第31話 前線の壁と元幹部の共闘
地鳴りのような踏み込みとともに、先頭の大型魔物が突進してくる。オルソンは深く腰を落とし、愛用の盾を前に掲げた。
――ガアァァァンッ!!
激しい衝撃音とともに大地が爆ぜる。巨体を持つ魔物の突進を、オルソンは微動だにせず正面から受け止めた。盾の表面で威力を殺し、そのまま横へ受け流す。
「ふん、相変わらずバカげた硬さだな!」
背後からヴァルバトスの声が響くと同時に、無数の漆黒の魔力弾が頭上を通り抜け、後続の魔物たちをまとめて吹き飛ばした。人間の姿に化けてはいるが、繰り出される魔術の威惑は元幹部そのものだ。
「手元の狂いには気をつけろよ、ヴァルバトス。後ろから撃たれたらタダじゃ済まさん」
「言われずとも分かっている。元英雄と背中を預け合う羽目になるとは妙なものだな」
二人は息の合った連携で、押し寄せる波のような魔物の群れを次々と押し返していく。
オルソンが前線を支え、圧倒的な防衛能力で敵の足止めを行うことで、魔物の大勢は完全に遮断されていた。その背後、城壁の崩落地点に築かれたカレン率いる騎士団の防衛線には、討ち漏らした数匹が届く程度にまで被害が抑え込まれている。
「前線のあの動き……まさか、オルソン様……!?」
陣頭指揮を執りながら、遠くの乱戦の中に突出する二つの影を見つめるカレン。確信を持ちながらも、彼女は指揮官としての職務を全うすべく、声を張り上げた。
「前線が敵の勢いを殺してくれています! 崩れ落ちた瓦礫を盾にし、射手隊は援護射撃を開始! 一過性のパニックを抑え込みなさい!」
カレンの指揮により、後方の防衛線は鉄壁と化した。
だが、森の奥深くから響く地鳴りは一向に収まる気配を見せない。むしろ、地底の奥底からさらに強大な「何か」が這い上がってくる不穏な気配が、周囲の空気を重く湿らせていった。
黒い霧を吹き散らし、森が割れ、地表を突き破って現れたのは、全身を硬質な結晶甲殻で覆われた巨大な異形の魔物だった。未知の迷宮の深層に眠っていたとされる主――スタンピードを引き起こした元凶である。
「なるほど、大元はあのバケモノか」
オルソンは盾を握り直すと、不敵な笑みを浮かべた。その巨躯から発せられる圧倒的な圧迫感に周囲の兵士たちが息をのむ中、男たちの瞳には一切の恐れもなかった。




