『しろと十ぴきの冒険遠征編! 〜大草原のうまいものを求めて!?〜』
調子に乗った第二弾、「冒険遠征編」書いてみました。
■ 突然ですが、遠征です
ある日のこと。
村の広場の真ん中で――
猫たち十一ぴきが、めずらしく真剣な顔で円になっていた。
「……では、議題に入る」
くろの声は、いつになく重々しい。
「にゃー!」
「おー!」
「かっこいい雰囲気!!」
「やることなくても、とりあえず集まるの好き!」
周りのテンションはすでにお祭り気分。
そこへ――
「ミーナ?」
「何やってんだろうな、あれ」
ミーナとルーク登場。
すると、
くろがくるりと振り向き、堂々と宣言した。
「――決まった!!」
「何が!?」
「遠征する!!!」
「とりあえず“遠征”って言いたかっただけじゃないの!?」
ルーク即ツッコミ。
■ 理由はもちろん“あれ”
ミーナが首を傾げる。
「どうして遠征なのです?」
しろが胸を張る。
「この村の魚は大体制覇した!!」
「誇らしげに言わないで」
ルーク冷静。
くろがさらに続ける。
「この村の畑で食べられるものも、大体すべてチェックした!」
「やっぱり食べ物目当てなんだね」
ミーナ笑う。
しくしく。
突然、一匹が涙を。
「世界はきっともっと広くて!
もっと!もっと!!
おいしいものがあるはずなんだああ!!」
十一ぴき全員――
「おおおおおおお!!!!!」
完全に一致した方向性。
悲しいくらい動機が単純である。
ミーナは手を叩いた。
「じゃあ、みんなで遠征しよう!!」
「わーい!!」
「ミーナ大好き!」
「優しい神!」
ルークは額を押さえた。
「……どうせ止めても行くんだろうな」
■ そして最強(?)の護衛、参戦
その日の午後。
村の前の道。
どこまでも続く草原の向こうへ、
猫十一ぴき・ミーナ・ルークの隊が出発――する予定だった。
その時。
コトン、コトン、と優雅な馬車の音。
「……え?」
近づいてくるのは――
黒いマント、背筋の伸びた男。
そう、
ギャリソンである。
そして――
なぜかすでに猫四匹を抱えている。
「……どうして?」
ルークが聞く。
ギャリソンは淡々と告げた。
「屋敷の前で“同行希望”と騒いでおられました」
「連れてきてくれてありがとう!!」
ミーナにっこり。
「……なぜ礼を言われているのか、わかりません」
だがその肩では――
猫が満足げにゴロゴロ。
ギャリソン、渋い顔で固まる。
「離れていただきたいのですが」
(離れてくれない)
「私は護衛でして」
(なのに頬をすりすりされている)
村のおばさま方が遠くでささやく。
「ギャリソン様……今日も素敵……」
「猫を抱える姿もまた良し……」
ギャリソンの精神ポイントが削られていく音が聞こえた気がした。
■ 遠征開始!
――というわけで。
しろ&十一ぴきの猫
ミーナ
ルーク
そして巻き込まれたギャリソン
の遠征隊が誕生した。
目指すは――
「遠くの丘の向こうにある、大草原の湖だ!!」
くろ、指差す。
「そこには、ものすごくおいしくて!
おっそろしくデカい!!」
「――魚?」
ルーク。
「――魚!!」
全猫即答。
ミーナは笑って頷いた。
「じゃあ、冒険開始ー!!」
全員――
「おー!!!」
ギャリソンだけ静かにため息。
「……なぜ私はここに」
だが歩きながら、
隣でミーナがにこ、
背中の猫がゴロゴロ、
さらに背後から村のおばさまの声がまだ聞こえる気がして、
「……」
少しだけ、表情が和らいだ。
■ 草原の冒険
草原は広くて
風はあたたかくて
世界は気持ちよかった。
猫たちは――
走る!
跳ぶ!
転ぶ!
からのまた走る!!
「遠征って楽しいーー!!」
ミーナのスカートがひらひら。
ルークが見守って笑う。
くろが偉そうに隊列を整える。
「無駄に格好良い……」
ルーク苦笑。
しかし――
その時。
「――うわっ!?」
しろや、何かに引っかかって転倒。
他の猫ドミノ倒し。
ルークため息。
ギャリソン、無言で片手ずつ猫を救出するという神業を発揮。
「……ありがとうございます!」
ミーナ感謝。
「職務ですので」
(でも猫が嬉しそうに肩に乗る)
また精神ポイント削れる。
■ 目的地、湖!
やがて――
目の前に現れた。
広く、青く、風を映す湖。
「わぁぁぁぁぁ……!!」
「おおおお……!!」
猫たち、尻尾総立ち。
そして――
バシャァァァァン!!
予想通り。
いや期待通り。
巨大魚、いました。
「いたね」
ルーク。
「いたのです!!」
ミーナ。
「よし!」
「狩猟の時間だ!!」
「名誉と肉と幸せを!!」
猫たち、全力戦闘モード。
ギャリソンが静かに剣に手をかける。
「危険と判断した場合、排除します」
「魚だよ?」
ルーク。
「脅威になり得る対象は排除します」
めちゃくちゃ真面目。
■ 大混乱タイム
結果を言おう。
――壮絶なドタバタだった。
猫が飛ぶ!
魚が暴れる!
水が弾ける!
くろが叫ぶ!
しろが流される!
ルークが必死で引く!
ミーナが応援する!
ギャリソンが冷静にロープを投げ、
完璧な動作で魚の頭を固定。
「……ナイス、ギャリソンさん!!」
ミーナが拍手。
村の猫用戦闘力ランキング――
ギャリソン:人間界側最強更新。
最終的に――
ズザァァァァァッパァァ!!!
巨大魚、ついに岸へ!!
猫たち全員――
「やったーーーー!!!!」
全員びしょ濡れ。
でも満面の笑顔。
■ そして帰路
その日。
夕暮れの草原を帰る遠征隊。
背後には――
湖にちゃんと別れを告げる猫たち。
そしてギャリソンは――
肩に二匹、
膝に一匹、
背中に一匹。
「……どうして増えているんでしょうか」
ミーナは優しく笑った。
「ギャリソンさん、優しいからです」
少しだけ沈黙。
そして、ほんの少しだけ柔らかい声で。
「……そう言われると、悪くありませんね」
猫、さらに増える。
「やめてください」
でも歩みは優しかった。
ルークは横で笑う。
「また遠征、するか?」
ミーナは満面の笑顔で。
「もちろん!!」
猫たち――
「おーーーー!!!!」
草原の風が笑い声を運ぶ。
今日も世界は、
すこし賑やかで、
すこし優しかった。
――おしまい。




