第30話「ブラック領主からの脱北者」
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獣人族の加入により、街の警備と土木作業は飛躍的に進んだ。
そんな噂を聞きつけ、ある日、十名ほどのドワーフの集団が街の門を叩いた。彼らはみな、ハンマーや工具を背負い、目の下には真っ黒なクマを作っていた。
「わしら、東の『神聖ヴァレリウス帝国』の兵器工場から逃げてきたんじゃ……。あの国は『信仰心』という名目で、一睡もさせずに鉄を打たせる本物のブラック国家じゃて……」
ドワーフの親方が、咳き込みながら語る。
ルークの目が光った。ドワーフといえば、ファンタジー世界における最強の技術者集団だ。彼らがいれば、ガチャに頼らずとも街のインフラが自前で整備できる。
「よし、即採用だ。待遇は……」
ルークが契約書を出そうとした瞬間、横からアリスが割って入った。
「お待ちください、ルーク殿! 帝国からの亡命者……スパイの可能性もあります! 私がCEOとして、彼らの『我が街への忠誠心と精神力』を測るための、過酷な軍事面接を実施いたします!」
アリスが腕立て伏せの姿勢をとりながら、ドワーフたちを睨みつける。
「いや、そんなことしたら過労死寸前のドワーフが本当に死ぬだろうが」
ルークはアリスの頭をペシッと叩いて黙らせた。
「いいかアリス。技術職に求めるのは忠誠心(精神論)ではなく、アウトプット(成果)だ。精神論を強要する組織は必ず腐敗する」
「な、なんと……! 忠誠という目に見えない鎖ではなく、実力のみを評価する……これぞ真の合理主義!」
アリスは勝手に感動してノートにメモを取り始めた。
ルークはドワーフたちに向き直った。
「面接は省略だ。お前たちの腕は見てわかる。勤務時間はフレックスタイム制(コアタイム10時〜15時)とする。ノルマは課すが、達成すればあとは昼間から酒を飲んで寝てても文句は言わん」
「フ、フレックス……? な、なんじゃそのような制度は!」
ドワーフたちは「昼間から酒を飲んでいい」という言葉に狂喜乱舞した。
結果、自分のペースで働けるようになったドワーフたちは、かつてのブラック国家時代とは比べ物にならないほどの圧倒的な生産性を発揮し、街の建築物を次々と強固な石造りへとアップグレードしていった。
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