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4 学舎

「ペンタさん。これが時計塔です」


「わ……、おっきい!!」


街中の建物の中で一番高くそびえ立つ時計塔。

何千年もの歴史を感じるその見た目に、圧倒されるペンタ。


「この時計塔って、この街で一番古い建物なんですか?」


「いえ、時計塔もかなり歴史はありますが一番ではないです」


(もっと古い建物があるんだ……)


「この街って、相当古くからあるんですか?」


「そうですね。だからこそ、魔王様との繋がりも深いのだと思います。あれがまさにですね」


凛が時計塔の文字盤を指差す。

よく見ると、全ての数字が黒い煙で作られていて、長針が動く度に振動で少し揺れている。


「あれ、魔王をイメージして作られているんですか?」


「はい。私が昔読んだ本では、そう書いてありました」


「この街自体が怪しくなってきたな……」


魔王に対する恐怖よりも、むしろ信仰心を感じるペンタ。


「怪しい?」


「こんな歴史ある時計塔に、恐怖の象徴である魔王を思わせるようなデザインをするって少しおかしくないですか?」


「そうですか?昔から見てるから、私は違和感無かったです」


ペンタは時計塔の壁に手を伸ばす。

苔が生えていて、ツタも伸び放題。

下から上の方まで繋がっている。


「……この中って入れないんですか?」


「どうなんでしょう?入り口らしい扉もないですし、どう管理しているんでしょうね?」


ペンタと凛は塔をぐるっと一周してみるが、何も見つからない。


「このツタで登る、とか……?」


凛はペンタの案を聞くと、ツタを掴み軽く引っ張ってみる。

そして、ブチブチッと切れたツタを見つめる。


「これで、ですか?」


2人は塔の中に入る事を諦め、また街を歩き始める。


「何か魔王に関係する物があるかも知れないのに……」


「ペンタさん」


ペンタが塔に入る方法を考えながら歩いていると、凛が突然立ち止まった。


「はい?」


「その、魔王呼びはあまり良くないかなと思います」


「あっ」


ペンタは知っていた。

魔王についていくら文句を言った所で、襲ってくる事はないと。

そして、いくら気をつけていても理不尽に襲われる人がいる事を。

むしろ、現れてくれたら良いのにと思いながらずっと父親と同じ様に呼び続けていた。


しかし、凛はその事実を知らない。

当然だ。

この世界では、魔王を敬わないと死に直結すると教えられているのだから。


「くそっ」


ペンタは世界の常識が腹立たしくなり、地面の石を思い切り蹴る。


「すみません。私、嫌な事言っちゃいました?」


「あ、いえ。ただ、凛さんはそれで良いんですか?世界の当たり前とこれから戦う事になるかも知れないのに、そんな事気にしてるとやりづらいでしょ?」


「そうですよね。分かってはいるんです。けど、どうしても刷り込まれた恐怖は中々簡単には消せないですし、兄とサルビアを奪われた怒り=魔王様への反逆とすぐには切り替えられません。私はペンタさんの様に強くないので……」


(強い?私が……?)


「それでも!魔王様の呼び方、人前では気をつけた方がいいかと。誰が聞いてるか分からないのですから」


「それもそうですね。すみません、これからは気をつけます」


そう言うとペンタは小声で凛に伝える。


「”あいつ”なら問題ないですよね?」


「ん〜……まあ、いいでしょう」


「あの!」


2人が笑い合っていると、目の前に見知らぬ少年が現れた。

声をかけてきたのはこの少年らしい。

何故か2人を睨みつけている。


「なんですか?」


ペンタは少年の目つきに不快感を覚えながら返事をする。


「石が当たったのですが」


少年は先ほどペンタが蹴った石を片手に持っている。


「あ、すみません」


自分の非に気づき、ペンタはすぐに謝る。


「申し訳ありません!」


関係のない凛も一緒に謝る。


「全く。お姉さん達、僕より大人なんだよね?それなのに石を蹴るとか、子どもじゃないんだしだいぶ視野が狭いんじゃないかい?」


やれやれとジェスチャーをし、少年は石をペンタに渡す。


「気を付けてくれよ。お姉さん達と違って、僕には高潔な血が流れているのだから」


「はい??」


ペンタが少年を睨みつける。


「なんだい?そんな睨んだってちっとも怖くなんかないよ?見るからに僕の方がレア度高いだろうし。あと君、その服装とガリガリの身体どうにかした方が良いんじゃないか?」


(こいつ……!!!)


