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「妹がバカかわいくて平凡な農家ライフが崩壊しそうなんだが!」  作者: やまちゃぁん


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つぼみが開く時――ミーナの春祭り!?

春の足音が、王都のはずれの村にもふんわりと漂い始めた。畑や庭先の雪はほとんど消え、あちこちに小さな緑の芽が顔を出す。ミーナはその小さな芽を見つめると、にこりと笑った。


「にぃに、あの芽も春になったのです!」


ルークはミーナの手を握って頷く。

「そうだね、ミーナ。でもこの芽、特別なんだ。あの雪の精が守った種だよ」


――雪の夜に、グリーンマンが雪を見上げ、土の中の種に手をかざしたあの奇跡の種。今、春の光を受けてつぼみを育てている。ミーナと猫たちは、その成長をひそかに見守っていた。


庭では、猫たちが落ち葉を追いかけたり、小さな芽に興味津々で鼻を押し付けたりしている。トラはミーナの足元でごろごろと転がり、クロはつぼみの周りをうろうろと歩き回っていた。


「にぃに、ミーナ、見て見て! 芽がちょっと大きくなったのです!」


ルークはふふん、と鼻で笑いながらも、芽を傷つけないようにそっと手を添える。

「うん、順調だね。春祭りまでに咲くかな?」


ミーナは目を輝かせ、猫たちの間をぴょんぴょん跳ね回る。「咲かせるのです! みんなで春を呼ぶのです!」


その頃、村の人々は春祭りの準備に忙しかった。広場には手作りの提灯や花飾りが吊るされ、屋台の準備も進む。アニーは率先して飾り付けを手伝い、リックは少し恥ずかしそうに花を運ぶ。アベルとレイナは笑顔で見守りつつ、時折手伝いもした。


「アニー、そこはもう少し高く飾ったほうが見栄えがいいわ」

「はい、レイナさん! ほら、ルーク、見て見て!」


ルークは手伝いながらも、そっと芽の方に目をやる。すると、つぼみの一部がほんのりピンク色に染まっているのが見えた。


「おお……本当に咲きそうだね」

「わぁぁぁ!」ミーナは駆け寄り、猫たちと一緒に芽をのぞき込む。クロも小さく「にゃっ」と声を上げた。


昼下がり、村の子供たちも集まり始めた。ミーナは猫たちを引き連れて、祭りの広場で小さな準備運動を始める。


「にぃに、ミーナ、あの旗の飾りも手伝うです!」

「はいはい、気をつけてね、猫たちも暴れすぎないように」


ところが、猫たちはすぐに制御不能になる。トラは屋台の布を引っ張り、クロは提灯の紐にじゃれつき、ミケは花飾りのリボンに飛びつく。ミーナは慌てながらも、楽しそうに猫たちを追いかける。


「ミーナちゃぁぁん!猫たち何とかしてェェ~」

「クロ!シロ!、そっちじゃないです!」

「にゃーん!」猫たちの大合唱に、子供たちも大笑い。ルークは頭をかきながら、手に持った装飾を押さえた。


夕方、ついにあのつぼみが開き始めた。淡いピンク色の花びらがふわりと広がり、春の香りがふわりと広場を包む。村の人々も立ち止まり、歓声を上げた。


「わぁぁぁ! きれい……!」ミーナの声に、猫たちも目を輝かせて見上げる。


その時、どこからともなく馬車の音が聞こえた。振り返ると、王都から来たらしい車輪の音。イザベル嬢とギャリソン、そしてセレナもやってきたのだった。


「やはり噂は本当でしたわ、春の芽を守る小さな騒動」とイザベル嬢が微笑む。

セレナは少し息を切らしつつも、手には書類や筆記具を抱えている。


「こ、これは……本当にすごいですね」ギャリソンは淡々と観察する。猫たちはまたもや騒ぎ始め、クロがセレナの足元に飛びつく。


「きゃぁぁっ、もう!猫の手はいいのよぉぉ(涙」セレナは笑いながら猫をかわし、ルークたちは「あはは」と声を上げる。村の人々も手を叩いて笑い、祭りはさらに賑やかになった。


夜になり、提灯に明かりが灯る頃、春祭りは最高潮を迎える。ミーナは猫たちとともに、村人たちと輪になって踊る。ルークも隣で、にこにこと見守る。


「にぃに、見てです! 春の花、こんなにたくさん咲いたです!」

「うん、ミーナのおかげだね」


イザベル嬢とセレナは少し離れた場所で、二人並んで祭りの光景を見守る。


「ふふ、あたしも巻き込まれてよかったわ」

「本当に……。でもこれ以上は、猫たちが大暴れしそうですからね」ギャリソンは冷静に目を光らせる。


やがて、つぼみは完全に開き、花は夜の灯りに照らされて淡い光を放つ。村の広場は笑い声と歓声で満ち、ミーナと猫たちの奮闘も実りの瞬間を迎えた。


「やった……春が来たのです!」ミーナは小さな手を広げ、花の香りを胸いっぱいに吸い込む。

ルークも小さく頷き、アベルとレイナも誇らしげに微笑む。


「さて、そろそろ皆でお茶でもしましょうか」レイナが声をかけると、子供たちと村人たち、そして猫たちは順番に広場の端へ集まる。温かい飲み物とお菓子が配られ、疲れたけれど満足感に包まれた夜がゆっくりと過ぎていった。


イザベル嬢とセレナも微笑みながら、猫たちに小さなおやつを手渡す。


「ミーナ、ルーク、本当にすばらしい春祭りでしたわ」

「はいです! みんなで楽しくできたです!」ミーナの声に、猫たちも嬉しそうに「にゃーん」と応えた。


春の夜風に揺れる花びらと笑い声が、村中にひろがる。

こうして、ミーナと猫たち、ルークと家族、村人たち、そしてちょっと巻き込まれた王都の貴族たち――皆で作った春祭りは、無事に幕を閉じたのだった。


しかし、つぼみの正体や雪の精の存在は、まだ誰も知らない秘密として、春の夜に静かに息づいている。

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