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第32話「空飛ぶ黒船と、文鎮からの着信音」

サン・アンド荒野にそびえ立つ、ガチャ産タワーマンションの最上階ペントハウス

ルークは「絶対安眠チェア」に深く身を沈め、窓の外の青空を眺めていた。


「平和だ……。領民は勝手に働き、ホムンクルスが勝手に書類を処理してくれる。これぞ、私が求めていた究極の『自動化オートメーション』」


しかし、その静寂はデスクの上から発せられる、不快な振動音によって破られた。

ブブブブブ……。


「……なんだ? マナーモードのスマホみたいな音がするな」

ルークが音の発生源を見ると、あの『宝珠オーブ』だった。

以前、「世界地図」を映し出した謎の球体が、赤く明滅し、激しく振動している。


「うるさいな。故障か?」

ルークはため息をつき、読みかけの厚い本を宝珠の上に「ドンッ」と乗せて物理的に黙らせようとした。


その直後だった。

空が急激に暗転し、巨大な影がタワーマンションを覆った。


「ルーク総督!! 緊急事態です!!」

アリスが血相を変えてペントハウスに飛び込んでくる。


「上空に、未確認の超巨大飛行物体が出現! 王国の飛竜部隊ではありません! 鉄でできた……『空飛ぶ船』です!」


「……は?」

ルークが窓の外を見ると、そこにはファンタジー世界にあるまじき、鋼鉄の装甲に覆われ、黒煙を吐き出しながら浮遊する全長300メートル級の『魔導戦艦』が停泊していた。

船体には、見たこともない二頭の鷹の紋章が描かれている。


「くっ……! あの紋章は、宝珠の地図にあった『西の超大国』のもの! まさか、このタワーの魔力反応を探知して、海を越えて侵攻してきたというのですか!」


アリスが聖剣を抜き放つ。

「総督! 直ちに全軍(獣人部隊とドワーフ機工団)に迎撃命令を! 私が単騎で艦橋に突撃し、敵将の首を……!」


「待て待て待て!!」

ルークは慌ててアリスの腕を掴んだ。

「あんなデカいのが落ちてきたら、せっかく建てたタワーも、ドワーフの工場も全滅だ! 私の安眠場所が消える!」


(それに、あれはどう見ても『黒船来航』だ。下手に攻撃したら、圧倒的な科学力で植民地にされる!)


その時、宝珠が再び「ブブブブ!」と震え、空中にホログラムの文字を投影した。


接続確立コネクティング……ガレリア帝国・第三艦隊提督ヴァルガスより入電』

『我々は古代文明の遺産「コア」の反応を感知した。直ちに引き渡されたし。さもなくば、貴国を焦土とする』


「……引き渡し要求か」

ルークは冷や汗を拭った。

「戦えば負ける。だが、渡せばこの街の防衛システム(ガチャ)も奪われるかもしれない。……アリス、ザック。私はこれより、あの空飛ぶ船の代表と『商談(交渉)』を行う」


「商談……ですか!? 相手は侵略者ですよ!?」

「いいか。ビジネスにおいて、武力衝突は最もコストパフォーマンスが悪い。……奴らを、私の『言葉ハッタリ』と『書類(契約書)』で煙に巻く」


ルークは震える膝を隠すように足を組み、タワーの通信機に向かって、精一杯の「大物感」を出して呼びかけた。


「……こちら、サン・アンド総督府、代表のルークだ。騒々しい訪問者だな。話があるなら、私のオフィス(最上階)まで来たまえ。……お茶くらいは出してやる」

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