「ペンタさん。先にやらかしたのはこっちです。大人として、流しましょう」


苛立っているペンタを凛がなだめる。


「……そうですね」


「ふんっ。じゃ、僕忙しいから失礼させて貰うよ」


そう言って少年は大きな建物に入って行った。



「なんなの、あの子?」


「まあまあ、あの言い方だときっとAの魔法使いでしょう。それで私達より若いのだから、何も言わない方が安全です」


「Aって、私Jですよ?そんな変わんないじゃないですか。それに、凛さんはAなんじゃないですか?」


レア度AとJは一括りにされる事が多い。

それなのに自慢しながら人を見下してくる。

ペンタはそういう人間が嫌いだった。


「確かに、私の魔法はAです。それでも、ペンタさん。貴方の魔法はきっとQだと思います」


「へ!?なんで?」


「レア度の基準が変わる事があるのは知っていますか?」


「はい。それは聞いた事あります」


「それとは別に、この街では特別なルールがあるんです」


「ルール?レア度に?」


「はい。ここファンタムでは、レア度より魔法の”強さ”でランク分けされるんです。戦闘の場でどれほど使えるかっていうのが基準になっています。なので、レアである程強いという考えでは無く、純粋な強さを見られます」


「初めて聞いた……。じゃあ、私の魔法なんてKでもおかしくないんじゃ?」


「そうですね……。サルビアから聞いていた通りの魔法なら、ペンタさんは良くてQってところでしょう」


(サルビア……私の魔法誰にでも言ってないよね?まあ、別に気にしないけど)


「ちなみに、だからと言って役所で再申請はしなくて大丈夫です。警備隊やスクオーラに入りたい場合は別ですが」


「凛さん。スクオーラって何です?」


「今少年が入って行った建物がスクオーラです。魔法を学べる学校と似た所です。違う所は、戦闘練習や入学の難しさ、卒業の壁があります」


「厳しい所なんですか?」


「そうですね。大体は警備隊になりたい人が行く場所です」


(あの子、本当に凄かったんだ)


「あ、ちなみに。ここがこの街で一番古い建物ですよ」


「ここが?」


(丁寧に扱われてるんだろうなあ)


建てられたばかりの様に綺麗で、歴史なんて感じさせない見た目にペンタは感心する。


「警備隊かあ………………あっ!!!!!!」


突然叫んだペンタに凛は驚く。


「どうしました?」


「この街に来た時に人から聞いた噂があって……」



      ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎


男はここだけの話、と耳打ちをする。


「警備隊のトップが魔王様と繋がりあるっぽいんだよ。そういう噂をよく聞く。んで、楽してる分魔王様と何か悪事を働いてるって。だから誰も文句を言わない。」


「そんな!」


男は慌ててペンタの口を押さえる。


「これ、誰にも言うなよ?あくまで噂だしな」


(そんな事になっていただなんて……)


「お、じゃ俺ここで降りるから。達者でな!」


      ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎


「そんな噂が……。魔王様って色んな地位の高い人と密接に関わっているのでしょうか……」


「分からないです。でも警備隊になって潜り込めば何か情報が捕めるかも?」


「その噂が本当なら、可能でしょうね。ただ、とても難しい道だとは思います。奇跡的に入学できたとしても、無事に卒業できるか……」


「凛さん。それでも行くしかないですよ。サルビアとお兄さんを助けるんでしょ?」


「……そうですね。一か八かやれる事をやってみましょうか」




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「凛さん。大丈夫?」


色白の肌に滲む血を、サルビアは優しく拭き取る。


「大丈夫。こんなのすぐ治せる」


「ここ、何処だろうね?」


辺りを見渡すが真っ暗で何も見えない。


「下手に動かない方が良い。離れるなよ」


その時。


「僕の城にようこそ」


サルビア達のいた場所に灯りが付く。

急な眩しさに目が眩む2人。


「……貴方が魔王様?」


サルビアは目を細めながら目の前に立つ男を注視するが、突然の明かりに目が慣れず、まだはっきりと姿を捉える事はできない。


「そうだよ。僕が魔王。この世界で一番恐れられている存在」


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