12鳳仙花
少しずつ見てくれる方が増えてきてとてもありがたいです。コメント等いただけるととても嬉しいのでよろしければお願いします。
「……鳳仙花……!」
美鬼が右腕をかかげ、妖術を発動させました。
すると美鬼の背後、空間を侵食するように巨大で透明な鉱石が現れました。 その鉱石は空を覆わんばかりにぐんぐんと広がっていきます。
妖しく紅い光を放つその巨大な鉱石は、まるで花の蕾のようでした。
その不気味に輝く紅の蕾は闇夜の空をも染め上げます。
「よ、妖術じゃ!」
「だ、大丈夫かしら?」
何が起こるかは分かりません。ですが、おじいさんもおばあさんも凶悪な何かが起きようとしていることは肌身で感じていました。
「くくつ……君は馬鹿なのかな?さすがに悠長すぎやしないかい?」
『………………』
美鬼の口ぶりは己の勝ちを確信しているようでした。しかし一方、ミツユキは危機感を感じているどころか一切の反応を示さないのでした。
そんなミツユキの様子に、美鬼は苛立ちを露わにします。
「っ……気味の悪い……!そんなに死にたいなら死ねばいい!」
これ以上の問答は無用。美鬼は掲げた右手を強く握りしめ、妖術を発動させます。
「はじけ『黙れ 』
パリィン!
「「「!?」」」
美鬼が作りだした空間がミツユキの命令に屈したかのように一変しました。
夜空に咲き誇っていた妖しい巨花は、繊細なガラス細工のように一瞬にして砕け散り、再び虚空へと消えていくのでした。
異変はそれだけではありません。
「な……にが……!?うご……け……!?」
美鬼の身体がピッタリと縫い付けられた虫のように動かなくなってしまったのです。
宙で悶える美鬼に、ミツユキの右手が向けられます。
そして、夜よりも深い闇が、ミツユキの右手の先に収束されていきます。
「な……にを……!?」
『加減はする』
圧縮されながら集まる闇はジワリジワリと膨れ上がり、周囲の空間を歪める程の力を溜めていきます。
身動きが取れず、美鬼はただ見ていることしかできないまま、やがて闇の力が飽和状態に達します。
ミツユキの右手の照準が美鬼に合わさり、
「ひっ!? や、やめろぉお!」
『シャドウ……カノン!』
「!?うわぁあああああああああ!?」
ヒュゴオオ!
ミツユキが放った闇の力は美鬼をたやすく吞み込み、夜空を裂いて遥か彼方へと消えていくのでした。
『………………』
終わってみれば、あれだけひしめいていた鬼の大群はミツユキの手によってあっという間に無力化されたのでした。
「守ってくれてありがとうね。ミツユキちゃん」
「あっぱれじゃな!天下無双とはこのことよ!」
『ふふっ……』
おばあさんのナデナデを受け、ミツユキは心地良さそうに目を細めました。
少しして表情を引き締め、
『……行こう。桃太郎を助けるのだ』
「そうね。急ぎましょう」
『見つけました!桃太郎です!』
「「!?」」
突然の女神様のお告げです。
『天下城の天守閣です!外の異変を確かめにきたのでしょう!』
「どこじゃ……?」
「ここからじゃ見えませんね……」
おじいさんとおばあさんは目を細めて天守閣に向かって目を凝らしますが、さすがに見えません。しかし、
『……あそこか』
ミツユキが桃太郎を捕捉しました。
『おばあさん、おじいさん、私につかまれ』
「ミツユキちゃん?」
「お、おう」
おばあさんとおじいさんはミツユキの意図を理解できないものの、素直にミツユキの手を握ります。
『桃太郎の所へお連れする。どうか驚かないでくれ』
「「!?」」
ミツユキは一つ呼吸を置いてから一つの『技』を使います。 それを合図に、三人はこの場から忽然と姿を消すのでした。
どうか続きもお願いします。




