら、これはワシらの世界の人間がどうにかせねばならぬ戦い。じゃが、ワシらは戦うことができん。それだけはどうにもならん。結果、他の世界の強者に命運を託すことしかできんかった」
おじいさんは不甲斐ないと悔やむように言いました。
「じゃが、だからこそ託した者の責務だけは果たさないといかんのじゃ。この戦いを見届けねばならんのじゃ。ただ座して報告を待つだけなんぞ死んでもごめんじゃからな」
「おじいさんの言う通りです。礼太君やミツユキちゃんが頑張ってくれているのに、当事者たるこの世界の人間が任せっきりだなんてできません」
「危険です!見届ける役割は俺が担います!ミツユキ殿、おじいさんとおばあさんを島の外へ!」
『……すまない』
「ミツユキ殿!?」
『私はおじじ様とおばば様の想いに背くことができなくなっている。恐らく、団子の影響だ』
「そんな……」
おじいさんとおばあさんの想いは曲げられませんでした。
「くっ……!分かりました!ですが、くれぐれも無茶はやめてくださいよ!?」
『むぅ……』
桃太郎とミツユキは後ろ髪を引かれつつも、何とか二人の言い分を認めてくれました。
『気休めではあるが……』
ミツユキが桃太郎、おじいさん、おばあさんの順に手をかざします。
一番最初に変化に気づいたのは桃太郎でした。
「み、ミツユキ殿……この力は……!?」
『能力を一時的に上昇させた。加えて……』
ミツユキは念動力で石を拾い上げ、矢のような速さで桃太郎の顔面へと射出しました。
「!?」
突然のことに反応できない桃太郎。
しかし、石は桃太郎に衝突する寸前で砕け散り、跳ね返されるのでした。
『半端な危険ならこの通りだ』
それでも、ミツユキは過信はできないと付け加えます。
『三人とも聞こえますか?』
『む?
女神様のお告げです。
『心を落ち着けて聞いてください』
女神様はそう前置きし、結果を端的に伝えます。
『少年が滅鬼にやられました』
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