ミーナ、雪の精と出会う!? ~白銀の畑と冬の魔法~
――夜が静かだった。
空いっぱいに降る雪が、まるで世界をやさしく包んでいるかのようだった。
ルークの畑も、すっかり白一色。
煙突の先から上がる細い煙が、月光を浴びて銀に光っている。
「にぃにぃ、雪がいっぱいですぅ!」
ミーナは毛糸の帽子を深くかぶり、マフラーをなびかせて外へ飛び出した。
猫たちも後に続く。
「にゃぁぁああ! 冷たいけど、フワフワしてるニャ!」
「これ、食べられるニャ?」
「それ、ただの雪ニャ! 味しないニャ!」
ルークは家の中から苦笑しながら声をかける。
「転ぶなよー。畑の方はまだ滑るぞ」
「だいじょーぶですぅ!」
――と言ったそばから、すってんころり。
雪の上に大の字になるミーナ。
「ひゃぁぁぁぁぁぁ……冷たいけど、気持ちいいですぅ~」
「ミーナ、雪だるまになるニャ」
「にゃはは、もう半分できてるニャ!」
そんな笑い声が響く中、
畑の端――煙突のそばに、何かが“きらり”と光った。
「……?」
ミーナはゆっくりと起き上がり、その光のほうへ歩いていく。
猫たちもつられてぞろぞろと後ろをついてくる。
近づくと、それは――
氷でできたような、小さな羽を持つ存在。
雪の精。
掌ほどの背丈の、透き通るような姿をした少女が、雪の上で静かに踊っていた。
ふわり、ふわりと風に乗って、雪の粒を光らせている。
「わぁぁぁ……きれいですぅ……」
ミーナがうっとりとつぶやいた。
その瞬間、雪の精は振り向き、にこりと笑った。
「あなた、ミーナ?」
「は、はいっ! にぃにの妹のミーナなのですぅ!」
「ふふ。あなたの笑い声が聞こえたの。あたたかくて……だから来ちゃった」
ミーナは小首をかしげた。
「来ちゃった、って?」
「雪の季節はね、私たち精霊も働き者なの。世界に“白い眠り”を降らせるために」
「眠り……?」
「うん。畑も森も、お休みの時間をもらうの。あなたのにぃにも、少しは休んでる?」
「えぇぇ……あんまり、ですねぇ」
「やっぱり」
雪の精は、くすくす笑った。
その笑い声は、鈴の音のように響く。
「じゃあ、あなたが代わりに教えてあげて。
“冬は、土も心も、眠る季節”だって」
「……はいっ!」
ミーナが元気よくうなずいた瞬間――
雪の精の羽がきらりと輝いた。
その光が、ミーナのマフラーにふわっと降りかかる。
見ると、雪の結晶が溶けずにそのまま光を帯びていた。
「それ、あなたに預けるね」
「えっ、これ、なぁに?」
「“春を呼ぶ種”。心があたたかければ、どんな冬でも咲く花のもとになるの」
「すごいですぅ……!」
「でもね、ひとつ約束。――その種をまくのは“笑顔の日”だけよ?」
「笑顔の日?」
「うん。あなたが本当に、心から笑ってる日」
そう言って、雪の精はくるりと回った。
風が起き、雪が舞う。
「また来年も遊びに行くね」
「ま、またですぅ!?」
「もちろん。雪が降るたび、私はあなたの笑い声を探すの」
そう言い残して、雪の精は風の中に消えていった。
翌朝。
ミーナは元気いっぱいにルークのところへ駆けていった。
「にぃにぃっ! 聞いてくださいっ!」
「朝から元気だな。どうした?」
「昨日、雪の精さんに会いましたぁ!!」
「雪の精……?」
ルークが苦笑して頭をかく。
「また夢でも見たんじゃないのか?」
「夢じゃないですぅ! だって、これっ!」
ミーナが見せたのは、マフラーの端に残る小さな光る結晶。
陽の光を受けて、虹色にきらめいている。
「……これは……氷の花か?」
「雪の精さんが、“春を呼ぶ種”だって!」
「ふむ……」
ルークは少し考えてから、静かに笑った。
「じゃあ、それは大事に取っておこう。春になったら、畑の真ん中に植えような」
「はいっ! 笑顔の日に植えますっ!」
猫たちがごろごろ言いながら寄ってくる。
「にゃぁぁ、あたたかくなったら一緒に掘るニャ」
「ボク、水かけ係ニャ!」
「にゃぁぁ、春が待ち遠しいニャ~」
ミーナはみんなの頭をなでながら、にっこり笑った。
――その笑顔のマフラーの端で、
雪の結晶がひとつ、やさしく光った。
その夜。
窓の外では、グリーンマンが静かに雪を見上げていた。
白い帽子のように雪をかぶりながら、土の中の種に手をかざす。
「……(春の種……守る)」
風がそっと吹いた。
そして、遠くの森の上で――
あの雪の精が微笑んでいた。




