第28話 事件解決後の、ちょっとだけ賑やかな夕食
事件から数日が経過した日の夕方。なぜかオルソンの四畳半の小さな部屋には、いくつかの異なる気配が集まっていた。
「オルソン様! 今回の大手柄により、騎士団本部から特製の高級干し肉と極上のワインが贈呈されました! 一緒に祝杯をあげましょう!」
当然のような顔をして部屋に上がり込もうとするカレン(※すでにドアの外でがっちりと足止め中)。
「おいオルソン、例の煮込み料理の新作が出来上がったぞ。冷めないうちに皿を出せ」
廊下の仕切り板越しに、湯気の立つ鍋から器へ料理を分けて渡してくるヴァルバトス。
「オルソンさん、近所の農家からお裾分けでカボチャがたくさん届いたから煮物にして持ってきたわよ! ほら、遠慮しないで食べなさい!」
ズカズカと当たり前のように足踏みで部屋の中へ入ってくる大家のマーサおばさん。いつの間にか本名がバレていたが深く追及されることもなかった。良い御仁である。
「……なんで俺の部屋にこんなにぞろぞろ人が集まるんだよ」
オルソンは頭を抱えた。今夜は一人で静かに干し肉を噛みちぎりながら酒を飲むはずだった夕食時間が、気がつけば妙に賑やかな宴会のような空間へと変貌していた。
ドア越しにカレンへお湯を注いだカップ麺を渡し、ベランダからヴァルバトスの特製煮込みを受け取り、マーサおばさんが持ってきてくれたカボチャの煮物をちゃぶ台へ丁寧に並べる。
「おいしいですね、オルソン様! 扉越しですが幸せです!」(ドアの外からの元気な声)
「ふん、私の煮込みとカボチャの甘みも悪くない組み合わせだな」(ベランダからの納得した声)
「あんた、なんだかんだで賑やかで、友達が多くて良かったわねぇ」(室内で寛ぐおばさんの声)
「友達じゃない……」
ブツブツと文句を口にしながらも、オルソンは温かい煮物を口の中へ運んだ。
出汁の染み込んだカボチャのやさしい甘みと、深いコクのある煮込みの味わいが舌の上に広がる。ドア越しに手渡されたワインのボトルを横目に、狭い部屋の中に充満する湯気とさまざまな匂いを眺めた。外からはカレンが差し入れの高級干し肉を噛みしめる音が響き、ベランダからはヴァルバトスが我が物顔で酒杯を傾ける気配がする。
「休みたいんだから、食べたら早く帰ってれよ」
そう呟く声には、自分でも驚くほど角がなかった。呆れ果てつつもグラスへ安酒を注ぎ、オルソンは一口飲み干す。たまには、こんな騒々しい夕食のひとときも悪くないかもしれないと、ほんの少しだけ思いながら。




