春祭り、猫たち乱入!? 〜ミーナの舞と大混乱〜
春祭りの準備は、平和に進む……はずだった
春祭り当日の朝。
ミーナは新しい衣の裾を整えながら、小さく深呼吸した。
「よし……今日は失敗しないのです! きっとしない! したくない!」
猫たちがずらりと並び、なぜか先生のような顔でうんうんと頷いている。
ルークは遠くからその光景を見て、額に手を当てた。
「……ミーナを励ます猫の軍団ってどうなんだ」
春祭りの“春呼びの舞”――
それは村の大切な儀式で、今年はミーナが主役。
ミーナの舞が成功すれば、村に豊かな春が訪れるとされている。
「今日は猫たちはおとなしく……できる?」
ミーナが不安げに尋ねると、猫たちは揃って
「にゃー!」
と元気よく返す。
(返事だけはいいんだよね……)
ルークは心の中でため息をついた。
◆イザベル嬢とギャリソン、聞きつけて乱入!
ちょうどその時――。
村道の向こうから軽やかな蹄の音が響いた。
「春祭りがあると聞いてやってきましたわ!」
華やかな馬車から降りてきたのは、イザベル嬢。
その後ろには相変わらず隙のない所作のギャリソン。
しかしなぜか今日は腕に大量の村の土産袋を抱えている。
「……おばさま……いえ、おじょうさま方から“つまらないものですが”と渡されまして」
ギャリソンが小さくため息をつく。
(渡さずにはいられなかったのね……)
ルークは妙に納得する。
イザベル嬢はミーナを見つけると満面の笑顔で手を振った。
「ミーナちゃん、舞を披露なさるんですって? 素敵ですわ!」
ミーナの顔は真っ赤になる。
「み、見に来てくださるなら……が、がんばります!」
◆春祭り会場はすでにカオス寸前
屋台の匂い、子どもたちの声、村人たちの笑い。
そこに――
猫たちが走り抜け、リボンを追い、魚の屋台に突撃し、
おばさまたちはギャリソンを囲んで歓談。
ルークは額を押さえる。
「この時点で、すでに祭りの八割が猫に支配されてる気がするんだが」
イザベル嬢は楽しそうに笑った。
「生き生きしていてよろしいではありませんの」
ギャリソンは渋い顔のまま、しかし猫が寄ってくるとそっと撫でてしまう。
「……可愛いものは可愛いのです」
その様子を見て村のおばさまたちがざわめく。
「あの渋いのに猫好き……!」
「笑顔が優しい!」
「ギャリソンさんって実は……!」
ギャリソンの人気は、春祭りの屋台よりも熱かった。
ミーナ、いざ舞台へ!
太陽が高くなり、いよいよ“春呼びの舞”の時間。
ミーナが舞台に立ち、ルークは控えでじっと見守る。
「大丈夫だ。ミーナならできる」
ミーナは大きく頷くと、ゆっくりと舞を始めた。
その姿はスッと軽やかで、春風のようにしなやかだった。
会場が静まり返る――
……と思ったら。
猫たち、乱入!?
「にゃーー!!」
どこからともなく猫が舞台へ駆け上がる。
そしてさらに一匹、二匹、……十匹。
ミーナの衣のリボンに飛びついて追いかけ、
ミーナの足元でゴロゴロ転がり、
舞台下では子どもたちが大笑い。
「ちょ、ちょっと待って! そこ踏むと転ぶ!」
ミーナが華麗に回転――するはずが、猫にしがみつかれて体勢が崩れかける。
「ミーナ!」
ルークが思わず叫ぶ。
だがミーナは転ばない。
ひょいっと猫を抱え、そのまま舞の流れに組み込んでしまったのだ。
「春はね、みんなで迎えるんだよ!」
ミーナが笑って言うと、会場は大歓声。
イザベル嬢は目を輝かせて拍手し、
ギャリソンは静かに頷いた。
「……あれはあれで、式として成立しているのでは?」
「ギャリソン、あなた案外寛容ですのね」
「猫とミーナ様は、規格外なのでございます」
大成功!? それとも――
舞が終わると、猫たちは満足げに散っていった。
村人A「いやぁ、今年の春は賑やかだな!」
村人B「ミーナちゃん、猫使いの才能あるんじゃ?」
ミーナはルークの方に駆け寄る。
「み、見てくれた? 転ばなかったよ!」
「……うん。すごかった。すごいけど……」
ルークは遠くで爆増した猫の群れと、
ギャリソンを囲む村のおばさま軍団を見た。
「本当に、今年の春は賑やかすぎる……!」
イザベル嬢は楽しそうに笑った。
「次は“春の余興”ですわよ! ルークさん、あなたも参加なさって?」
「……ま、まだ続くの?」
ミーナがにっこり。
「うん! だって春祭りはここからが本番だよ!」
ルークは肩を落としつつも、どこか嬉しそうだった。
そして物語は、次回へつづく――
『春祭り、猫たち乱入!? 〜ミーナの舞と大混乱〜』
ミーナも猫たちも、そしてルークも(ギャリソンも!)
全員そろって大騒ぎの春祭りが幕を開けた。




