15 綱渡り
『――――という事がありました。夏頃には帰省する人もいる様なので、私も一度帰ります。その時にまた話しますね。ペンタより』
「なるほど……。色々とツッコミどころ満載ですが、何とかやっていけそうで良かった。それにしても、ルシファーや魔物、魔界については昔祖母から聞かされた話とは少し違うような……。それに、時間を止めた男性も気になる……私ももっと調査に力を入れないと」
凛はペンタから送られてきた手紙を鞄にしまい、家を出る。
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「……はあ。私ウエディングは和ドレスって決めていたのよ……」
「あれでも綺麗だったぞ?」
「女の子には譲れない憧れがあるの〜!」
サルビアの言葉を聞き、凛が肩をすくめる。
「そうか……俺はそういうの分かんないな。それより、そろそろ呼ばれるんじゃないか?見た目と言葉遣いを変えないと」
「あ、そうね!」
サルビアが目を閉じると、見た目が魔王の姿になる。
「うん、今日も上出来!」
「言葉遣いは?」
「う〜ん……」
魔王に変身したサルビアは、くるりと一周回る。
「今日の僕もいけてるだろ?」
バチンとウインクをする。
「……まあ、そんな感じか」
コンコンッ
誰かが部屋をノックする。
「はい、どうぞ」
凛が答えると、ドアが開き1人の女が入ってくる。
「あ、あの、ラルク様。お父様がお呼びです」
女はもじもじしながら、魔王を見る。
「分かった。すぐに行く。ありがとね」
「は、はい!失礼します!」
女は慌てるように部屋を出て行った。
「……あの子絶対あいつの事好きだよな」
「あ、やっぱり?私もそう思ってたの。何だか申し訳ないな」
「嘘とはいえ妻だもんな」
「……私、本当にこれで良かったのかな」
「もう始まった事だ。何かあれば俺が絶対守るから、あいつを信じて待つしかない」
「凛さん、ありがとう」
サルビアは凛の手を両手で握る。
「……その格好でやめろ」
「あ、ごめん!」
魔王の格好をしたままのサルビアが、笑いながら謝る。
「じゃあ、行くぞ」
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大きな扉を開き、2人は中へ入る。
「お父様、お待たせしました」
2人は黒いモヤの前に膝をつく。
『ラルクよ、次の仕事だ。チャカールに行き、そこにいるマチという女を連れて来い』
「はい!」
『ところで、サルビアはどうしている?』
(!!!)
目の前で膝をついているサルビアの額に、汗が滲む。
『何やらミリオが頻繁に連れ出していると聞いたが』
「はい。ここで妻として生きていくには、サルビアは知識が皆無です。なので、暫くはミリオさんがサルビアを連れて色んな仕事を覚えさせるようです」
凛が顔色を変えずに答える。
『そうか……。また暇ができたら顔を見せろと伝えておけ』
「はい」
「では、失礼します」
2人はその場を離れ、部屋へ戻る。
「焦った〜!!!」
「あれは危なかったな」
「凛さん、ナイスだね」
「少し無理やりだったがな」
サルビアは元の姿に戻る。
「でも、やっぱり私も1人で2人分こなすのは難しい。それに、凛さんは私の用心棒兼、あの人……あ、ラルクの部下として仕事の手助けをする話にはなったけれど、私は2人分姿を見せる事はできても話す事ができるのは片方だけ。こんなのそう長く騙し続けられないわ……」
(あの人に名前で呼んでって言われたから気をつけてはいるけど、どうにもまだ慣れないわね……)
「そうだな。もってあと1ヶ月だろうな」
「……もし、バレたらどうなるのかな」
「その時は全部あいつのせいにして逃げれば良いさ」
「でももし、凛さんやお父様に何かあったら……」
凛がサルビアの頭に手を置く。
「サルビアは自分の事だけ心配していろ。俺たちは俺たちでちゃんと上手くやるから」
「うん……」
凛が鞄を肩にかける。
「さ、早く行こう」




