ミーナ、春を呼んじゃう!? 〜ふしぎな芽のおはなし〜
冬の空気はまだ冷たい。
けれど、ルークたちの家の裏にある“ミニ温室”だけは、どこか春の匂いがしていた。
ミーナは朝起きると、真っ先に温室へ向かう。
猫たち――トラ、シロ、クロ、ミケも列になってついてくる。
まるで“春の見回り隊”だ。
「にぃにっ! 芽は今日も元気なのですか?」
「多分な。昨日はすごく伸びてたし」
温室の扉を開けると、
中はほんのり温かく、藁の匂いがふわりとひろがる。
そして中央、葉っぱの人形グリーンマンの足もとには――
ぴょこん、とかわいらしい緑の芽が2本になっていた。
「ふ、増えているのですっ!?」
「……あれ? 本当だ。昨日は1本だけだったのに」
ミーナはぱたぱた走って、芽の前にしゃがみこむ。
「にいにっ、これって春さんが近づいてきてるってことなのです?」
「春さん……まあ、そんな感じかもな」
ミーナの両目がきらきらと輝き、猫たちは
「にゃああ〜〜」
と感動の合唱を始める。
◆ 村に広がる“ふしぎな芽”のうわさ
その日の昼には、村の子供たちが噂を聞きつけてやってきた。
「ミーナちゃんのところで芽が増えてるって本当?」
「見たい! 見たい!」
温室の前はちょっとした行列になっていた。
ミーナは得意げに胸を張る。
「はいっ! 春の芽なのですっ!」
「すげぇ! 冬に芽が出るなんて!」
「ルーク兄ちゃん、これどうやってんの?」
ルークは苦笑いしながら説明する。
「温かい場所を作ってやっただけだよ。あとは……気持ちが届いたんだろ」
「気持ち?」
「ああ。ミーナが“春を作りたい”って本気で思ったからな」
ミーナは照れて両ほっぺを押さえた。
「えへへ……ミーナの気持ち、芽さんに届いたのです……」
猫たちが
「にゃふふん」
と得意げな顔をしている。
もちろん何もしていない(していても意味はない)が、
自分たちの功績だと思っているらしい。
◆ 芽が伸びると、“春”も増える!?
数日後。
「にいに!! 芽がっ、芽がぁあ!!」
ミーナの叫びに、ルークは工具を放り出して駆けつけた。
そして温室の中を見て、目を丸くした。
芽が3倍に増えていた。
しかも、背丈がミーナの腰くらいまで伸びている。
「これは……ちょっと予想以上だな……」
「すごいのです! これはもう――」
ミーナが勢いよくくるりと回り、
両手を羽みたいに広げて叫ぶ。
「ミーナが“春の妖精さん”になったのです!!」
「いや言いすぎ」
「にゃぁぁぁぁ!」(賛成にゃ!)
ルークは苦笑いしかできなかった。
だが、翌日さらに驚くことが起きた。
◆ 夜――“ふしぎな光”
その夜。
村は雪の静けさに包まれ、家の明かりも落ちていた。
ミーナは寝る前に「おやすみなのです」と言いながら温室を見にいった。
猫たちも後ろにぴったりくっついている。
扉をそっと開けると――
芽が蛍みたいに、ぼうっと光っていた。
「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「にゃぁぁぁぁ!?」
「なんだこれ……」
ルークも驚いて駆けつけた。
光る芽は、風もないのにゆらゆらと揺れ、
まるで“春の歌”を歌っているようにみえる。
「にいに……これ、精霊さんが見せてくれてるのですか?」
「……どうなんだろうな。
でも、こういうのは“誰かが守ってる”って考える方が自然だよな」
ミーナは胸に手を当て、ゆっくりうなずいた。
「ミーナ、もっともっと春のお手伝いをしたいのです」
「じゃあ、明日も様子を見てやろう」
猫たちも光に照らされながら、喉を鳴らす。
「にゃるる……」
その光景は幻想的で、
まるで冬の村にだけそっと訪れた“秘密の春”だった。
◆ そして翌朝――
翌朝。
ルークが温室へ行くと、ミーナが既に満面の笑みで待っていた。
「にぃにっ! 春さんが“来た”のです!」
ルークが扉をあけると――
昨日まで芽だったものが、
淡い桃色の“つぼみ”になっていた。
「これ……咲くぞ」
「咲くのですっ! ついに春が!!」
ミーナは嬉しくてその場でぴょんぴょん跳ね、
猫たちも「にゃにゃにゃ!!」と大騒ぎ。
まだ季節は冬の終わり。
雪は残り、風は冷たい。
それでも、
ミーナが呼んだ“ふしぎな春”は、確かにそこに咲こうとしていた。




