第28話「新規顧客(領民)の獲得と、狂気のホワイト労働契約」
「ガチャのシステム」と「異世界にはないホワイトな労働条件」が噛み合い、ルークの意図しない形で領民が雪だるま式に増えていくドタバタ劇です。
サン・アンド荒野のど真ん中に、ガチャの力で「プレハブ型執務室」と「無限湧水の中庭」を整備してから数日。
ルークが安眠チェアでうたた寝をしていると、ザックが慌ただしく飛び込んできた。
「ルーク様! 荒野のパトロール中、餓死寸前の流浪民の集団、約三十名を発見し、保護いたしました! どうやら隣の領地の重税から逃げてきたようです!」
中庭に出てみると、ボロボロの服を着た老若男女が、湧き水を飲みながらガタガタと震えていた。彼らはルークの姿を見るなり、一斉に地面に這いつくばった。
「お、お助けを……! どんな過酷な奴隷労働でもいたします! 一日一杯の泥水でも文句は言いませんから、どうか命だけは……!」
代表らしき痩せこけた男が、涙ながらに命乞いをする。
異世界において、身寄りのない流浪民が行き着く先は、使い捨ての強制労働と相場が決まっているのだ。
「奴隷……泥水……?」
ルークは眉間を揉んだ。
(冗談じゃない。そんなブラックな環境で働かせたら、過労で倒れた奴らの看病や、反乱の鎮圧で俺の仕事が激増するだろうが!)
ルークは懐から数枚の羊皮紙を取り出し、彼らの前にバサリと落とした。
「ここにサインか拇印を押せ。当『サン・アンド総督府』が定める雇用契約書だ」
「こ、雇用……契約……?」
「1日8時間労働、週休2日制。残業は原則禁止だが、発生した場合は通常賃金の1.25倍を支払う。さらに年次有給休暇は初年度から10日付与する。住み込み希望なら、あそこのプレハブ寮をあてがうが、家賃は給料から天引きだ。……異存はあるか?」
流浪民たちはポカンと口を開けた。
彼らの常識からすれば、それは完全に理解不能な言語だった。
「ひ、ひぃぃ……! なんだその恐ろしい条件は! 休んでいるのに給料が出る(有給)だと!? きっと、後で魂でも刈り取られるに違いない! 悪魔の契約だ!」
男が恐怖のあまり泡を吹いて倒れそうになる。
「ルーク様!」ザックがドス効いた声で前に出た。「こいつら、ルーク様の慈悲深い『ほわいと労働法』にケチをつけてやがります! 俺が物理的に説得(教育)しましょうか!」
「やめろザック。労基署(※存在しないが)に駆け込まれたら面倒だ」
ルークはため息をつき、ガチャで出した「全自動・配膳ホムンクルス」に指示を出した。
「とりあえず、食堂で温かいシチューとパンを食わせてやれ。腹が膨れれば、契約書の意味も理解できるだろう」
数時間後。
温かい食事と清潔なベッドを与えられた流浪民たちは、涙を流しながら雇用契約書にサインし、ルークがガチャで出した「全自動・石畳舗装ゴーレム」のメンテナンス係として、異常なまでのモチベーションで働き始めた。
こうして、ルークの荒野に最初の領民(従業員)が定住することとなった。




