ミーナと芽吹きの大騒動! ~猫たちと春の魔法~
春祭りの準備が進む村は、今日もにぎやかだった。
冬のあいだ固く閉ざされていた土はすっかり柔らかくなり、畑には新芽やつぼみが顔を出し始めている。
ここ最近、村人たちの噂の中心になっているのは――
「ミーナちゃんが育ててるあの“ふしぎな芽”、また大きくなったらしいぞ」
「猫たちが守ってるって噂も聞いたが……」
などなど、すっかり“春の騒動の中心”になってしまった、あの芽だった。
◆ ふしぎな芽、成長中!?
「にぃに〜〜!! 芽が、芽が!!」
朝の光の中、ミーナが畑から全力で走ってきた。
髪にはタンポポの綿毛、手には土、服のすそには猫が一匹ぶら下がっている。
「ミーナ、ちょっと待っ――猫!! 離れろ!!」
ルークが慌ててミケを引きはがすと、ミケは「にゃっ」と文句を言いながら地面に着地し、すぐにまたミーナの足にまとわりつく。
「で、芽がどうしたの?」
ルークが肩で息をするミーナに問いかけると――
「にぃに……光ってるのです……!」
「光ってる!?」
思わず声が裏返るルーク。
ミーナは大きく頷いた。
「キラ〜って……妖精さんみたいなのです!」
ミーナの後ろでは、クロとトラが畑の方向を見て不安そうに耳を立てている。
どうやら、ただの見間違いではなさそうだ。
◆ 畑で大事件
畑につくと、確かに“あの芽”のまわりだけ空気が柔らかく揺れ、ほのかに光っているように見えた。
「うわぁぁ……ほんとに光ってる……」
ミーナが両手を合わせ、きらきらの瞳で見つめる。
隣で猫たちも丸くなったり、匂いをかいだり、なぜか土を掘ったりと大忙し。
すると――
「ミケ!! それは掘っちゃダメ!!」
ミケが芽の横を豪快に掘り返し、ルークが慌てて止めに入る。
クロは芽の上に乗って日向ぼっこを始め、トラは葉っぱに猫パンチ。
「や、やめてぇぇぇ!! ミーナの芽が〜〜!!」
ミーナは猫三匹を両腕でまとめて抱き上げた。
しかし、猫は猫だ。
腕の中で大暴れし、結局また芽に突撃する始末。
「にぃにっ!! 猫たちが春のお邪魔虫なのですぅ!!」
「いつものことだよ、ミーナ……」
ルークは疲れたように笑い、芽の状態を確かめた。
……すると。
「ん? これ……つぼみになってきてる?」
「ほんとですか!? ミーナの芽、春祭りに間に合うのです!?」
ミーナの目がぱぁっと輝く。
猫たちはなぜか一斉に「にゃあ!」と鳴き、賛同した。
◆ グリーンマン、姿を現す
その時だった。
土の奥から“もぞっ”と音がして、畑の端のグリーンマンが動いた。
「……芽、守る」
今日はいつもより声がはっきりしている。
ミーナは手を口に当てて感動し、猫たちはなぜか戦闘態勢。
「にゃにゃにゃにゃっ!」
「がるるっ!」(トラは強い気分になっている)
「猫たち、ケンカしないのです!!」
ミーナが必死に猫たちを止めるが、グリーンマンは全く気にしていない。
むしろ――
「……猫、良い」
と言って、優しく頭を撫でようと手を伸ばした。
猫たちは「えぇぇぇ」と顔をひきつらせながらも、なぜか黙って撫でられている。
ルークがひそひそ声で言う。
「……ミーナ。あの芽は、たぶん冬にグリーンマンが守ってた“春の種”なんだよ」
ミーナは「わぁぁぁ!!」とその場で跳ねた。
「じゃあ、ミーナが育ててる芽は……春の精霊さんのプレゼントなのです!?」
「……まぁ、そんなところじゃない?」
グリーンマンはこくりと頷いた。
◆ 村中が大騒ぎ! 春の準備へ
噂はすぐに広まり、村中の人が芽を見に来ることに。
さらに、春祭りの準備も大詰めだ。
ミーナたち子供組は――
・カラフル花旗づくり
・猫たちの“春のリボン”作り
・ミーナの「春のおどり」練習
などなど、やることが山積み。
しかも猫たちは……
ミケ → 紐を全部持ち逃げ
クロ → リボン生地の上で寝る
トラ → 旗の棒をくわえて逃げ回る
ミーナは何度も叫んだ。
「猫たちぃぃぃ〜〜〜!! 仕事のじゃまをしないのですぅぅ!!」
ルークも助けに入るが、結果的に猫たちに巻き込まれて転んだり、リボンでぐるぐる巻きになったりする。
アニーとリックもやって来て、半分笑いながら猫を捕獲。
「相変わらずにぎやかだね、ミーナちゃん!」
「ルークさんと猫たちが暴走してる……!」
「違うよリック! 暴走してるのは猫たちだけ!!」
ルークの言葉に、ミーナとアニーは同時にツッコむ。
「にぃにも十分まきこまれてるのです!!」
◆ つぼみ、ついに……!
夕暮れが村を金色に染めるころ、ルークはふと畑を見る。
そこで、つぼみの先がふるりと揺れた。
「……咲く……?」
ミーナが息をのみ、猫たちが周りでちょこんと座る。
グリーンマンが手をかざし、やさしい光が芽を包み――
つぼみはゆっくり、ゆっくりと開きはじめた。
淡い桃色の花びらが重なり、中心から光がふわりと溢れる。
「わぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ミーナはもう泣きそうになりながら両手を握った。
「にぃに……咲きました……ミーナのつぼみが、春になったのです……!」
ルークも目を細めて、優しく妹の頭を撫でる。
「うん……きれいだね。ミーナががんばったからだよ」
猫たちは「にゃあ」と満足そうに鳴き、グリーンマンは静かに、しかしどこか誇らしげに頷いた。
「……春、来た」
畑の風が花を揺らし、村全体が暖かい色に包まれる。
明日はいよいよ――春祭り本番だ。
◆◆エンディング◆◆
こうして、ミーナと猫たち、そして村のみんなは――
春の訪れの瞬間を、誰よりも近くで迎えることができた。
そしてもちろん。
明日の春祭りでも、
きっとミーナは全力で。
猫たちは全力で暴走し。
ルークは全力で振り回されるのだろう。




