58.子育ては大変
昼食後の自由時間に遊ぶ子供たち。
たっぷり遊んだ後は、お昼寝の時間だ。
あまり寝すぎると夜が眠れなくなってしまうから、一時間くらいと短めに、遊んだ疲れをリセットする。
ただ、遊びで興奮した子供たちは、中々休んでくれないことが多い。
普段はシスターが頑張って、子供たちを休ませているそうだ。
「お昼寝の時間だよー」
「えぇ~ もっと遊びたいよぉ~」
「ダーメ! ちゃんと休むことも大切なんだよ?」
「うぇ~ アリア姉ちゃんの癖にシスターみたいなこと言ってるぅ~」
「癖に!?」
子供たちを寝かせようと頑張るアリア。
お姉さんみたいに振舞おうとして、ちょっぴり子供たちになめられている感じだ。
これはこれで見ていて微笑ましいな。
「遊びたい気持ちもわかるけど、ちゃんと寝ましょう。ほら見て」
ティアが優しい口調で言いながら指をさす。
子供たちの視線が、ティアの示した方向に向けられる。
そこには……
スヤー。
すでにぐっすり眠るマナの姿があった。
「マナ姉ちゃん」
「寝てる」
「気持ちよさそうでしょう? みんなも一緒に寝ましょう」
「はーい」
おや?
ティアの言うことは素直に聞くんだな。
元々彼女はお姉さんぽい振る舞い方だし、以前からそうだったのかもしれない。
「うぅ……」
アリア悔しそうに見ているけどね。
うん、微笑ましい。
「良い光景だ」
「ふふっ」
「シスターさん?」
「いえ、ごめんなさい。何だかユーストスさんって、あの子たちのお父さんみたいですね」
「え、そう見えます?」
シスターはこくりと頷く。
目の見えない彼女にとって、見えるというより感じるが正しいか。
保護者っぽいオーラでも出ていたかな。
その後、子供たちを寝かせている間に洗濯物を取り込む。
子供たちの人数分あってとても多い。
ちなみに洗濯は、朝早くに起きてするそうだ。
これを全部一人で……やっぱり凄いな。
俺には真似出来なさそうだ。
一時間経って子供たちが起き始める。
また自由時間となって、子供たちは遊び始めた。
散々遊んだはずなのに子供というのは元気だな。
俺たちよりも体力があるのではないかと本気で思うと時がある。
子供たちが遊んでいる間に、今度は夕食の支度をする。
これも同じだが、人数分を準備するのは大変だ。
台所にずらっと並んだ食材を見るだけでも、その大変さがすぐに伝わる。
「これだけの食材を毎日……お金もかかりそうですね」
「いえ。半分は畑でとれたものですし、もう半分も近所の方々からのおすそ分けですので」
「そうなんですね」
「はい。それに――」
と言って、野菜を洗っているアリアたち三人に顔を向ける。
「あの子たちがお金を送ってきてくれるんです」
「ああ、なるほど」
彼女たちが依頼で稼いだお金を、どこかに送っていることは知っていた。
相手は実家の親だと思っていたけど、ほぼ正解だったみたいだな。
「本当に助かっています」
「ははっ、そういうセリフは直接言ってあげてください。喜びますよ」
「ふふっ、そうですね。そうします」
嬉しそうに笑うシスター。
とても優しい笑顔で、見ていると心が落ち着くようだ。
俺がシスターと話している様子を、三人が見ている。
「むぅ……先生とシスターがもう仲良くなってる」
「何だか良い雰囲気よね」
「あれが大人の魅惑?」
とか聞こえてくるが、気づかないフリをしよう。
夕食の支度も終わったら、子供たちを呼んできて一緒に食べる。
全員が一つの長いテーブルにひしめき合い、ワイワイと賑やかに食卓を囲む。
ずっと一人だった俺にとっては、四人でも多いというのに。
新鮮で嬉しい体験だ。
夕食後もまだドタバタ騒ぎが続く。
子供たちをお風呂に入れてから、眠りにつかせるまで格闘だ。
俺も手伝ったが、相当に大変だったぞ。
子供を世話する親の気持ちが、何となく理解できた気がする一日だ。
夜、子供たちが眠ってから、俺は一人教会の外で涼んでいた。
すると、ガチャリと扉が開く音が聞こえる。
「こんばんは」
「シスターさん、こんばんは」
寝間着に着替えたシスターが、俺の隣にやってくる。
別に待ち合わせしていたわけじゃないから、ちょっと驚いた。
「お隣よろしいですか?」
「はい」
彼女はちょこんと隣に腰をおろす。
「ユーストスさん、今日はありがとうございました」
「いえいえ、俺は大して何もしてませんよ。頑張ったのはアリアたちですから」
「そんなことありません。お料理の時なんて、ユーストスさんのお陰でとっても楽でしたよ」
「はははっ、そう言ってもらえると嬉しいですね」
一人暮らしで身につけた料理スキルだが、最近はよく褒められるな。
「アリアたちは?」
「ぐっすり眠っています。久しぶりだったので疲れたのでしょう」
「みたいですね」
修行して体力のついた彼女たちだが、子供の世話は戦い以上に疲れるらしい。
親にとっては毎日が戦いみたいなものだと思うと、今からぞっとするな。
まぁ当分は縁のない話だろうけど。
「ところでシスターさんはどうしてここに? 何か用事でも?」
「はい。湖の精霊様について、お話しておこうと思いまして」
湖の精霊。
その単語を聞いてピクリと反応する。
「今でもよろしいでしょうか?」
「ぜひお願いします」






